ときどき晴れのくもり空

いつか想像してた未来と今が少し違っていたって

Holiday in Yellow

ある一日。

平日にお休みを取って、好きなことだけをした。すごろくの「一回休み」みたいな唐突な夏休み。

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ほんとうは、平日に休むのが、いちばん理想のお休みだと、常々思っている。

でも、結局仕事のことが気にかかって、心から休めない……なんてなると嫌なので、できるだけカレンダー通りのお休みがいいなあと、軟弱なことを考えていた。

そうは言っても、さすがに代休を取らないと貯まる一方、ということでやっと一日お休みを。

もちろん、一日くらいであれば、待ったなしの案件すらどうとでもなって、結果的には、たっぷり一週間休んだくらい充電されて大満足。なんでもっと早くやらなかったんだろう、と頑なだった自分を笑ってしまう。

 

定時過ぎまでベッドで本を読み、ゆっくり起きだして、コーヒーを飲み飲み、身支度をする。

一年に一回しか袖を通さないネイビーのワンピースを、クローゼットの奥から探し出し、ずいぶんと伸びた髪も丁寧に巻く。支度をする、ということを楽しむ余裕があるのなんて、いつぶりだろう、とルースパウダーをはたきながら思う。

お休みの日にしか履かない、黒とキャメルのコンビネーションが大人っぽいサンダルを靴箱から出し、玄関に腰かけてアンクルストラップを調整する。

ぱちんと手軽に止めるタイプではないこのストラップを、止めようという気持ちになるのも、休日だからである。

のんびりした電車に乗って、有楽町へ。ランチ時のオフィス街を抜け、ずらりと並ぶ路面店のきらびやかなショーウインドウがきらきらと夏の光を反射するのを眺めながら、日比谷へ向かって歩く。

 

最初に訪れたのが、暑い盛りだったせいで、日比谷公園に来るのは、いつも夏真っ盛りだ。東京で聴く蝉の声は、だから、ほぼこの公園の合唱と決まっている。

けぶるような緑の中、端から端へ突っ切るだけの散歩で、ひと夏分の蝉時雨を浴びる。

わたしはお花屋さんという職業に、あまりロマンを抱かないままに女の子を卒業したけれど、唯一、生まれ変わるならここでお花屋さんとして働きたい、とロマンチックなことを思う公園の中の日比谷花壇で花束を作ってもらって、待ち合わせへ。

公園の入口から入ってきた相手も、同じく花を手にしていて、落ち合った瞬間に笑ってしまう。

花束の交換をして、まずは腹ごしらえ。

公園の中はよく風が吹いていたけれど、一歩外へ出ると、かんかん照りの真夏日。顔を上げた向かい側のビル、目についた看板、『五右衛門』へ。

つるつると向かい合って夏限定メニューをたいらげ、人心地つく。ゆっくり食後のお茶を飲んで、もはや迷う気もしない東京宝塚劇場横の地下の映画館へと向かい、観たのは『ミニオンズ』*1

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バリ黄色いやつらがともかくかわいらしく、スクリーンいっぱいに広がる海や氷のシーンが、目にうれしい。大きい画面で水を観るのが、わたしは昔から、なんだかとても好きである。

家に大きなTVが来たときには、だからうれしくて、『グラン・ブルー』とか『フリーウィリー』、あるいは世界水泳ばかり観ていた。

噂のすごいクレジットが登場するエンドロール*2まで観て、映画館を後にしたのは16時過ぎ。

まだまだ明るい夏の夕方、先ほど待ち合わせをしただけの日比谷公園に戻り、軽くお酒を飲んでから帰ることにした。

 

夏の野外、少しずつ暮れていく日を惜しみながら飲むビールのおいしさが、わかる程度には大人になったつもりなのだけれど、このお店に来ると、いつも違うお酒を頼んでしまう。

スミノフのレモネード。

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こんなにご機嫌な黄色いスマイルがついた瓶がメニューにあったら、ちょっとあの映画の後だと、頼まないわけにはいかない。

すっきり甘い大人のレモネード片手にだらだらと思い出話をしている内に、だんだんあたりが深い青色に沈んでいく。

このままごはんでも、とも思っていたのだけれど、映画館でポップコーンを分け合った胃袋には、バスケットにたっぷり入ったほくほくのフレンチフライがせいいっぱい。

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しっかりした味付けで、ビールがないのに「ビールが進むねえ」と言い合うわれわれ。

これはこれでおいしかったものの、以前来たとき*3はサワークリームが添えられた細切りのver.があって、そのおいしさを未だ忘れられずにいたので、ちょっぴり残念な気持ち。

もう少しおなかが空いているときにまた出直して、メニューをきちんと読んで探そう……と思いながら、どんどんと蒼く染まっていく空気の中で、少しずつ溶けていく目の前の笑顔を見ていた。

ほんの少し、アルコールの入った帰り道、下がった温度分、アルコールで温まっているせいで、まだ7時前なのにほっぺたが熱い。

人生がすごろくで、この手に握らされているのがさいころなら、きっとわたしは「一回休み」になる目ばかり願ってしまう。そう思わずにはいられない、すてきな夏休みだった。