ときどき晴れのくもり空

いつか想像してた未来と今が少し違っていたって

日曜日の音

日曜日。

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お昼過ぎに唐突に家にいるのに飽きて、あてもない散歩に出た。

Tシャツにマキシスカートというのんきな格好で、すぐ帰るつもりだったので、日焼け止めもぬらずにふらふらと。

ストッキングを穿かないサンダルの足元はものすごく涼やか。そろそろビーチサンダルを出してもいいころかしら、と思う。

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白と黒のボーダーのビーチサンダルは、数年前にサマーランドに行ったときに買ったもので、イエロー1色のものも気に入っていたのに、いつのまにかどこかへ行ってしまった。

どこかへ行ってしまったと言うのも変なもので、もう親に勝手に持ち物を処分されることもないのだから、自分で始末したのだろうけれど、ちっとも覚えていない。

ベランダ履きにして汚れてしまったから、引越しのときに処分したのだっけ。

 

外に出てみると、お昼にピーマンの肉詰めをつくった余波で、部屋の中がずいぶんむっとしていたのがわかる。昨晩の残りのごはんをおにぎりにして、昨夜出し損ねた冷やしトマトも出して、なんだかお弁当みたいなお昼ごはん。

わたしは休日にそういうごはんを食べるのが好きだ。それも快適な家の中で。おにぎりを食べたくなるのもだからたいてい休日だ。

ピーマンの肉詰めは、母の得意料理でわたしたち姉妹はこの料理でピーマンのことを好きになった。

なぜかいちばん最初に自分で作れるようになったレシピが、サバイバル料理の本に載っていた「ピーマンのじゃこ炒め」だったり、もともと特にピーマンが苦手だったわけではないのだけれど、でも好きになったのは間違いなくこの料理のおかげ。

ふつうのハンバーグよりもこっちの方が、家でしか食べられないので、むしろうれしかったくらい。

それにしても、ピーマンのじゃこ炒めの何がサバイバル料理だったんだろう……。

 

表に出ると、雲が多いけれどきれいな青が広がっていた。夏のような空なのに、暑過ぎないのでとても歩きやすい。

何度も歩いたことがある方向へ、いつもとはちがう道をたどって進む。細い道を歩くと東京でも人がちゃんと生活していて、上京してもう十年が経つのに、毎度毎度そのことにびっくりする。

歩きながら大きく伸びをして、さっきまでめがねをかけていた眉間を揉んだら、肩の凝りもすうっと空へ溶けていく気がした。

ぶらぶら歩いて、新しいお店を発見したり。

そういうのもたのしいのだけれど、ただ歩いているときにしか話せないことってあるなあ、と思う。特に重大なことではない、ささいなこと。でも、今すごく話したいなあということ。

その癖、そういうときいつも、ソ連に生きる主人公が「密談は公園でするに限る」と言っていた物語の一節を思い出す。

あれはなんの話だったっけ。映画だったのか小説だったかのか、それともまんがだったのか。

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家を出るまで読んでいた小説にコーヒーが出てきたので、最後にスターバックスによって、なぜかコーヒーではなくティーフラペチーノを買って帰ってきた。

クラシックティークリームフラペチーノ。思いのほかしっかり紅茶の味がして、甘すぎずおいしい。

結局、コーヒー欲は、家で先週買ったライオンの絵のついたコナコーヒーを淹れて満たし、ピンク色のドーナツをかじりながら、ぱらぱらと読書をした。

昨晩録りためていた『僕だけがいない街』のアニメを今更一気見して非常に満足してしまったので、中途半端なものを見る気持ちにもなれず、TVはつけたり消したり。でも、あんまり読書もはかどらず、なんだかぼんやりした日曜日。

洗濯ものを土日両方回したし、しっかり自炊もして、洗い物もきちんとしたし、部屋も少し片付けた。結局帰ってきて換気もしたし、ウォーターサーバーの水も換えたし。

遊びに行きたい遊びに行きたいと思う気持ちと同じくらいの強さで、こういう当たり前のことを当たり前にする休日を求めているんだなあと思う。

 

晩ごはんは、昨日のロールキャベツで使い切れなかったキャベツをつかって、てんぷら粉でお好み焼きを焼いた。お好み焼き粉の賞味期限が豪快に切れていたのでやむをえず……だったのだけれど、意外となんとでもなるもんだなあ。

子どものころ、お好み焼きといえば日曜日のごはんだった。それも、家で作ることはほぼなく、いつも同じお店で外食と決まっていた。

たくさんマンガが置いてあるお店で、わたしはそこではじめて『金田一少年の事件簿』を知ったんだと思う。それから、『20世紀少年』を。他にも、そのお店でわたしはいろんな少年マンガと出会った。

父がじゅうじゅう音を立ててお好み焼きを焼いてくれるのを聞きながらだったら、あんなに不穏な金田一のお話も、ぜんぜん怖くなかったなあ。

焼き上がる前になんとかがんばって1巻読もうとして、それで、本を読むスピードが速くなったような気すらする。

ぱちぱちとソースとマヨネーズのはぜる音。青のりをふんだんにふる父の「もうすぐできるよ」の声と、青のりを嫌がる母のクレームの声。となりで同じように夢中で漫画をめくっている妹の真剣な横顔。

お好み焼きを焼く音には、守られていた平和な日曜日の名残がある。

来週が終われば、お互いに何の予定もない週末がしばらく広がっているけれど、無理に予定を作らず、こんな風にのどかな日曜日を過ごすのもいいなあという気がした。

 

理由のないアルコール

今年のGWは、たくさんではないけれど、ちょくちょくお酒を飲んだ。ビールとか、カクテルとか、ハイボールとか、いろいろな種類をちょっとずつ。

例年とちょっとちがうのは、家に何本かボトルがあるということ。宅飲みがあるわけでもないのに、お酒を買うこと自体が珍しい。それもビールやワイン以外のものを。

一度、いやいや飲み切れないでしょう、とスル―したメーカーズマークも、結局3日目にボトルのかわいさに負けて買った。

もともとウイスキーは外で飲むときにも好きなお酒のひとつで、すぐにダメになるものでもないし、いいかな! と。

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蝋が溶けたようなデザインで封がされていて、ラベルまでしっかりかわいい。ロゴの書体もかわいいなあ。しばらく眺めて、えいやっと蓋を開けたら、蝋のデザインはそのままちゃんと残って、二度うれしかった。

そのままロックで飲んだり、あっさりとソーダで割ったりもしたけれど、いちばんのヒットは断然、アイスクリームにかけること。

これがもう、ほんとうに悪魔的においしくて! アイスクリームを買う時にバニラを選ぶことって、今まではほとんどなかった。でも、この食べ方をして以来、ついついバニラフレーバーを選んでしまう。

チョコ系でもおいしいし、バニラならなんでもいいくらいおいしくなるのだけれど、でもやっぱりハーゲンダッツのバニラだと格別。

完全に悪い贅沢な夜の味がする。こっくりしたお酒の色もとてもきれい。

 

天気が良かった日にはもっとさわやかに、昼間っから、水のように透明なライチのお酒を飲んだ。

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青い小説を読みながら、ロックですっきりと。

読んだのは、10代のころに全集の中に入っているのを読んだっきりだった、ずいぶんと懐かしい小説。時の流れにびっくりする。

そして再読して、記憶していたのとはまったくちがうお話だったことにまたびっくり。こんなあらすじだったっけ、と。おそらく別の作品と混同しているのだろうけど、それが何かは思い出せず。何だったんだろう?

戸惑いながら読んでいたら、昔どこかで読んで人生訓のようになっている一文にとつぜんぶつかって、三度驚いたり。

嫌いな人がいたら、好きになるところまで離れればいいのよ

こちらこちらで、ぜんぜんちがう小説の一節だと思い込んでいたのだからおもしろい。

自分を作っているものというのはたくさんあって、そのどれもで、わたしは割にはっきり覚えているとばかり思っていたのだけれど、どうやらそうではないらしいということが最近ぽろぽろ出てくる。

でも、そういう勘違いをひとつひとつ正しい記憶に戻していくのも、また心たのしい。

 

お酒を飲んだり、コーヒーを飲んだりしながら、少しずつ。

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ビールをいつ好きになったのかは、はっきり覚えていないけれど、ウイスキーを好きになったのは20代最後の5月だとしっかり覚えていよう。

バニラアイスクリームを好きになったのは、メーカーズマークをかけて食べた休日の午後3時だということも。

大人になって好きになったものは、子どものころと違って、好きになった理由が自分の中でとても明白だ。だから、決して失わない気がして、その分安心して好きでいられる気がする。

お酒はこうやって打ち上げでも、憂さ晴らしでもなく単に休日を祝うためだけに飲むのがいちばんたのしいなあ。

 

土曜日はちいさなお城

先日。吉祥寺でずいぶんと長い一日を過ごした。

吉祥寺に行くのも、なんだかんだで久しぶり。気取っていないのにハレの日感がある街で、単純にたのしい。そういえば、お花見の時期には、もう何年も行っていないなあ。

朝一で出かけて用事をひとつ済ませ、そのままちょっと早めのお昼ごはんに向かう。

前日に予定を伝えたら、外でできる作業を持って行こうかなと恋人も言ったので、単に用事を済ませるだけの一日が、期せずしてお出かけデーに。

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お昼はちょっと健康的なものが食べたくて、八十八夜に。お隣のいせやのいい匂いに唆されながら、階段をなんんとかのぼりきる。

からあげというものが、わたしは心底好きなのだけれど、ここのからあげはふわっさくっとしていてぜんぜんジャンクじゃなくてちょっと別ジャンル。でもてんぷらとかフリッとではないんだよなあ。ふしぎな味。

かなりのオシャレサイズなので、これだけだと腹八分目という感じ。食後についてくるドリンクがしっかりおいしいので、それを楽しみつつ、のんびりする御代も含めたランチ代かなあ。

そういえば、吉祥寺にいたころは雑穀米ばかり食べていたなと思いながら、するするとワンプレートをたいらげた。

 

お昼を食べたら帰るかな……くらいの気持ちだったのだけれど、ずいぶんと天気のいい日で、そのまま帰るのもしのびなく、もう少し外をふらふらすることに。

ぐるっと公園をひとまわりしてもよいなあと思いつつ、天気のいい日にひんやりと涼しい室内から外の景色を眺めるほど心たのしいことはないので、表の見えるカフェを探して入る。

その前に書店によって、わたしは久しぶりに単行本で本を買った。 

かがみの孤城

かがみの孤城

 

辻村深月さんの新刊。

本を片手にアーケード街を練り歩く。少しアーケードの外に出ると、もはや夏日の東京の土曜日は夏休みのように底抜けに明るい。じりじりと日焼け止めが必要な強さで太陽が照りつけ、ありもしないプールの匂いがどこからかしてくるからふしぎだ。

そんな明るい土曜日の午後に、ひっそりと静かであつい小説を読んでいるうちに日が暮れていく。

結局、軽い晩ごはんまで食べて、夜の9時頃にようやく吉祥寺を後にした。

永遠に終わらないような気がした長い長い土曜日で、今思い出しても、なんだか遠い記憶のようにひたすら乾いて明るい光景がまぶたの奥に広がる。

同じ日に買ったこちらの本は、そのさっぱりとした後味を消し去りたくなくて、結局数ページしか読んでいない。 

BUTTER

BUTTER

 

そんな土曜日の思い出。

 

AM7:00にジャムを煮る

先週今週と、朝からジャムを煮ている。

まさか自分の人生で、朝からジャムを煮る週末がくるとは思わなかった。そんな子どものころに読んだ少女小説の登場人物みたいな行動をするなんて。人生っておもしろい。

先週なんて6時に目が覚め、朝ごはんを食べてしまったら特にすることがなくなり、7時過ぎからことことと煮はじめた。

急にそんな乙女ちっくな行動に走った理由は特になくて、苺がたたき売りされてたから。

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小粒な苺がぎっしり。

そのまま食べたり、シェイクにしてもいいのだけれど(実際それもやった)、ちょっと酸味が強かったのでジャムにすることに。

あ、そういえば連休中に読んだ『きのう何食べた?』でシロさんがつくっていたのが、直接的な動機といえば動機かも。今調べたら、1巻で既にジャムを煮ているみたい。これを読むと、わたしの自炊モチベーションはわかりやすく上がるので。

何度読んでも同じ効果があるのがすごい。

きれいに洗ってへたをとった苺を小さな鍋に放り込んで、その中でざっくりお砂糖と混ぜ合わせる。どうせ煮ながら多少つぶれるので、苺は刻まずにそのままで。

ほんとうはこの時点で時間を置くらしいのだけれど、シロップ煮でもいいかなくらいの気持ちだったので、雑にそのまま火にかける。

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苺とお砂糖、そしてレモン汁だけなのに、あっというまにぶわわっと甘い液体がお鍋の中にあふれてきてびっくりする。

人生ではじめて作ったのは小学校の生活の授業だったと思う。もちろん、一年生が火を使えるはずもなくて、ひたすらくだものをスプーンの背でつぶしていくという、いかにも原始的な方法だったけれど。

班ごとに課題の果物がちがって、たしかわたしのいた班は、ぶどうのジャムというずいぶんと渋いものを割り当てられていたと思う。

それ以来のジャムづくり。

7時でも、もうしっかりと明るい東京の朝の光の中、キッチンで甘ずっぱい匂いをいっぱいに吸い込みながら、ちょっとノスタルジックな気持ち。

10分ほどでびっくりするほどあくが出てくるので、それをこまめにすくうために、コンロの前にちいさな脚立を持ってきて火の番を。本を読みながら、ことことことこと小一時間煮込む。

今日のおともは、『ラオスにいったい何があるというんですか?』。一章一章が短い紀行文なので、ついお鍋の世話を忘れてジャムを焦がしてしまう……という悲しい展開にもならないかなと思って選んだ。

とろりとしてきたところで、火を止め、瓶につめてひっくり返して粗熱をとる。このままパンケーキにかけたりしてもおいしいと思う。

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新しく作ったものが冷めるのを待ちながら、先週作ったジャムをハーゲンダッツのバニラにかけて、贅沢な土曜日のおやつに。

ジャムを煮る女の人には悩みごとがあると書いていたのはなんの小説だったっけ、わたしはよっぽど気持ちがぽっかり凪いでいるときにしかこれは作れないなと思いながら、おいしくたいらげた。

悩みを煮詰めるまではいいのだけれど、それがきれいな色で華奢な瓶に数か月保存されると思うと、なんだかそれはすさまじい感じがしてちょっとためらう。

悩みが次々きれいな色のジャムになっていくなんて、ファンタジックでかわいいようでいて、冷静になるとだいぶこわい。

嫌なことは全部端から忘れてしまいたいタイプなので、しあわせなときにだけジャムは煮ようと思いながら、なんだか煮込みたりなくて、晩ごはんはリクエスト通りロールキャベツをつくった。

 

ロールキャベツは数年前に一度作って、びっくりするほどきれいにつつめなかったので、苦手な料理のひとつ。

今日じゃなければ、作る勇気がわかなかったかもしれない。

結論から言うとロールキャベツはびっくりするほど簡単にできた。たぶんコツは、ちゃんと大きなキャベツを見つけることだと思う。

今日はいつもより1.5倍くらいのサイズのキャベツを見つけたので、前回ちっともきれいに包めなくてただのキャベツとハンバーグの重ね煮になってしまったのが嘘のように、おどろくほどきれいにできた。

お肉のタネ自体にしっかり味を付けたので、たっぷりのコンソメスープで煮ただけでしっかりおいしく。

こうやって煮込んだそばから、ぱくぱく食べてなくしてしまえるものなら、煮込むのってやっぱりストレス解消になるかも。

 

11年目の青い海

てくてく歩いて、泊海水浴場に。

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あとで知らべたら、最初についた野伏港から歩いて5分くらいの近さだったらしい。最後にもうひとつ海を見たいというときにはぴったり。

今回3つ訪れた海の中で、わたしはこちらの海がいちばん好きだったかも。

あまり人がいない季節に海に行くのが好きなので、がらんとした海水浴場は何度も歩いたことがある。

季節外れの海水浴場というのは時間帯によってはほんとうに誰もいなくて、それがともすれば、物悲しい静けさを醸し出すものだけれど、ここはただぽかんとひたすら明るくて。

砂浜といいつつも、けっこう大き目な小石も転がっているので、歩くのなら裸足よりはビーチサンダルがあるといいと思う。

箱庭のようにしずかできれいな砂浜を見渡しながら、わたしはずっと、小学生のときに国語の教科書で読んだ話を思い出していた。

お父さんだかおじさんだかがソーミンチャンプルー(あの話ではじめてチャンプルーという料理をわたしは覚えた)を作ってくれるシーンで、なんだかこんな海が挿絵として入っていた気がするのだけれど。

記憶はふしぎだ。

緑がけぶる人っ子ひとり通らない道を、「このみちーはー いつかきたみーちー」と歌いながら港へ向かって歩く。

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港には、乗船時刻の15分前に着いた。

今回は島の右半分をぐるりと回っておしまいという弾丸日帰りトラベルだったけれど、次はもっとのんびり来たいなあ…と思っていたら、帰りの船が30分遅れるとのアナウンスが。

日帰りの旅だと、まだぜんぜん疲れていないのでこういうハプニングもうれしい。

どこかに行って戻ってくるほどの時間はないかなということで、港のまわりをぶらぶら。

まわりのどこを見ても海なので、それだけで心たのしい。ほんとうに海がきれい。

屋外だけれど、屋根のある待合場所があるので、まださほど暑くない5月のはじめであれば、30分待つのはまったく苦ではなかったなあ。

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後で食べようと思って、お昼ごはんといっしょに買っていたたまごサンドをひとつずつつまみながら、海を眺める。

たまごサンドは三角に切られたクラシックなやつで、茹でたたまごをつぶしたシンプルなもの。

ちいさいころ、家で母が作ってくれたような懐かしいやつだ。

少しひんやりしてきて買った、あたたかい紅茶花伝も、子どものころとても好きだった飲み物。

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そうこうして、とりとめのない話をしているうちに、遅れていた船が到着した。

行きよりもだいぶ大きな船に、待っていた人々といっしょに乗り込んで、ここから3時間で日常だ。

今度は温泉の方にも行ってみよう、と喋りながら、涼しい船内で今日撮った写真を眺めている間に、いつのまにか眠りこけてしまった。

なにか厚ぼったいミステリーでも持って行って、日がな一日、海のそばでだらだらお酒を飲みながら過ごすのもいいなあ。

GW中、結局たいそうな遠出をしたのはこの日だけだったのに、ものすごく休んだ気分になる都心から3時間の楽園だった。

上京してきてからずっと、きれいな海に飢えていたけれど、十年を超えてようやく東京で海を見つけた。ずいぶんと慣れてきたのは気のせいではない。

でも、見つけてないきれいなものも、きっとまだまだここにはある。

 

 

水曜日のバカンス

15分ほど歩くと、するりと民宿街に辿り着く。急に人やお店がたくさん出てきて(あくまで島比だけれど)ものすごくにぎやかに。

先ほどまで歩いても歩いても緑だったのが嘘みたい。

夏の似合う島らしく、カラフルな色合いの背の低い建物がぎゅっと集まっている。このあたりにきてようやく、自転車にも車にも乗っていない人とすれちがったかな。

お昼はこの通りの「おくやま」さんで売っているづけ丼を買って行こう、と思っていたので、ちょっと人通りの多さにはらはらするくらい。

お店に着いたのは12時半過ぎだったのだけれど、無事、づけ丼とまぐろのたたき丼をゲットして一安心。

それぞれおべんとうの相棒にビールを1本ずつ選び、浮かれた調子で外に出て、うっかり更に浮かれたいでたちになった。

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となりにあるレンタサイクル屋の「まんぼう」さんで、ソフトクリーム!

まだ石白川海岸のすぐ近くにある「パラダイス」というかき氷屋さんはやっていなかったので、ここで浮かれた行動に出てよかったー。やっぱりおやすみなんだから、ソフトクリームを食べないと。

そろそろ太陽もかなり高くなり、暑くなっていたのでめずらしくバニラではなく、さわやかなメロンフレーバーを選んだのだけれど、見た目のシャリシャリ感よりも実際に食べるとクリーミーな味わいでほてった体に染みわたるおいしさ。

ソフトクリームを舐め終わるころにまた視界が開けて、海が広がっているのが見える。

石白河海岸だ。

砂浜に降りる階段の途中に、海を眺めながら食事ができる場所を発見、木のテーブルとイスがあるスペースで、屋根はないもののたっぷりした緑が頭上を覆っているため、腰を降ろしていてもちっとも暑くない。

 

というわけで、かんぱーい。

https://www.instagram.com/p/BTqBURnA2v1/

まさに水曜日のバカンスだったので、久しぶりに水曜日のネコを。このパッケージ、ほんとうにかわいい!

都会で飲むのが似合うとばかり思っていたけれど、こんな風に島でお昼ごはんといっしょに飲むのもよく似合う。

とても口あたりの軽いベルギービールで、太陽の下で飲んでいるとなんだかノンアルコールみたい。

乾杯をしたら、すぐにいそいそおべんとうを開けて。

わたしは初志貫徹で、づけ丼を。大島にも行きたかったなと思っていた最大の理由がべっこうずしだったので、これでもう大満足!

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しっかり味がついているのにしょっぱすぎず、からしをつけるとちょうどいいピリッと感が生まれる。ごはんが酢飯なのも個人的にはうれしい。お酒が進む味!

島歩きで失った塩分を補いつつ、生ものなのでぱくぱくと一気に完食。明日葉のお惣菜があっさりした味だったので、いい箸休めになった。

 

恋人はづけがあまり得意ではないので、好物のまぐろのたたき丼を。

こちらも一口もらったら、すごーくおいしかった!

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どちらもちょうどいいボリューム。帰りにもう少し何か食べ歩きできそうだなあ、という八部目な感じ。

残っていたビールもごくごく飲んで缶を開け、砂浜に降りてみることに。

喜び勇んでサンダルを脱ぎ、足首までだけでした早めの海水浴は、水がエメラルド色でともかくきれい。ちっとも写真を撮っていないことには、帰ってから気づいた。

ひんやりと冷たいけれど、ずっと歩いてあたたまっていた体には心地いいくらいの適度な冷たさ。全身使ってもたぶん泳げる温度だったんじゃないかなあ。

とても小さな海水浴場なせいか、砂浜にいる人がみんな適度なバランスを持って配置されているかなんだか箱庭みたいな海。

シュノーケルをしている人もいたので、水中アクティビティが好きなら、夢のような海かと。

真夏に来たらそれでももっと人がおおそうなので、ゆっくり海に浸るにはこれくらいの時期がいちばんいいかもしれない。

 

ごはんを食べて、お酒を飲んで、海に足を浸して……ともかくのんびりのんびりして。

これで旅の目的はぜんぶ達成! と言いたいところなのだけれど、島の海を堪能するべくもうひとつ海水浴場をはしごすることに。

というわけで、ぐるっと来た道を戻り、帰りの船が出る野伏港の近くにある泊海水浴場へ。

くじらのいる公園

8時に東京を出発して、式根島に着いたときは11時ごろ。とにもかくにもおなかが空いた! ということで、まずは朝ごはんを調達しにいくことに。

朝はパン派なので、あげぱんが売っているという池村商店さんをめざして進む。中学校と小学校の近くらしいとだけ調べ、とりあえずそのあたりに向かって。

地図を見ながらとはいえ、とても雑な歩き方だったのだけれど、なんとなく曲がるべき角で曲がり、あとは道なりに進むと、するするお店の場所まで辿り着いた。

港からお店までの道は、わたしたち以外誰も歩いてなくて、車も自転車もほとんど通らず、ただただこぼれるような緑が続く。

そんなずいぶん静かな道がお店があるあたりで急に開けて、郵便局や学校が見えてくる。

既にお客さんがちらほらいる店内の奥へ進み、3種類あるあげぱんの中でシナモンを。

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実は給食であげぱんというものを食べた記憶がない(あるのかもしれない)ので、体感的には、ほぼ人生初あげぱん。

これが、けっこうなサイズでびっくり!

中になにかが挟まれているわけでもないのに、パン自体がもちもちしていて、なんだかプレッツエルの更にもっちりした版みたいなものなのね。たっぷりまぶされたシナモンもおいしく、ぺろり。

ほかにも焼きたてのパンや、アカイカの焼きそばなんかもあっておいしそうだった!

あげぱんを齧りながら郵便局の横を曲がると、右手に小学校、少し歩くと左手に中学校が見えてきて、なんだかほんとうにとってもとってものどかな気分。

郵便局のあたりには人がいたのだけれど、中学校を超えると、また緑と太陽だけの道に戻る。

こぼれるような緑があるせいか、風が適度にあるせいか、太陽はしっかり出ているのにそんなに暑くなくて意外に歩けるものだなあ、と。

おなかがいっぱいになったので、とりあえず海が見たいという欲求を満たすべく、がんがん歩いていたら歩き過ぎて、高台に出てしまった。

https://www.instagram.com/p/BTqBg8LgGvZ/

小の口公園という公園なのだけれど、突如大きな公園が出現してまずびっくりし、その隅にはかなりのサイズのくじらが寝転んでいて、二度びっくり。

小学一年生のとき、国語の授業で『くじらぐも』という話をやったことを思い出した。あの物語を習ってからしばらくは、校庭でやる体育の準備体操で空を見上げるのがたのしみだったっけ。

奥にはかんたんなアスレチック遊具や、東屋もある。

子どものころ大好きで、どこの公園に行っても混んでて順番待ちだったターザンロープ(?)が、ただ風にゆらゆらと揺れていて、なんだか人が消えてしまったみたいに静かな公園だ。

こんなところで子どものころGWに遊べたら天国だろうなあ……。

きれいに整えられた花壇も美しく、ここでおべんとうを食べるのもしあわせだと思う。

もちろん、この公園からも海が見える。

ずっと内陸を歩いていたので、港を離れて以来、久々に見る海! どこまでもどこまでも青い。

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こちらの海は砂浜ではなく、どうやら下に降りると釣り場がある(?)らしく。

降りられそうな階段も急だったので上から眺めるだけ眺め、港から30分弱ほぼずっと歩きっぱなしだったので、東屋に座って船の中で買っていたお茶を飲んで一休みした。

あまりにのどかで、こちらでしばらくぼーっとしてもよかったのだけれど、海は海でも砂浜のある海をより強く求めているので、少しだけ休んでまた歩き出す。

そろそろビールも飲みたかったし!

というわけで、海を見ながら乾杯をするべく、民宿街に寄ってから石白川海岸に向かうことに。