3連休を始める1冊
秋になって、コーヒーより紅茶を淹れる頻度が高くなると、今年もそろそろ本を読まなくちゃなあと思う。
年がら年中、だらだらと読んでいるのに、ふしぎと言っちゃふしぎなんだけれど、たぶん、秋の匂いがすると「もうすぐ一年が終わる」という危機感が募るせいだ。
そんな新しい本を読まなくちゃ! という強迫観念めいた気持ちを制して、この間読んだのはいつものあれ。
わたしには、3連休のはじめに必ず読む本がある。
それがこちら。
恩田陸さんの『三月は深き紅の淵を』。
何度読んだかわからないので、ぽってりとした文庫はかなりくたくた。こうしてフィルターをかけるとあんまりわからないなー。フィルターってすごい。
1冊の本をめぐる4作の連作短編なのだけれど、わたしが好きなのは圧倒的に第1話。若手社員の鮫島くんが、せっかくの週末に会長の家に招かれて、1冊の本を探す探偵役をさせられる話。
自分の身に置き換えると「そんな週末ぜったいに嫌だ」と思うのに、読んでいる分には単純にわくわくする。
おいしいごはんと謎と、知的なのにだらだらとしたおしゃべりと…という構造が、いちばん好きな恩田作品『木曜組曲』を彷彿とさせるからかも。
この本をよむと、わたしもどっぷり本の世界につかった週末をすごすんだ、と毎回気持ちが凛々しくなるので、雨の3連休には必ず読む1冊。
ちなみに、この本の中で鮫島くんがありかを探させられている1冊がまさに『三月は深き紅の淵を』で、入れ子構造になっているというのもわくわくポイント。この本と同じく4部構成の本というところもポイントが高い。
実際に、それぞれ部ごとに独立して本になっていたりもして、1部にあたる屋久島を旅する壮年の男女4人の話は、こちら。
本の中では「ミステリ好きにファンが多い」と評されているお話なのだけれど、上・下巻でみっちりと、小さな謎から大きな謎まで惜しげなくじゃんじゃん出てくるので、わたしも大好き。
そして、第三部の『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』にあたるお話は、こちらの『麦の海に沈む果実』であってるはず。
学園小説×謎×血縁問題という血湧き肉躍る設定!
このお話はちょっとまんがっぽいというか、アニメっぽいというか、キャラクター造形ががわかりやすく、サービス精神旺盛でオチもきれいについていて、読んでいて気持ちがいい。
というわけで、先週末、流れで『黒と茶の幻想』まで再読してしまったので、ここまでくれば『麦の海』ももう一度読んでしまおうかな…と思いながら、雨風の音につられて『ネクロポリス』を読んでいる。
これも再読なので再読祭りだなー。
ちなみに、我が家にある恩田陸作品一覧はこんな感じ。
ミステリ棚の一角を占めている。他にも単行本コーナーにもちらほら。
いちばん好きな『木曜組曲』はなかなか紙の本を見つけられず、電子書籍でしか持っていないというのがちょっと切ない。
いい映画というのは、観終わった直後に次の映画を観たくなるようなものだと思っているだけれど、それは本も同じな気がする。
そして、「次は何を読もう?」と思わせてくれる恩田作品は、ときどき「オチを! たまにはオチをつけて!」と思うこともあるけれど、やっぱり個人的にはとてもいい本ばかりだと思う。
今週のお題「読書の秋」