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ときどき晴れのくもり空

いつか想像してた未来と今が少し違っていたって

年に一度の、まいにちのパン

life murmur yumyum

ささやかなしあわせと言えば、この間、ようやく念願のパーラー江古田に。

https://www.instagram.com/p/BCRY0yDr5X6/

行った、とすぱっと書けないのは、本店さんの方ではなく、2号店「まちのパーラー」さんの方に行ったからである。

こちらの方が、少しお店が広いと知って、せっかく訪れたのに、入れなかったり、メニューが終わっていたりするよりは! と。

なので、最寄駅も江古田ではなく、小竹向原というところ。東京に来てだいぶ長くなったけれど、生まれてはじめて降りた。

もっとも、パンのためだけに、はじめての町にやってくるというのも、生まれてはじめての経験である。

 

お昼と夕方のちょうど真ん中の時刻、小さな駅は、とても静か。

2番出口を出ると、ここでほんとうに合ってるのだろうか……地図通りに歩いて、ほんとうにお店があるのかしらん、と気持ち不安になるくらいに、のどかに静かな空気で満ちている。

出口を背にしながら、右に進み、そのまま道なりに進む。

低い壁の隙間から見える、タオルばかりがずらっと並んだ洗濯竿や、大・中・小の並ぶ自転車。

どうやら下校時刻らしい小学生が、バイバイを繰り返しながら、曲がり角ごとに少しずつ少しずつ減っていく。

5分くらいその集団と付かず離れずの距離で歩き、わたしもそろそろ、この列を見守るポジションから離脱したいなあ、と思ったころにぽんっとレンガ造りの保育園が現れた。

https://www.instagram.com/p/BCRYosDL5XV/

まちのパーラーは、まちの保育園に併設されているカフェだとは聞いていたけれど、まさかほんとうに入口まで同じだとは!

「部外者なのにいいのかしら……」と、躊躇しながら、おそるおそる扉を開くと、右上に「まちのパーラーへようこそ」と書かれた黒板がお出迎え。

そのままふらふら前に進みたくなるのをこらえて、左を向くと、カフェの入口が見える。

どこから入ればいいのかわからず、そのドアをとりあえず開けてみたら、どうやら正解だったようで、ほっとして周りを見渡した。

小さなスペースに、所狭しとパンが並ぶのに気を取られながら、奥へ。今日は時間があるので、ちゃっかりイートインを利用して帰る予定なのだった。

 

頼むものは、『孤独のグルメ」にも出てくるらしい、ローストポークのサンドイッチにしようと思って来たものの、実際にメニューや、周りのお客さんが食べているのを見てしまうと、あれもおいしそう、あっちもいいかも……! と目移りしてしまう。

でも、次に来られるのかわからないし、と気持ちを奮い立たせて、なんとか初志貫徹。

小さなお店なので、待っている間も、ずっとパンが焼けるいい匂いがして、自分の体まで、日なたに溶けていくみたいな気持ちになる。

後は散々、パンで迷って、限定のカンパーニュがあったので、それにしてもらうことに。

https://www.instagram.com/p/BCRYydtL5Xw/

やってきたサンドイッチは、思っていたよりコンパクトサイズ。

最初から半分に切り分けられているので、食べやすくていいなあ、と手に取ったら、その重みにびっくりする。

ずっしりと重い原因は、何重にも折り返して挟まれたローストポーク。

バルサミコソースと塩コショウだけのさっぱりとした味付けに、ぷちっと甘い温められたトマトの酸味が、心地よい。

そして、何よりも何よりも! 具材を挟んでいるカンパーニュがおいしい……!

ハードパンが好きだったことを、一口ごとに思い出すような、口の中でぎゅっと一度抵抗したあと、思いのほか軽やかに、もちっと噛み切れ、思わず頬がにんまりとゆるむ食感だけでもおいしいのに、味が……もう味が…………。

かりっと焼いてあるはずなのに、どんなやわらかなパンよりも、みずみずしくて、ふしぎ。

たぶん、幼稚園がカトリック系だったせいだと思うのだけれど、わたしにはなぜか、おいしいパンを食べると、「いのちのパンだ」としみじみ手を合わせたくなる癖がある。

それを心の中じゃなくて、思わず実際にしてしまいたくなるような、たいへん健やかにおいしいパンだった。

華やかなわけでは決してないのに、ぱああっと心に火が灯る、あたたかなパン。

 

セットで付いてくる飲み物は、あまりにぽかぽかとした陽気が気持ちよくて、そのあたたかさにもっと溶け込むように、あつあつのチョコラテを頼んだ。

https://www.instagram.com/p/BCRY8pkL5YL/

きれいなラテアートの底に沈んだ、板チョコレートの欠片を溶かしながらいただく。

こういうパンを、毎朝食べられるというのは、至福だろうなあと思いながら、次こられるのはいつかなあ、と皮算用をする。なんやかんやで年に1回くらいになってしまいそうな気がするけれど。

それを言い訳に、たくさんお土産も買い込んで、両脇から漂ってくる夕食の匂いを嗅ぎながら、いつもよりだいぶ早い帰路に着いた。