街角、馬車、ただの土曜日
休日。待ち焦がれていた休日!
朝7時に起き、時刻を確認して10時過ぎまで二度寝。一度も起きずに昼まで寝るもの素敵だけれど、達成感では二度寝に勝るものはない。目が覚めた後も、できるだけベッドでごろごろごろごろして、平日たまっていた洗濯物を回す。
予定がある週末も楽しいけれど、これからなんでもできる! と思えるから、予定のない週末はとても自由な感じがする。
しっかり焼いたターンオーバーの目玉焼き、ココナッツ味なのにちっとも甘くないパンケーキ、こってりとしたさいきんお気に入りのサンドイッチの具である照り焼きポーク。
豪快なポテサラに、休日じゃなければ添えないレタス、かぼちゃのポタージュやネーブルのシロップ漬けを浮かべたカスピ海ヨーグルト。
パン1枚で終わらない朝食を食べながら、今日は何をしよう、と考えているときがいちばんしあわせかもしれない。
先週末は、本格的に衣替えをした。かさばるニットをすべて出し、インナーとして着る薄手の服も今年はほぼしまいこんで、完全に秋冬仕様。
それに伴い、久々に家を大掃除して、ソファを動かしたりと、越してきて何度目かの模様替えした部屋は、平日ちっとも片づけなくてもわりときれい。帰って電気を消して、だけの月~金には思わなかったけれど、起きてまじまじ見ると、なんだか別の部屋になったようである。
ここ数週間、掃除や片づけをしながら、ジブリやら『デスパレートな妻たち』やらを観る生活が続いていて、なんだか実家に戻ったような日々。遊び回るのもいいけれど、土曜日の昼に、窓を開けてのんびりするのも、なかなかしあわせである。
午前中に用事を済ませてしまうと、土曜日は永遠に長い。平日は気を抜いた格好ばかりしているので、少しはこぎれいな格好をして、お昼を食べに行くことに。
衣替えを生き延びた少し厚手のワンピースに、おそらく妹のものだったネイビーのジャケットを羽織り、買ったばかりの黒のブーティーを履いて、パールのネックレスを首から下げると、この季節が好きだなあと思う。
服を着ているというのがいちばん心地よい季節だし、コートを着なくてもいいので、肩もこらない。
お風呂上りも、さらっとした生地のキャミソール1枚じゃちょっと寒くて、今年の2月以降しまいこんでいた、ふかふかのバスローブを引っ張り出してきた。お湯であったまったはずの体が上がったそばから冷えてきて、もうそんな季節なんだと気づく。
冬支度は完璧で、でもまだ少し身軽な装備で冬を待つこの数週間が、とても好きで、特に用事はなくても、散歩に出かけたくなるのだけれど、目的がない散歩でおもしろいものに出会うととても得した気分。
この間は、普通の道路で、青毛の馬を見た。
春や夏なら、もちろん白馬も素敵だけれど、秋晴れの高い空の下、悠然と歩く黒い馬の美しいこと! 引いている馬車まで、すべてつやつやした黒で、ゆっくりゆっくり広い道路を歩いていく姿は、浮世離れしていた。
まるで毎日のことのように、あまりにも当然のようにゆっくりゆっくりと歩を進めていくので、のどかな土曜日の午後2時、何も不思議なことは起こっていないかのよう。
突如あらわれた1台の馬車に、まわりのそこかしこでシャッター音が聞こえて、ようやくこれは「不思議な光景」なのだな、と実感する。
街を歩けば馬車にあたる、というのは、中でもとてもスペシャルな方だけれど、 東京の街角はいつも何かしらの驚きにあふれている。
何もなくてもそれだけでいい週末が、すこし特別になるものがちりばめられていて、だからいつも、あてもなく散歩に出たくなるのかもしれない。