さんぽとお祭り
11月のこの時期は、いつもさんぽをしている。
過去の日記をぱらぱらっと見てみても、圧倒的に活動的なのは秋で、それはたぶん気候がいいせいというよりは、「今年が終わる前にしておきたいこと」リストにようやく真剣に向かい合う時期だからだと思う。
わたしはなんでも、スロースターターだ。そして一気集中型。
よくないよくないとは思っているのだけれど、受験生のときに直らなかったので、もう一生直る気がしない。
ということで、今週の土曜日はお祭りに行こう! と勇んで家を出て、結局あまり関係のない公園でだらだらとごはんを食べて帰ってきた。
家を出てからはじめて、お祭りが金曜日だったと知る。
ケバブを食べるつもりだったので、パンを求めてパン屋さんへ。わたしが選んだのは、はじめてのパン屋さんでも、見かけるとついつい買ってしまうラピュタパン。
黄身が絶妙な半熟で、黒こしょうが効いていておいしい。ここのラピュタパンは、縁がマヨネーズで囲われていてジャンクな味。
雨に濡れた公園は、熱心にしゃぼん玉をしている親子連れや、かけっこをしているちいさな兄弟であふれていてのびのびとにぎやか。
お父さんに見守られて繰り返し繰り返し自転車の練習をしている子がいたりして、あまりにも休日の公園らしくておもしろい。
ドッグランをしている犬たちに目を細めながら、ぱくぱくとパンを食べ、パックの紅茶を飲む。
前日、ハーゲンダッツの新フレーバーを「たしかバナナきらいだったよね?」と一口しかあげなかったせいか、恋人は珍しくバナナジュースを飲んでいる。バナナ好きのアピールのつもりらしい。
のどかな土曜日のお昼過ぎ。
とのんびりできるのも、お祭りは先日、早足で堪能したから。
人ごみでごった返す駅で待ち合わせをして、屋台だらけの道を練り歩く平日は、ちょっとふしぎ。
なにはなくとも東京カステラを買えば、わたしのお祭り欲は満たされるのだけれど、今回は晩ごはんも兼ねていたので、お祭りめいたものではなく、ふつうの串焼きや、近くのお店が出している一品料理の屋台が気になる。
ケバブと大阪焼きを食べながら、ひとしきり見て回って、焼きそばとタコ焼きという屋台メニューを戦利品に帰った。もちろん、東京カステラもきっちり購入して。
大学生のとき、よく代々木にスケートを観に行っていたとき、慌てて歩く原宿からの道なりに出ているぽつんとした東京カステラの屋台が、すごく好きだった。
スケート観戦がわたしにとってハレの日だったのは、あのほかほかの包みのせいもある、と今になって思う。焼きたてのカステラの包みを抱いて歩いていると、これはお祭りだ、という気がした。
あたため直すと翌日でもおいしく食べられるので、ちょっと多めの20個を買って買える。
昔はお祭りというと、食べる食べないは置いておいて、まずわたあめやりんごあめ、とテンションが上がるものを買い求めなければ気が済まなかった。
もちろん今も、やっぱりそういう屋台を見るとわくわくするけれど、晩ごはんを買って帰るなんて大人になったなあと思う。
こうして、今年のやりたいことリストのひとつ、「おまつりに行く」は、なんとか滑り込みセーフだ。
ほんとうはお祭りは、夏に行きたい。来年こそは夏祭りに行きたいのだけれど。
夏の間はちっとも元気が出ないのだから、こうしてずっと先送りになっているわけだ。
1年越しのサングリア
何一つそれらしいことをやるわけではないのに、ここ数年、ハロウィンが終わるとなんだかほっとする。クリスマスの支度をしてもいいんだと、正式にカレンダーに言われた気がするから。
1週間前には、那須に旅行に行ったときに買ったちいさなリースを玄関に出し、クリスマスコフレのカタログを眺めて、幸福に迷ったりもした。
秋を通り越して、冬に片足をつっこんだ気分。
その支度の一環として、去年買ったままもったいなくて開けられずにいたサングリアキットを、ようやく使ってみた。
昨年ふらっと入ったPLAZAで売っていた、ちいさな瓶。135mlの市販のちいさなワイン瓶が少し余るくらいのサイズ感がとてもかわいい。
ワインを注いで最低4時間、冷蔵庫で冷やせばできあがり! というほんとうにお手軽なキット。そして1年賞味期限があるのにもびっくり。
マンゴー&パインには白ワインを、もうひとつのローズ&アップルには赤ワインを注いで。
赤ワインを注いだ方は、写真にとっても肉眼でも、なにがなんだかさっぱりわからなくなってしまったのも、ご愛嬌。
白ワインを注いだ方は、だんだんと淡いピンクが濃くなっていき、4時間後にはきれいなサーモンピンクになっていた。
赤と白のキャンディーケーンが入っていたので、その色かな?
瓶の口が広いので、ワインが注ぎやすくてそれも素敵。そして、見た目じゃなんだかわからない上に、薔薇の花のせいで飲みにくいローズ&アップルの方がやたらとおいしかった!
今年も似たようなものが出ているようだけれど*1、もっとすらっとした瓶みたい。
これはこれでスタイリッシュで素敵。
ただ、個人的にはこれくらいぽてっとしたフォルムが好みなので、今年も同じのがまた発売されないかな、と待っている。
おいしかったローズ&アップルを買いに行って、結局、ビジュアルがかわいいもうひとつの方も買ってしまいそう。
ところで昨日は、このサングリアができるのを待つために、チーズとソーセージをあたため、ビールの缶を開け、やはりどうしてもワインが飲みたくなり、おたるワインを引っ張り出してきたので、なんだか妙にアルコールづいた土曜日になった。
たくさんあるじゃがいもを茹でて、ポテトのチーズ焼きにして食べたり、きのこを炒めたり。おつまみを食べながら、お酒を飲みながら、お酒ができるのを待つ自堕落な時間。
晩ごはんも、生ハムやらおかわりしたチーズやらで、浮かれたパーティーメニュー。寝ながらゲームをしたりして、かなりの“悪い大人感”。
夜中、日付が変わる頃、iPhoneの壁紙もホリデー仕様に変更する。
早くもホリデーシーズンが始まったかのような、お気楽な週末だった。
ノスタルジックな目元
暑い時期にはどんどんメイクが簡潔になっていくずぼらな人間なので、こうして少しずつ寒くなってくると、逆にだんだんメイクが濃くなっていく。
そもそも使う色自体が、秋冬の方がはっきりしたものが多いというのも、ひとつの要因だろうけど、今年はそれに加えて、久々にラインをしっかり引くメイクに戻ってきたということが大きい。
メイクが仕上がった後、鏡の中で目が合う自分の顔がずいぶんくっきりしていて、縁取ることの威力を再確認する秋。
ねぼけていると正直、失敗すればごまかしの効かないこのひと手間は、すぐに省きたくなる気持ちがふくらむのだけれど、引いた後のくっきりとした威力を思うと省くのも心許なくなる。
今使っているのはタイプも色も形状も違うもの、ふたつ。
ひとつは、いろんなアイライナーに浮気をして戻ってきたdejavu。高校生のとき、メイクをしていた友人はみんな、このライナーとパルガントンのルースパウダーを持っていたなあ、と思い出す。
このライナーは、体育祭のときに腕や頬にメッセージを書くのにもつかわれていたわけで、そう考えればこのにじまなさと落ちなさは、昔からよく知っていたのだった。
原点回帰で購入したのは、グロッシーブラック。
もう一年くらいこんなくっきりした黒は引いていなかったので、ちょっとそわそわするキレの良さ。
アイシャドウは艶だけ出す淡いベージュでおしまい、でも十分強い目元になる。
これにマスカラをきちんと塗ると、他のメイクはもういらないんじゃ! という気分になるくらい、顔がしっかりくっきりよそいきになる。
わたしはアイドルやモデルさんが出すフォトブック的なものが大好きで、色々と本棚にはかわいい女の子たちが表紙を飾った本が並んでいるのだけれど、見返してみたら、大学生の頃に集めたそれらのカバーガールは、みんな下までくっきりこういうラインで囲っていた。
あの頃の洋服の流行は、今よりずっと清楚でお嬢さんっぽいのに、メイクはぜんぜん隙がなくて、そのギャップが面白い。
ところで、店頭で試したとき、あまりの発色の良さに「ブラウンにしようかな……」と日和る気持ちを制したのは、こちらは夏の終わりから使っているもうひとつのアイライナーがあったから。
正確には、たぶんライナーじゃない。
いつだかの"My Little Box"に入っていたブラウンのアイクレヨン。触るとすぐに欠けてしまうくらいやわらかな芯で、少し太めのラインでよければ、一切ストレスなくするすると引ける。
紙に引こうとすると先がつぶれてしまうくらい、やわらかな芯。
でも、なぜか肌には先がきちんと尖ったまま引けるので、ラメがきれいに入っているのもかわいく、夏の終わりからずっと重宝している。
ラインとして引いてから、そのまま指でアイシャドウの湿っぽくぼかしてもいいし、そもそもぐっと二重幅に引いてしまってもいいし。
dejavuとは逆に、こちらは引いた後に微調整が効くところがよくて、よく使っている。
そして、このクレヨンをつかいはじめてから、妙にしたくなるメイクがあって、それはなつかしの「たれ目メイク」。
いちばんメイクに興味を覚える年代の中高生のときに、わたしのオシャレアイコンはブリトニー・スピアーズだったので、あのがっつり上下をブラウンのラインやシャドウで囲むメイクは、永遠のあこがれ。
でも、高校生までは色つきリップ以外は何もメイクをしなくて、大学生になったら分別がつき、あの囲みメイクは似合わないとわかったので、ためさずにここまで来た。
- アーティスト: ブリトニー・スピアーズ,ジャスティン・ティンバーレイク,M.マーティン,B.スピアーズ,J.エロフソン,BT,C.ヒューゴ,J.フッカー,ラミ,J.シュワルツ,D.ヒル
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でも、このやわらかなブラウンならちょっといいかな、と思って最近、休みの日には少しだけ下まつげの際にもクレヨンを滑らせている。
なんだかノスタルジックな秋のメイク道。
ファッションも、久々にボウタイブラウスなんかが流行っているし、ちょっと今年の秋はふしぎな気分だ。流行がめぐるだけの時間を生きた来たんだなあ……。
なんだかこそばゆくて、とてもたのしい。
Just an ordinary Sunday
日曜日。遊び歩いて〆のラーメンまで食べて帰宅した土曜日から、地続きの朝。
お客様用のふとんを書斎に引いて、もう1年以上ほこりをかぶっていたTVに電源を入れて、お泊りパーティーをした。朝までゲームをやるのだ!
もっとも、わたしはだいたいにおいて、引かれるほどゲームが苦手なので、物語パートをすすめるところ以外は、本や雑誌をめくりながら茶々を入れる係。
その分、あたたかい飲み物を作ったり、スナックを用意したりというところは精力的に担当した。あまいものとしょっぱいものを取り揃えて。
少し前から食べる機会を逃していた冬の楽しみ、Rummyも引っ張り出してきた。
レーズンはきらいなのに、ラムレーズンだけはなぜか好き。それはたぶん、このチョコレートが特別だからだと思う。
冷蔵庫にはよく冷えたビールもあり、お酒を飲んでもよかったけれど、眠ってしまうのがもったいなくてチョコレート以外はノンアルコールで。
以前お客様が来てくれたときには、リビングにふとんを出したので、書斎で眠るのははじめてだったのだけれど、思いのほか快適。
ずっとやたらと寒い部屋だと思っていたのだけれど、だいたいどこでも優秀なヒーターを連れてきてしまいさえすれば、エアコンがある部屋よりもよっぽどすぐにあたたかな場所に変わるのだった。
じゃがりこ(だんぜんサラダ派)とRummyを食べながら、ゲーム好きがすいすいとバトルをこなしていくのを見届ける。
そうして、ぱらぱらと1年前の雑誌をめくっていたら、いつのまにか眠ってしまっていた。
わたし以外は、朝の5時まで(!)ゲームをしていたらしい。これぞお泊り会の醍醐味という感じでちょっとうらやましい。
もっともたっぷり寝た日曜日の朝は、夜更かしして迎える昼と同じくらい幸福ではある。ひとりで家を抜け出して、ぴかぴかと明るい秋の朝を歩いて深呼吸をした。
戻ってくると残りのメンバーも起きだしていたので、コーヒーだけ淹れて銘々好きなパンをもそもそと食べる。わたしは、チーズとハムのホットサンドイッチ。
さすがにゲームには満足したらしく、ごはんを食べたら全員で二度寝。
わたしはというとひとりたっぷり寝た分、あまり眠くなかったので、ネイルを塗り直したりしていた。
最近よく爪が欠けるので、ネイルを塗り直す前に珍しくきちんとケアもする。
My Little Boxに入っていたオリジナルコスメ。
実際にはもう少しハッピーで軽快なイエローで、見た目よりずっとさらさらしている。これ、いつのに入ってたんだろうと遡ったら、先月のだった。記憶力……!
昔、お花の閉じ込められたネイルオイルがすごくはやって、受験で東京に来たときに羽田空港のPLAZAで買ったことを思い出す。あれから10年以上経ったけれど、あのときに好きだったものは結局、今も変わらず好きみたい。
その後もパーティーフードとしか言えない晩ごはんをずいぶん早い時間帯から食べ、つるつると日曜日が終わっていった。
録画した番組をTVで流していたのだけれど、その合間にうっかり地上波のサザエさんが流れ出し、慌てて消したりしたくらい自堕落な休日。
夜になってようやく静かになり、書斎にしいていたふとんをしまったけれど、まだ眠れずにふわふわしている。
「食べて喋って眠って」以外のことはほぼ何もしなかった日曜日。今年あと何度、こんなのどかな週末があるだろう。
それにしても、いつも寝ない場所で眠ると言うのはそれだけで非日常でおもしろい。これはぜひ、年内にもう1回くらいやりたいなあ。
秋のことはじめ
寒い。晴れているのに寒くて、ああもうだめだこれは秋だ、と白旗を上げたのは2日前のこと。
書斎の隅で眠らせていたヒーターを稼働させ、久しぶりにブレーカーのことを気にしながら、ドライヤーを使った。
8か月ぶりにつけたヒーターは、眠っていたのが嘘のようにすぐにきちんとあたたまってくれて、電化製品と言うのはほんとうにかしこい。今年の秋はじめて、ぬくぬくしながら歯磨きをした。
それにしても、寒い。
外を歩くとそうでもないのだけれど、この家は夏でもひんやりしている分、秋から冬にかけてはほんとによく冷える気がする。すぐにドアとカーテンを開け放つせいかもしれないけれど。
今は、昼間からキャンドルを灯し、最近淹れたコーヒーがすぐに冷めてしまうので、淹れたそばから慌てて胃に収めながら、久しぶりにダイニングテーブルでパソコンに向かっているところ。
子どもの頃、妹と2人で使う子ども部屋にちゃんと勉強机を持っていて、しかも子ども部屋はリビングの隣だったので、実を言うとあんまりダイニングテーブルで勉強をした覚えはない。
高校生の時にはリビングにコタツが導入されたので、そこでは受験勉強を朝方までやったものだけれども。
そして今に至るまで、家計簿と言うものをつける甲斐性もないまま大人になってしまったので、ダイニングテーブルで日常的に何か作業をするということから、とんと遠い人生だった。
にもかかわらず、こうして座ってパソコンを開いてみると、「何か作業をするにはここしかない」と思うから不思議だ。
キャンドルからはパチパチと薪がはぜるような音が聞こえていて、とてもあたたかな空気。
WoodWickというアメリカのブランドのようで、芯が木製(?)らしく、火を点けるとパチパチと音が鳴る。お店で見かけたときのひとめぼれは、こちらのリザーブジャーだったのだけれど、香りがもう少しやわらないものがよくて、普通のジャータイプに。
WoodWick(ウッドウィック) WoodWickリザーブジャー「 ドリフトウッド 」 キャンドル 85x85x115mm (W924051001)
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きれいなブルーにレザーのハングタグ! 写真を見ると改めてときめく。
ただ、テーマが「キャンプをしている大人の男の休日をイメージ」 されたものらしく、やはりちょっとかっこいい香りのラインナップみたい。
小さなジャーはベリー系の香りまで取り揃えられていて、かわいらしくやわらかな香りが多かった。
連れ帰ったのは、中ではユニセックスな部類であろう"Fireside"という香り。
アンバーとムスクというあたたかな香りで、灯している間の音と香りはもちろん、火を消した後に長く甘い残り香が続くことが気に入って、最近よく灯している。
キャンドルとせっけんに関しては、買うのも好きだし頂き物でもよく頂くしでどんどんたまっていく。
なのに、もったいなくてなかなか使えず、引越しのたびにしまいこみどこにやったか忘れる……というのをここ数年繰り返していたので、そろそろなんでも好きなものはどんどん使って楽しむ方向にシフトしようと。
夏のキャンドルもロマンチックだけれど、やっぱり寒い季節には炎のあたたかさがよく似合うし。
直接的にあたたかさを求めるために、先週の金曜日は、毛糸のくつしたも解禁した。
今年はパープルをベースに白が編み込まれたものを。こういうざっくりとした編地がわたしはほんとうに好きで、でも意外と風を通すので服で着るのは寒くて苦手。
さっそくこの週末は、風が吹かない室内で、ざっくりした肌触りを心行くまで楽しんでいる。毛糸にあたためられた足先はあまりに快適で、なぜ今までやせ我慢をしていたのか不思議になるくらい。
そうして少しずつ秋を楽しみ始めると俄然冬も待ち遠しくなり、玄関に置くスリッパも、クリスマスに焦がれたノルディック柄を引っ張り出してきた。
夏前から止まっていたかけ時計の電池も変え、リースを出す準備もはじめると、どんどん楽しくなってきたから、準備という行為は偉大だ。
ちなみに、暖房はとっくに解禁されている。
今年はヒーターを使ったのは11月に入ってからなので、だいぶがんばった…と思って昨年の日記を振り返ってみたら、むしろ昨年は12月半ばまで暖房をつけずにがんばっていた。
……ちょっと今付けている暖房、消そうかしらという気持ちになる。
そういう意味では、この日記はほんとうに備忘録としての意味合いが強くて、毎年そう思うからこそ、ずいぶん後からでも、クーラーをつけた日や暖房をつけた日は、何がなくとも記録しているんだと思うとちょっとおかしい。
来年のわたしのために、今年の秋は、11月4日から正式にはじめたことを記しておこうと思う。もう少し暖房は我慢してもいいよ。
桜に間に合った一年
過ぎ去っていく春の中で、そういえば、今年は数年越しの桜を見たのだった。夏に夏にと気持ちが急いているけれど、あの一日を思い返すと春もいいものだったなあ、と口元がほころぶ。
思い返してみると、東京に来てからプライベートでお花見をしなかったのは、昨年だけだ。
場所は色々だけれど、毎年どこかでお酒やお弁当片手に桜は見上げていて、なかなか公園まで辿り着けなかった年でも、一駅手前で降りて歩き、並木桜を眺めながら帰ったり。
それもあって、今年こそは、東京にやって来て最初に見た桜を、そろそろもう一度見に行きたいなあと思っていた。
実は、働き始めた翌年、電車に乗った。
ただ、意気揚々と向かった先で、しとしととまさかの雨に降られて以来、なんとなく足を延ばすのが億劫で、ずっと行けていなかった場所。
地元のお店がささやかな屋台を出し、たくさんのお花見客もいるのに、広い道路の両側に、桜があまりにもたっぷりと咲き誇っていて、なぜだか全体的にとても静かだ。
ここの桜の咲き方を見るたびに、わたしは「しゃあしゃあと咲く」という表現を思い出す。
とても立派なのに、なぜかあまり威風堂々という感じはなくて、どこまでも健やかにあけっぴろげに咲いている感じ。
着いたのはお昼過ぎで、おなかが空き過ぎて、静かながらもお祭りの匂いが漂う道に甘えて、駅前のマクドナルドでフライドポテトを買い、食べながら歩く。
すれ違う人も、だいたい何かしら手に持ったものを口に運んでいて、既にたっぷり空いたビールの缶を持って駅へ戻ってくるグループもいる。
ゆっくりゆっくり進んでいる間、見上げても見上げても広がる桜色の空に、それだけで満足してしまいそうになりながらも、せっかく来たので、お目当ての場所まで歩いた。
特等席は、太い道路の上に渡った歩道橋の上で、それを知っている人々でみっしりと賑わっている。
少し順番を待って上がると、見渡す限りの桜並木。階段を上がり下がりしているときには、手を伸ばせば触れられそうな距離にある桜をぱしゃぱしゃと写真に収める。
残念ながら、ほんの少し曇っていたので、もう一度近いうちに、ぴかぴかに晴れた日に、ここからこうしてこの景色を眺めたいなあ、と思う。もうちょっとゆっくり。もうちょっとぼうっと日常の風景として。
はたして有給を取って平日に来たところで、この混雑がないのかどうかは未知数だけれど。
少し歩けば小さな公園があって、そこであれば座ってゆっくり見られそうだなあと思いつつ、だいぶ桜には満足したので、反対側の通りに降りてそちらの空を見上げながら駅の方へ向かう。
通りには評判のケーキ屋さんがあって、もし空いていれば…と覗いてみると、そちらもしっかり混んでいた。
あの歩道橋で桜を眺めた人は、みんなここに吸い込まれているんじゃないかと言うくらい。
するすると列に吸収され、生菓子は頼めないままお会計の順番が来てしまい、焼き菓子と紅茶だけを買って外に出た。シュークリームとエクレアが美味しそうで、ちょっと心残り。
他の花を見てもおなかは空かないのに、桜を見ているとなぜかおそろしく食欲がわく。何か食べたいなあとふらふら歩いていて、お店を決める間も我慢できず、海苔巻きを買った。
河童巻きと迷って恋人が決めた、かんぴょう巻という渋いセレクトを齧りながら、駅からまた少し別方向に歩いて、最終的に最初からちらちら視界に入っていたお店に落ち着いた。
ホットサンド専門店、という看板が掲げられた小さなお店は、テイクアウトもやっているようで、チーズの溶けるいい匂いをふわふわと道まで漂わせている。
散々歩いた後だったので、お店に入ってゆっくりすることに。
前日似たようなものを食べたばかりだったので、ふだんであれば確実に頼んでいるローストビーフとマッシュポテトはやめ、厚切りベーコンとパルミジャーノとモッツァレラをオーダーし、奥の席へ。
結果的には「好きなものなら3食連続でもOK」と言う恋人が件のローストビーフのサンドイッチを頼んだので、気になっていたそちらも一口もらうことができた。
まだ少し肌寒くて、ジンジャーエールは飲みきれないくらい。でも、次の週末にはあらかた散ってしまったようなので、よかったかな。
季節のイベントはどんどん前倒しで街を賑やかすようになり、少々うっかりしてても大丈夫だけど、桜だけは週末の都合を待ってくれないままだ。
だから、桜に間に合った年はなんだかいい一年になりそうな気がする。
というようなことを、5月頃に書いていて、たしかに今のところ2016年は悪くない一年だ。
それにしても5か月があっという間だったなあ。来年は、桜に間に合う年になるのだろうか、なんて心配がもう遠い未来のことじゃないなんて。
Autumn in the Room
もはや寒い。10月もちょうど半分。
そろそろヒーターの季節かしらとこの日記を振り返ってみたら、去年はもう既にヒーターを付けていた*1。そう考えれば、今年はまだ少しあたたかいのかもしれない。
昼間はとてもとてもいい天気で、今年はもう少しねばろうと思い、部屋着にパーカートレーナーをかぶってやり過ごすことにした。重いカーテンを開け放った窓辺にいると、きらきらとあたたかい。
9時過ぎには目が覚めて、朝ごはん。二度寝しようかと思ったけれど、それには少し寝覚めがよすぎた。寝たのは3時過ぎだったのに、ふしぎ。
たまごとチーズとソーセージが焼かれている間に横で、ブルーベリーがたっぷり巻き込まれたパンを焼き戻して、あたたかい紅茶を淹れる。
Janatのアールグレイはびっくりするくらい華やかなベルガモットの匂いがして、ティーバッグなのに贅沢な気分。寝ぼけていても起きてすぐにあたたかい飲み物が安全においしく飲めるので、ティーバッグもウォーターサーバーもすばらしい発明だと思う。
ミニトマトとマスカットとぶどうも、ガラスのお皿に盛られてスタンバイし、すこやかな朝。
スクランブルエッグを食べ、カチョカヴァロを食べ、あまりにたっぷりした大きさに食べながらもう一度あたため直して最後まであたたかく食べたソーセージと、追加でもう1枚焼いたパンまで胃に収める。
スピーカーからは珍しくiTunesが全シャッフルで流れていて、少しぬるくなった紅茶をすすったときには数か月ぶりに聞くアンジェラ・アキが流れていた。
アルバム『BLUE』の中に入っている「You and I」で、わたしはこの曲のベートーベンのくだりがとても好き。
嫌なことがあるとこの歌のその部分を頭の中で流してみて、「たいしてそれほど今嫌な気持ちじゃないな」と確認する。
歌詞とはちがい、あくびをしたのはわたしの方で、恋人はすっかり覚醒した顔でつめたいミルクを飲んでいた。
キッチンをまかせて洗濯物を干していると、いつのまにかスピーカーからは、ここ半年ほど休日の午前中によくかかっているLittle Glee Monsterがかかっていた。伸びやかでするりと秋の空を割って天に届くような、気持ちのいい歌声。
梅雨の時期から聴いているけれど、秋になってからの方が耳に気持ちいい気がする。にぎやかで明るくて、青空がよく似合って、なんだか運動会みたいな音楽だ。
蜂蜜を落としたカフェオレを手に、伸びやかな音楽の中でごろごろ。
恋人が買ったという新しい靴を見せてもらったら、俄然わたしも買い物熱が湧いてきて、ネットショッピングを。
靴を買うつもりが、既に(!)セールになっていたシンプルなニットを買ったり、それにすっかり満足して『ネクロポリス』を読み返したりしていたら、いつのまにか少し日が落ちていたので、靴下を履きブランケットをかぶってソファーに寝転がって過ごした。
焼き菓子にまみれている休日なので、紅茶を淹れたくなり、紅茶を淹れるとこの本が読みたくなる。
そして、この本を読むといつもなぜか『ハリー・ポッター』が観たくなるんだよなあ。
と思いつつ、夕方、突如として『Re: ゼロから始める異世界生活』を観始める。リアルタイムで1話を観ていたのだけれど、当時はノリに乗り切れず離脱してしまっていた。
この間、ひっそり推しているAKB48の岡田奈々ちゃんが、じゃんけん大会でコスプレをしていたので、ここらでもう一度観てみようかな、と。
3話までは、やはりなかなかノリに付いていけずに「うーむ」と思っていたのだけれど、4話からは怒涛! 今はするすると12話まで観て、まだ半分という事に安堵しているところ。
でも、熱が醒めるまでに見終えられるかなあ……。
観ている間にすっかり日が暮れて、今更晩ごはんの買い物に行くのも億劫になり、冷蔵庫と冷凍庫の中を一掃して、簡単でめちゃくちゃな献立の晩ごはんを作って食べる。
菜っ葉のお味噌汁にチーズ入りの餃子、舞茸とベーコンの炒めもの、きゅうりの浅漬けというあっさりしているのかいないのかわからないメニュー。
食後、そういえばもうクリスマスコフレの時期じゃないの、と思いながら美容誌をぱらぱらめくり、そこかしこに踊る2017年という数字をしみじみと眺めた。
もう一年経つのか……。一年って、月並みな言葉だけれどほんとうに早い。ヒーターを買ってからもうすぐ二度目の冬が来るなんて、うそみたいだ。
サンダルをしまい、オープントウのパンプスをしまい、ぱっきりとしたイエローやパープルのスカートをしまい、爪先を彩る赤が少しずつくすんだものになる。そのたびに、少しずつ秋が深まっていく。
数か月ぶりにストッキングを履くようになり、それでも少し寒くて、もはやタイツを新調しなきゃと考えている。
クローゼットの奥にしまっていたふかふかのバスローブを出し、そろそろもこもこのルームシューズも出すべきかしらと悩む日は、今年も思っていたより早く来てしまった。
秋を惜しむように、空を眺めに出ていたここ1か月強だけど、部屋の中で感じる秋もたくさんあるみたいだ。
そろそろ、壁に貼った夏を探すポストカードも、貼り換えないと。