ときどき晴れのくもり空

いつか想像してた未来と今が少し違っていたって

土曜日はノスタルジィ

とめどない日々の記録。

去年から、5月から6月にかけてバタバタしていて、気づくとこの時期になってしまう。忙しいというよりは、冒頭の忙しさをぼーっと癒している間に、6月が終わっていくという感じが実情に近い。

ベッドサイドにおいた日記にあわてて過去の日記をつけたり、再読ばかりの読書をしたり。

本格的な夏に向けて、チューニングする時期になりつつある。

 

外に出ても何をするというわけではなく、コーヒーを飲んでは読書ばかりしているような。

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今は、夏の匂いがすると再読したくなる『人形式モナリザ』と『夏のレプリカ』を読んで、珍しくS&Mシリーズの方を読み返しているところ。

珍しくというのは、だいたいこの2冊を読むと、わたしはキャラが好きなVシリーズの方を読み返してしまうので。

持っているS&Mシリーズは、数えてみたら7冊。

『すべてがFになる』/『冷たい密室と博士たち』/『詩的私的ジャック』/『封印再度』/『夏のレプリカ』/『数奇にして模型』/『有限と微笑のパン』

『冷たい密室~』と『数奇~』と『有限~』の3冊は今年の6月に買い足したもの。

大学の話というのが読みたくて、『冷たい密室』を読んだらその空気感にずっとひたっていたくなった。でも、いざ読み返してみると、意外と大学外の話が多くて驚いている。

買い足したものをシリーズ順に読んで、この1週間くらいだらだらと最終巻の『有限と微笑のパン』を再読中。 

有限と微小のパン (講談社文庫)

有限と微小のパン (講談社文庫)

 

このお話の舞台って、長崎だったのかー。いろんなことを覚えているようで、すっかり忘れているなあ。

このver.の装丁が好きなので、すべて買い直したい気分。今、家にあるのは『Fになる』と『詩的私的ジャック』が初代装丁の文庫、『封印再度』と『夏のレプリカ』がノベルスとばらばらもいいところ。

最初に通読したのは、まさに大学に通っていた時期で、はじめて一人暮らしをした街の図書館に揃えられていた講談社ノベルスでだった。

二段組の本の方が速く読めるのは、たぶんあの時期に山ほどその図書館でノベルスを読んだからだと思う。

懐かしいなあ。

昨日は一日ずっと、萌絵の「人って結局、自分のことで泣くのだ」(あいまい)というモノローグを思い出していた。

 

冷たい密室と博士たち』は、The Pie Hole L.A.*1で、メキシカンチョコレートパイのスライスを食べながら読了。

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スパイスが入っていて、パイ生地もざっくりとした甘みがないもので、とっても大人なチョコレートパイ。上に載っているチョコレート風味のたっぷりしたホイップもほとんど甘くない。

どちらかとタルトに近いような食感の土台だったけれど、一口もらった別のパイはいかにも! なパイ生地でそちらの方がより、塩気を感じる後味だった。

 

TVからはPOTC2が流れてきて、なんだかノスタルジックな土曜日。3のウィル・ターナーというキャラの落としどころがほんっとうに納得できなくて、むしろ出てこない4の方が何度も見返しているくらいなので、2も久しぶりに見る。

とはいえ、1は人生ではじめて3回も映画館で観た作品で、2は同じく人生ではじめて映画館に並んで入って観た作品で、3も公開初日に映画館で観た自分の中では記念碑的な作品の新作はやっぱりたのしみ。

5はウィルも出てくるらしいので、3をもう一度見直したくなる消化の仕方をしていてほしいなあ。

晩ごはんは結局、チキンの煮込みを食べた。トマトに茄子にほうれん草、舞茸にピーマンに、アスパラは贅沢にグリーンとホワイトを両方。たっぷりの野菜とお肉だけでおなかいっぱいになったので炭水化物はなし。

そろそろ妹からもらったキアヌを使ってみなくちゃ、と思いながら、とりあえず今は水出しのアイスティーが出来上がるのを待っている。

 

お題「好きな作家」

No Title

いろいろハプニングはあったりしたけれど、いつも通りの土曜日の夕方に収束しつつある。

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金曜日は早めに上がって、外でごはんを食べて、家に帰った。そんなにハードな1週間ではなかったのに、帰ったら日付が変わるくらいにすとんと眠ってしまって。

夜中に何度か起きていた体調の悪そうな恋人に冷えぴたを貼って、わたしは洗濯ものを片付けたり、換気をしたり。

ベッドのヘッドボードに飾っていた淡いブルーの花がすっかり枯れてしまっているのに気付いて、1週間が経ったんだな、と思う。

それにしても、1か月前と違って、あっという間に花が枯れてしまうようになった。

もう夏なんだなぁ。そういえば、先日仕事中にWebを見ていたら、「今日は夏至です」と書いてあってびっくりしたっけ。

 

眠ったり、起きたりを繰り返しながら、土曜日が過ぎていく。

お昼は、昨日から無性に食べたかったたまごサンド。晩ごはんはもうこんな時間だけれどどうしようかなあ、と思いる。

おそうめん、というリクエストはもらっているのだけれども。

 

昨日のお昼からなんだかぼんやりとしている。小さい頃、TVの中で訃報が流れるたびに、父や母が「同い年くらいなのに」と嘆いていたときの気持ちが、ようやくわかった気がする。

それにしても、まだぜんぜん、そんなのわかりたくなかった。

同じく命にかかわる病を、あの報道の後に宣告されていた身近な人間を、結局、彼女より先に見送ったものの一人として、ほんとうに寂しく辛いニュースだった。

どうか、今はただ安らかでありますように。ご冥福をお祈りいたします。

 

 

日曜日の音

日曜日。

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お昼過ぎに唐突に家にいるのに飽きて、あてもない散歩に出た。

Tシャツにマキシスカートというのんきな格好で、すぐ帰るつもりだったので、日焼け止めもぬらずにふらふらと。

ストッキングを穿かないサンダルの足元はものすごく涼やか。そろそろビーチサンダルを出してもいいころかしら、と思う。

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白と黒のボーダーのビーチサンダルは、数年前にサマーランドに行ったときに買ったもので、イエロー1色のものも気に入っていたのに、いつのまにかどこかへ行ってしまった。

どこかへ行ってしまったと言うのも変なもので、もう親に勝手に持ち物を処分されることもないのだから、自分で始末したのだろうけれど、ちっとも覚えていない。

ベランダ履きにして汚れてしまったから、引越しのときに処分したのだっけ。

 

外に出てみると、お昼にピーマンの肉詰めをつくった余波で、部屋の中がずいぶんむっとしていたのがわかる。昨晩の残りのごはんをおにぎりにして、昨夜出し損ねた冷やしトマトも出して、なんだかお弁当みたいなお昼ごはん。

わたしは休日にそういうごはんを食べるのが好きだ。それも快適な家の中で。おにぎりを食べたくなるのもだからたいてい休日だ。

ピーマンの肉詰めは、母の得意料理でわたしたち姉妹はこの料理でピーマンのことを好きになった。

なぜかいちばん最初に自分で作れるようになったレシピが、サバイバル料理の本に載っていた「ピーマンのじゃこ炒め」だったり、もともと特にピーマンが苦手だったわけではないのだけれど、でも好きになったのは間違いなくこの料理のおかげ。

ふつうのハンバーグよりもこっちの方が、家でしか食べられないので、むしろうれしかったくらい。

それにしても、ピーマンのじゃこ炒めの何がサバイバル料理だったんだろう……。

 

表に出ると、雲が多いけれどきれいな青が広がっていた。夏のような空なのに、暑過ぎないのでとても歩きやすい。

何度も歩いたことがある方向へ、いつもとはちがう道をたどって進む。細い道を歩くと東京でも人がちゃんと生活していて、上京してもう十年が経つのに、毎度毎度そのことにびっくりする。

歩きながら大きく伸びをして、さっきまでめがねをかけていた眉間を揉んだら、肩の凝りもすうっと空へ溶けていく気がした。

ぶらぶら歩いて、新しいお店を発見したり。

そういうのもたのしいのだけれど、ただ歩いているときにしか話せないことってあるなあ、と思う。特に重大なことではない、ささいなこと。でも、今すごく話したいなあということ。

その癖、そういうときいつも、ソ連に生きる主人公が「密談は公園でするに限る」と言っていた物語の一節を思い出す。

あれはなんの話だったっけ。映画だったのか小説だったかのか、それともまんがだったのか。

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家を出るまで読んでいた小説にコーヒーが出てきたので、最後にスターバックスによって、なぜかコーヒーではなくティーフラペチーノを買って帰ってきた。

クラシックティークリームフラペチーノ。思いのほかしっかり紅茶の味がして、甘すぎずおいしい。

結局、コーヒー欲は、家で先週買ったライオンの絵のついたコナコーヒーを淹れて満たし、ピンク色のドーナツをかじりながら、ぱらぱらと読書をした。

昨晩録りためていた『僕だけがいない街』のアニメを今更一気見して非常に満足してしまったので、中途半端なものを見る気持ちにもなれず、TVはつけたり消したり。でも、あんまり読書もはかどらず、なんだかぼんやりした日曜日。

洗濯ものを土日両方回したし、しっかり自炊もして、洗い物もきちんとしたし、部屋も少し片付けた。結局帰ってきて換気もしたし、ウォーターサーバーの水も換えたし。

遊びに行きたい遊びに行きたいと思う気持ちと同じくらいの強さで、こういう当たり前のことを当たり前にする休日を求めているんだなあと思う。

 

晩ごはんは、昨日のロールキャベツで使い切れなかったキャベツをつかって、てんぷら粉でお好み焼きを焼いた。お好み焼き粉の賞味期限が豪快に切れていたのでやむをえず……だったのだけれど、意外となんとでもなるもんだなあ。

子どものころ、お好み焼きといえば日曜日のごはんだった。それも、家で作ることはほぼなく、いつも同じお店で外食と決まっていた。

たくさんマンガが置いてあるお店で、わたしはそこではじめて『金田一少年の事件簿』を知ったんだと思う。それから、『20世紀少年』を。他にも、そのお店でわたしはいろんな少年マンガと出会った。

父がじゅうじゅう音を立ててお好み焼きを焼いてくれるのを聞きながらだったら、あんなに不穏な金田一のお話も、ぜんぜん怖くなかったなあ。

焼き上がる前になんとかがんばって1巻読もうとして、それで、本を読むスピードが速くなったような気すらする。

ぱちぱちとソースとマヨネーズのはぜる音。青のりをふんだんにふる父の「もうすぐできるよ」の声と、青のりを嫌がる母のクレームの声。となりで同じように夢中で漫画をめくっている妹の真剣な横顔。

お好み焼きを焼く音には、守られていた平和な日曜日の名残がある。

来週が終われば、お互いに何の予定もない週末がしばらく広がっているけれど、無理に予定を作らず、こんな風にのどかな日曜日を過ごすのもいいなあという気がした。

 

理由のないアルコール

今年のGWは、たくさんではないけれど、ちょくちょくお酒を飲んだ。ビールとか、カクテルとか、ハイボールとか、いろいろな種類をちょっとずつ。

例年とちょっとちがうのは、家に何本かボトルがあるということ。宅飲みがあるわけでもないのに、お酒を買うこと自体が珍しい。それもビールやワイン以外のものを。

一度、いやいや飲み切れないでしょう、とスル―したメーカーズマークも、結局3日目にボトルのかわいさに負けて買った。

もともとウイスキーは外で飲むときにも好きなお酒のひとつで、すぐにダメになるものでもないし、いいかな! と。

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蝋が溶けたようなデザインで封がされていて、ラベルまでしっかりかわいい。ロゴの書体もかわいいなあ。しばらく眺めて、えいやっと蓋を開けたら、蝋のデザインはそのままちゃんと残って、二度うれしかった。

そのままロックで飲んだり、あっさりとソーダで割ったりもしたけれど、いちばんのヒットは断然、アイスクリームにかけること。

これがもう、ほんとうに悪魔的においしくて! アイスクリームを買う時にバニラを選ぶことって、今まではほとんどなかった。でも、この食べ方をして以来、ついついバニラフレーバーを選んでしまう。

チョコ系でもおいしいし、バニラならなんでもいいくらいおいしくなるのだけれど、でもやっぱりハーゲンダッツのバニラだと格別。

完全に悪い贅沢な夜の味がする。こっくりしたお酒の色もとてもきれい。

 

天気が良かった日にはもっとさわやかに、昼間っから、水のように透明なライチのお酒を飲んだ。

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青い小説を読みながら、ロックですっきりと。

読んだのは、10代のころに全集の中に入っているのを読んだっきりだった、ずいぶんと懐かしい小説。時の流れにびっくりする。

そして再読して、記憶していたのとはまったくちがうお話だったことにまたびっくり。こんなあらすじだったっけ、と。おそらく別の作品と混同しているのだろうけど、それが何かは思い出せず。何だったんだろう?

戸惑いながら読んでいたら、昔どこかで読んで人生訓のようになっている一文にとつぜんぶつかって、三度驚いたり。

嫌いな人がいたら、好きになるところまで離れればいいのよ

こちらこちらで、ぜんぜんちがう小説の一節だと思い込んでいたのだからおもしろい。

自分を作っているものというのはたくさんあって、そのどれもで、わたしは割にはっきり覚えているとばかり思っていたのだけれど、どうやらそうではないらしいということが最近ぽろぽろ出てくる。

でも、そういう勘違いをひとつひとつ正しい記憶に戻していくのも、また心たのしい。

 

お酒を飲んだり、コーヒーを飲んだりしながら、少しずつ。

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ビールをいつ好きになったのかは、はっきり覚えていないけれど、ウイスキーを好きになったのは20代最後の5月だとしっかり覚えていよう。

バニラアイスクリームを好きになったのは、メーカーズマークをかけて食べた休日の午後3時だということも。

大人になって好きになったものは、子どものころと違って、好きになった理由が自分の中でとても明白だ。だから、決して失わない気がして、その分安心して好きでいられる気がする。

お酒はこうやって打ち上げでも、憂さ晴らしでもなく単に休日を祝うためだけに飲むのがいちばんたのしいなあ。

 

土曜日はちいさなお城

先日。吉祥寺でずいぶんと長い一日を過ごした。

吉祥寺に行くのも、なんだかんだで久しぶり。気取っていないのにハレの日感がある街で、単純にたのしい。そういえば、お花見の時期には、もう何年も行っていないなあ。

朝一で出かけて用事をひとつ済ませ、そのままちょっと早めのお昼ごはんに向かう。

前日に予定を伝えたら、外でできる作業を持って行こうかなと恋人も言ったので、単に用事を済ませるだけの一日が、期せずしてお出かけデーに。

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お昼はちょっと健康的なものが食べたくて、八十八夜に。お隣のいせやのいい匂いに唆されながら、階段をなんんとかのぼりきる。

からあげというものが、わたしは心底好きなのだけれど、ここのからあげはふわっさくっとしていてぜんぜんジャンクじゃなくてちょっと別ジャンル。でもてんぷらとかフリッとではないんだよなあ。ふしぎな味。

かなりのオシャレサイズなので、これだけだと腹八分目という感じ。食後についてくるドリンクがしっかりおいしいので、それを楽しみつつ、のんびりする御代も含めたランチ代かなあ。

そういえば、吉祥寺にいたころは雑穀米ばかり食べていたなと思いながら、するするとワンプレートをたいらげた。

 

お昼を食べたら帰るかな……くらいの気持ちだったのだけれど、ずいぶんと天気のいい日で、そのまま帰るのもしのびなく、もう少し外をふらふらすることに。

ぐるっと公園をひとまわりしてもよいなあと思いつつ、天気のいい日にひんやりと涼しい室内から外の景色を眺めるほど心たのしいことはないので、表の見えるカフェを探して入る。

その前に書店によって、わたしは久しぶりに単行本で本を買った。 

かがみの孤城

かがみの孤城

 

辻村深月さんの新刊。

本を片手にアーケード街を練り歩く。少しアーケードの外に出ると、もはや夏日の東京の土曜日は夏休みのように底抜けに明るい。じりじりと日焼け止めが必要な強さで太陽が照りつけ、ありもしないプールの匂いがどこからかしてくるからふしぎだ。

そんな明るい土曜日の午後に、ひっそりと静かであつい小説を読んでいるうちに日が暮れていく。

結局、軽い晩ごはんまで食べて、夜の9時頃にようやく吉祥寺を後にした。

永遠に終わらないような気がした長い長い土曜日で、今思い出しても、なんだか遠い記憶のようにひたすら乾いて明るい光景がまぶたの奥に広がる。

同じ日に買ったこちらの本は、そのさっぱりとした後味を消し去りたくなくて、結局数ページしか読んでいない。 

BUTTER

BUTTER

 

そんな土曜日の思い出。

 

AM7:00にジャムを煮る

先週今週と、朝からジャムを煮ている。

まさか自分の人生で、朝からジャムを煮る週末がくるとは思わなかった。そんな子どものころに読んだ少女小説の登場人物みたいな行動をするなんて。人生っておもしろい。

先週なんて6時に目が覚め、朝ごはんを食べてしまったら特にすることがなくなり、7時過ぎからことことと煮はじめた。

急にそんな乙女ちっくな行動に走った理由は特になくて、苺がたたき売りされてたから。

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小粒な苺がぎっしり。

そのまま食べたり、シェイクにしてもいいのだけれど(実際それもやった)、ちょっと酸味が強かったのでジャムにすることに。

あ、そういえば連休中に読んだ『きのう何食べた?』でシロさんがつくっていたのが、直接的な動機といえば動機かも。今調べたら、1巻で既にジャムを煮ているみたい。これを読むと、わたしの自炊モチベーションはわかりやすく上がるので。

何度読んでも同じ効果があるのがすごい。

きれいに洗ってへたをとった苺を小さな鍋に放り込んで、その中でざっくりお砂糖と混ぜ合わせる。どうせ煮ながら多少つぶれるので、苺は刻まずにそのままで。

ほんとうはこの時点で時間を置くらしいのだけれど、シロップ煮でもいいかなくらいの気持ちだったので、雑にそのまま火にかける。

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苺とお砂糖、そしてレモン汁だけなのに、あっというまにぶわわっと甘い液体がお鍋の中にあふれてきてびっくりする。

人生ではじめて作ったのは小学校の生活の授業だったと思う。もちろん、一年生が火を使えるはずもなくて、ひたすらくだものをスプーンの背でつぶしていくという、いかにも原始的な方法だったけれど。

班ごとに課題の果物がちがって、たしかわたしのいた班は、ぶどうのジャムというずいぶんと渋いものを割り当てられていたと思う。

それ以来のジャムづくり。

7時でも、もうしっかりと明るい東京の朝の光の中、キッチンで甘ずっぱい匂いをいっぱいに吸い込みながら、ちょっとノスタルジックな気持ち。

10分ほどでびっくりするほどあくが出てくるので、それをこまめにすくうために、コンロの前にちいさな脚立を持ってきて火の番を。本を読みながら、ことことことこと小一時間煮込む。

今日のおともは、『ラオスにいったい何があるというんですか?』。一章一章が短い紀行文なので、ついお鍋の世話を忘れてジャムを焦がしてしまう……という悲しい展開にもならないかなと思って選んだ。

とろりとしてきたところで、火を止め、瓶につめてひっくり返して粗熱をとる。このままパンケーキにかけたりしてもおいしいと思う。

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新しく作ったものが冷めるのを待ちながら、先週作ったジャムをハーゲンダッツのバニラにかけて、贅沢な土曜日のおやつに。

ジャムを煮る女の人には悩みごとがあると書いていたのはなんの小説だったっけ、わたしはよっぽど気持ちがぽっかり凪いでいるときにしかこれは作れないなと思いながら、おいしくたいらげた。

悩みを煮詰めるまではいいのだけれど、それがきれいな色で華奢な瓶に数か月保存されると思うと、なんだかそれはすさまじい感じがしてちょっとためらう。

悩みが次々きれいな色のジャムになっていくなんて、ファンタジックでかわいいようでいて、冷静になるとだいぶこわい。

嫌なことは全部端から忘れてしまいたいタイプなので、しあわせなときにだけジャムは煮ようと思いながら、なんだか煮込みたりなくて、晩ごはんはリクエスト通りロールキャベツをつくった。

 

ロールキャベツは数年前に一度作って、びっくりするほどきれいにつつめなかったので、苦手な料理のひとつ。

今日じゃなければ、作る勇気がわかなかったかもしれない。

結論から言うとロールキャベツはびっくりするほど簡単にできた。たぶんコツは、ちゃんと大きなキャベツを見つけることだと思う。

今日はいつもより1.5倍くらいのサイズのキャベツを見つけたので、前回ちっともきれいに包めなくてただのキャベツとハンバーグの重ね煮になってしまったのが嘘のように、おどろくほどきれいにできた。

お肉のタネ自体にしっかり味を付けたので、たっぷりのコンソメスープで煮ただけでしっかりおいしく。

こうやって煮込んだそばから、ぱくぱく食べてなくしてしまえるものなら、煮込むのってやっぱりストレス解消になるかも。

 

11年目の青い海

てくてく歩いて、泊海水浴場に。

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あとで知らべたら、最初についた野伏港から歩いて5分くらいの近さだったらしい。最後にもうひとつ海を見たいというときにはぴったり。

今回3つ訪れた海の中で、わたしはこちらの海がいちばん好きだったかも。

あまり人がいない季節に海に行くのが好きなので、がらんとした海水浴場は何度も歩いたことがある。

季節外れの海水浴場というのは時間帯によってはほんとうに誰もいなくて、それがともすれば、物悲しい静けさを醸し出すものだけれど、ここはただぽかんとひたすら明るくて。

砂浜といいつつも、けっこう大き目な小石も転がっているので、歩くのなら裸足よりはビーチサンダルがあるといいと思う。

箱庭のようにしずかできれいな砂浜を見渡しながら、わたしはずっと、小学生のときに国語の教科書で読んだ話を思い出していた。

お父さんだかおじさんだかがソーミンチャンプルー(あの話ではじめてチャンプルーという料理をわたしは覚えた)を作ってくれるシーンで、なんだかこんな海が挿絵として入っていた気がするのだけれど。

記憶はふしぎだ。

緑がけぶる人っ子ひとり通らない道を、「このみちーはー いつかきたみーちー」と歌いながら港へ向かって歩く。

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港には、乗船時刻の15分前に着いた。

今回は島の右半分をぐるりと回っておしまいという弾丸日帰りトラベルだったけれど、次はもっとのんびり来たいなあ…と思っていたら、帰りの船が30分遅れるとのアナウンスが。

日帰りの旅だと、まだぜんぜん疲れていないのでこういうハプニングもうれしい。

どこかに行って戻ってくるほどの時間はないかなということで、港のまわりをぶらぶら。

まわりのどこを見ても海なので、それだけで心たのしい。ほんとうに海がきれい。

屋外だけれど、屋根のある待合場所があるので、まださほど暑くない5月のはじめであれば、30分待つのはまったく苦ではなかったなあ。

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後で食べようと思って、お昼ごはんといっしょに買っていたたまごサンドをひとつずつつまみながら、海を眺める。

たまごサンドは三角に切られたクラシックなやつで、茹でたたまごをつぶしたシンプルなもの。

ちいさいころ、家で母が作ってくれたような懐かしいやつだ。

少しひんやりしてきて買った、あたたかい紅茶花伝も、子どものころとても好きだった飲み物。

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そうこうして、とりとめのない話をしているうちに、遅れていた船が到着した。

行きよりもだいぶ大きな船に、待っていた人々といっしょに乗り込んで、ここから3時間で日常だ。

今度は温泉の方にも行ってみよう、と喋りながら、涼しい船内で今日撮った写真を眺めている間に、いつのまにか眠りこけてしまった。

なにか厚ぼったいミステリーでも持って行って、日がな一日、海のそばでだらだらお酒を飲みながら過ごすのもいいなあ。

GW中、結局たいそうな遠出をしたのはこの日だけだったのに、ものすごく休んだ気分になる都心から3時間の楽園だった。

上京してきてからずっと、きれいな海に飢えていたけれど、十年を超えてようやく東京で海を見つけた。ずいぶんと慣れてきたのは気のせいではない。

でも、見つけてないきれいなものも、きっとまだまだここにはある。