ときどき晴れのくもり空

いつか想像してた未来と今が少し違っていたって

正解のあるお菓子

天気が悪かった今日は、この時間まで一切外へ出ず、寝たり起きたりを繰り返しながら、ためっぱなしだった写真の整理や、ネットサーフィン、そして久々に恩田作品を一気読みし、海外のコージーミステリまで手を出したりした。

日常の復習のような、休みが永遠に続いているようだったあの頃のように、特には何もしない贅沢な一日。

 

今読んでいるコージーミステリは、紅茶屋さんが舞台なので、ページをめくるごとに、おいしそうな紅茶やら、焼き菓子やらの描写が目に飛び込んでくる。だいたいそういうことに気を取られているので、こういうミステリを読んでいる間、わたしはほぼ謎解きはしない。

定番のスコーンに、コロテッドクリーム、苺のタルトに、ラム酒の味がするクッキー。そういうものが次から次に出てきて、章の間にはご丁寧にレシピまで挟まれているので、ともすると、自分が何の本を読んでいるのか危うくなる。

結果的に、お土産に……と買った方のクッキーにまで、手を出してしまうそうな勢いで、クッキーの消費が進んでいく。

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ほろっとした食感で、見た目の可愛さからの期待を裏切らないおいしさ。お土産用に買ったのは、このちょこんとしたバッグ型のパッケージで、色合いがまた、とてもかわいくて半分衝動買い。

紅茶のクッキーには、ちょこんとオレンジピールが乗っているところまで、かゆいところに手が届くかわいさで、誰かにあげたくなること間違いなし。

最近の観光地のお土産というのはすごいなあ、としみじみ思う。昔懐かしいお土産をもらうのも好きだけれど、初めて見る「あげたくなるもの」が多くて、最近、自分ではついぞ地元の銘菓的なものを買って帰った記憶がない。

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物語の中でも、雨が降り始め、芯まで凍えた観光客が、主人公のティーショップに次々と迷い込んでくる。

そこでは温かい紅茶がふるまわれ、そして、必ず焼き菓子が勧められるので、わたしもついつい手元のクッキーをつまんでしまう。ちなみに、事件はちっとも解決しそうにない。

 

とはいえ、子どもの頃、既製品のクッキーというのは、わたしにとって、そんなに心躍るおやつではなかった。

たとえば、色とりどりのクッキーが入った大きな丸缶。たくさんある、という安心感が希少性を落としたのかもしれないし、さくっとした食感が、あまり好きでなかったせいかもしれない。

かといって、バターがたっぷりと入ったケーキ屋さんのクッキーも、おいしいとは思うけれど、「わああ」という感じではなかった。いっしょに入っているフィナンシェやスコーンにはテンションが上がったし、元来、粉もの好きなのにも拘らず、不思議である。

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たぶん、クッキーは正解を知りすぎていたからだと思う。

他のお菓子と違って、基本的には材料を混ぜ合わせ、生地をこねて焼けばできるクッキーは、子どもの頃から何度も母と妹といっしょに作ったお菓子だったし、小学校中学年くらいから、お菓子作りの得意な友人が、学校にもお手製のクッキーを持ってきてくれた。

アイスボックスクッキーや、チョコチップクッキー、ナッツを散らしたクッキーに、少し大人の味がしたレモンクッキー。小学生のとき親友が焼いてくれた、ジェリーが焼きこまれたクッキーに、高校生のとき、バレンタインにもらって目を見張ったアイシングクッキー。

色々と口に入れた瞬間は個性を放ちながらも、後味はどれもシンプルな同じもの。バターと粉とお砂糖の味。あの鼻を抜ける甘い香りが「正解」として刷り込まれているので、クッキーだけはお菓子作りの上手な友人のもの、が至高だと思っている。

 

だったはずなのに、いつの間にか、少しずつ市販のクッキーも好きになってきた。たぶん、昔に比べてお土産のクッキーのレベルまでもが上がったせいで、FUJIYAMA COOKIEもそういうクッキーのひとつだった。

家用にと買ったのは、たっぷりと入った水色の箱だったのに、もはや半分も残ってないという始末。

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ホワイトチョコのかかったてっぺん以外は、とても素朴な味がして、しあわせになる。ケーキもドーナツも、アイスもわたしはシンプルなものよりも、華美なものの方が好きだけれど、クッキーだけは、素朴さが何よりもうれしいのである。