骨ぬき
どうせなので、お昼ごはんと晩ごはんの記録もまとめて。
お昼がいちばんジャンクだったかもしれない。
最終日の今日くらい、何か作ろうかなあと思い、料理の描写がたくさんあるかな、と積読だった『あの家に暮らす四人の女』を読み始めたのだけれど、意外にそういう話ではなくて、戸惑っている内に一冊読了してしまった。
途中でカラスが喋りだしたときに、「そっちか!」と思ってからは、それはそれで面白く。
さて、お昼ごはん。
1日目は、食べたような食べてないような……もはや記憶が曖昧である。晩ごはんは、手巻き寿司パーティーをした。
お刺身とひきわり納豆を探して、切らしかけているお米も買って。
たぶん、わたしが東京のスーパーでみかんに対して抱いているのと同じ歯がゆさを感じているのだろう。「高いなあ」と逡巡したイクラも「パーティーなので買います」と売り場に戻って購入する。
家に帰ったら8時過ぎ。急いでごはんを炊飯器にかけて、その後は特にすることがないお手軽な夕食。炊飯器に呼ばれるまで、ごろごろ本を読んでいた。
酢飯が嫌いな恋人は、ほとんどそう思って食べないとわからないくらい、ささやかな酢飯を作る。
2日目はお昼ごはんからしっかり覚えていて、この日は、おにぎりだった。
なぜはっきり覚えているかと言うと、朝ごはんを食べた後、『かもめ食堂』を流したからで、この映画を観るともうその直後の食事はおにぎりしかない! という気持ちになる。
ふしぎなことに、わたしの手は女の人にしては大きい方なのに、なぜかおにぎりだけは小さくしか握れない。
いつもの常で、きゅっと小ぶりな塩にぎりを3つずつ握り、先週、面白いくらいたくさん漬け込むだけ漬け込んで冷凍していた生姜焼きを焼く。梅干しとしその実を添えて、汁物がなかったので、温めるだけの豚汁を。
しまった、豚がかぶったなあと思ったものの、食材や味のかぶり具合を気にするのはわたしだけなので、まあいいやと食卓に着いた。
3日目は朝ごはんが遅かったので、ブランチも兼ねていたので、お昼は抜き。
子どもの頃に夢中でやっていたゲームをしている間に、すっかり日が暮れてしまっていて、夜中の11時くらいに、慌てて冷蔵庫の中にある材料でマーボー茄子を作り、丼にして食べた。
4日目は、数年ぶりに冷凍のえびピラフを食べた。
レンジでチンするだけのピラフは、ジャンク禁止令が出ていた我が家で、なぜか子どもの頃、冷蔵庫に常備されていた不思議な食べ物で、妹の好物だった。
ファミレスに行っても、妹はハンバーグやらエビフライやらなどまったく目に入らないようで、いつもえびピラフを頼んだ。
ちなみに、わたしはと言えば、同じレンチン系なら、エビグラタンの方が好きだったので、実家にいたころは、実はそんなに食べたことはなかった。
食べるようになったのは、大学生のとき、帰省していた時。朝に弱い母がまだ寝ている日のお昼ごはん、何か自分で作るのもめんどうで、しかもきっと起きてきたら何か食べようという話になるなあ、というそんなとき、温めるだけのこちらは非常に適切な「その場しのぎ」だった。
量も適宜、調整でき、ラップをしてスタートボタンを押すだけでいい。
当時、わたしは炊き立てのお米ですら、あまり好んで食べなかったのだけれど、どこかおかしめいたこのピラフだけは、むしろおいしいものだなあと思っていたのだから、ふしぎだ。
「ダメなお休みのお昼ごはんと言えば!」とまさかの意見が一致したので、5日分の食料の買い出しに行ったスーパーの冷凍食品コーナーで、こちらも久々にちょっと食べたくなったえびグラタンと共に、かごに放り込んで帰ってきた。
驚いたのは、恋人の家では、わざわざフライパンに油をひいて、炒めていたということ。ほんとうに、人は大きなことから小さなことまで、まったくぜんぜん別の論理と習慣で出来上がっているものである。
違う家庭で育った人というのは、単純に面白い。というわけで、今回は炒めてみた。数年ぶりのえびピラフは、これこれ、という味。
レンチンよりも少しぱらっとしていて、食感だけ少し、記憶の中と違った。晩ごはんは、唯一の外食。食後には、夕焼けを探しに行く散歩がてら、この夏最後のソフトクリームを食べた。
最終日の今日も、お昼は相変わらず手抜き。
初日から食べたかったのに、『よつばと!』を読み返していて出て来た「カレーライスのにせもの」というフレーズが頭から離れず、なぜか手が伸びてしまったハヤシライス。
カレーが食べたいのだけれど、カレーって作るとしばらくカレーなんだよね、と「カレー」としか言ってないわたしのわかりにくい主張に対し、それならこういうズルもたまにはいいんじゃない、と連れて行かれたのがレトルトコーナーだった。
あ、それもいいなあ、と思った。3食全部ちゃんとしなきゃ……と思っていた、家でごはんを食べるハードルが一気に下がって、巣籠の支度というよりはむしろ、キャンプに行く準備をしているみたいな気持ちになる。
そこでリミッターが外れたように、その後、ばんばんピラフやグラタンを買ってしまうわけだけれど。
それにしても、『よつばと!』は面白いなあ。
よつばの生まれてはじめての夏休みが終わる巻では、悲しいのか懐かしいのか、なんだかよくわからないけれど、だああああああっと涙があふれてきて、びっくりしたまま、久々に嗚咽というものをした。
熱いのは嫌いだし、いっそ秋の気候が永遠に続けばいいなあと思うくらいには、年中この季節を待ち望んでいるにもかかわらず、夏が終わると言うのは、それが充実したものであれ、どんなにだらだらと過ぎたものであれ、悲しい。
なんだかもはや単にデトックスでは……というくらい涙を出して、連休終了。
晩ごはんには、すっかりおいしい季節になってきた湯豆腐を食べた。今年の秋はじめての湯豆腐。おいしそうな鱈があったので、鱈と白菜を入れて。ネギはそんなに好きじゃないので抜いて。
好きなことしかしない、というこの連休にふさわしい、わがままな晩ごはん。食後はMステのランキングTOP5を予想しながら、最後だけ『SPEC』にチャンネルを変えた。
だらだらを尽くした5日間。3日目くらいに抱いた「なんだかお正月みたい」という感想が、いちばん実感として近いなあとしみじみ思う。
最高にだらけた5日間だった。でも、このお休みのいちばんいいところは、これからはじまる。また2日行けばお休みなんて! 毎年こんな具合だったら、あっという間に9月が最愛の月に繰り上がるだろう。
次は11年後。そのときも、こうしてしあわせだといいなあとにやけるくらいには、この連休の魅力に骨ぬきにされている。