理由のないアルコール
今年のGWは、たくさんではないけれど、ちょくちょくお酒を飲んだ。ビールとか、カクテルとか、ハイボールとか、いろいろな種類をちょっとずつ。
例年とちょっとちがうのは、家に何本かボトルがあるということ。宅飲みがあるわけでもないのに、お酒を買うこと自体が珍しい。それもビールやワイン以外のものを。
一度、いやいや飲み切れないでしょう、とスル―したメーカーズマークも、結局3日目にボトルのかわいさに負けて買った。
もともとウイスキーは外で飲むときにも好きなお酒のひとつで、すぐにダメになるものでもないし、いいかな! と。
蝋が溶けたようなデザインで封がされていて、ラベルまでしっかりかわいい。ロゴの書体もかわいいなあ。しばらく眺めて、えいやっと蓋を開けたら、蝋のデザインはそのままちゃんと残って、二度うれしかった。
そのままロックで飲んだり、あっさりとソーダで割ったりもしたけれど、いちばんのヒットは断然、アイスクリームにかけること。
これがもう、ほんとうに悪魔的においしくて! アイスクリームを買う時にバニラを選ぶことって、今まではほとんどなかった。でも、この食べ方をして以来、ついついバニラフレーバーを選んでしまう。
チョコ系でもおいしいし、バニラならなんでもいいくらいおいしくなるのだけれど、でもやっぱりハーゲンダッツのバニラだと格別。
完全に悪い贅沢な夜の味がする。こっくりしたお酒の色もとてもきれい。
天気が良かった日にはもっとさわやかに、昼間っから、水のように透明なライチのお酒を飲んだ。
青い小説を読みながら、ロックですっきりと。
読んだのは、10代のころに全集の中に入っているのを読んだっきりだった、ずいぶんと懐かしい小説。時の流れにびっくりする。
そして再読して、記憶していたのとはまったくちがうお話だったことにまたびっくり。こんなあらすじだったっけ、と。おそらく別の作品と混同しているのだろうけど、それが何かは思い出せず。何だったんだろう?
戸惑いながら読んでいたら、昔どこかで読んで人生訓のようになっている一文にとつぜんぶつかって、三度驚いたり。
嫌いな人がいたら、好きになるところまで離れればいいのよ
こちらこちらで、ぜんぜんちがう小説の一節だと思い込んでいたのだからおもしろい。
自分を作っているものというのはたくさんあって、そのどれもで、わたしは割にはっきり覚えているとばかり思っていたのだけれど、どうやらそうではないらしいということが最近ぽろぽろ出てくる。
でも、そういう勘違いをひとつひとつ正しい記憶に戻していくのも、また心たのしい。
お酒を飲んだり、コーヒーを飲んだりしながら、少しずつ。
ビールをいつ好きになったのかは、はっきり覚えていないけれど、ウイスキーを好きになったのは20代最後の5月だとしっかり覚えていよう。
バニラアイスクリームを好きになったのは、メーカーズマークをかけて食べた休日の午後3時だということも。
大人になって好きになったものは、子どものころと違って、好きになった理由が自分の中でとても明白だ。だから、決して失わない気がして、その分安心して好きでいられる気がする。
お酒はこうやって打ち上げでも、憂さ晴らしでもなく単に休日を祝うためだけに飲むのがいちばんたのしいなあ。