ときどき晴れのくもり空

いつか想像してた未来と今が少し違っていたって

白いスカート

さむいさむいさむい! 4月にもなって、まさかそんな呪文を唱えながら1週間が終わってしまうとは。浮かれ気分で買ったリネンシャツに腕を通せるのが、遥か先のことに思えるくらい、今週は冷え込む日が続いた。

まあ、これから暖かくなってくれれば、もう過ぎたことをぶつくさ言うわけでもないのだけれど、今年は結局、お花見らしいお花見はできなかったなあ、とそれだけが心残り。

だいたいが余裕のない1ヵ月弱で、少し余裕のある日はことごとく雨や風で、とても優雅に上を見上げている気分じゃなかった。

去年は4月のこの時期にも、ひとつ手前の駅で降りて家へ歩く帰り道で、お花見気分も味わえたものだけれど、そもそも一駅分歩くような気になる天候は、なかなか望めないまま桜の季節が終わってしまったことに驚いている。

桜は気づけば散っているものとはいえ、それにしても、今年の桜の命は短い。

ちなみに、今年こそ観に行こう、と毎年2月ごろから言っている国立の桜並木は、今年もお預け。どうやらもう、立派な葉桜らしい。

わたしは葉桜も好きだけれど、ほんの少し残っている桜だけでは、はじめて歩道橋の真ん中で見渡してもらうには、ちょっと心許ない絵になる。

もはや新年度でどうこうという年齢でもないけれど、3月から4月にかけてはやはり、ずいぶんと身辺がばたつく。お互いのスケジュールの合わなさが、もはや面白いくらい。

 

春が来るから! と冬のセールの時期からずっと探していて、結局定価のものを買ったチュールスカートも、先週の土曜日に映画と舞台挨拶を観に行ったとき以来、1週間1mmの出番もなし。

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寒くて穿けない、というわけでは決してなくて、むしろもう着られないと思っていた冬物のスカートやワンピースが80デニールのタイツとともに復活してきた、という感じなのだけれど、それにしてもちょっとがっかりである。

先週の土曜日には、もはや初夏のような気持ちで薄い水色のシャツの袖をまくって、タイツも随分デニールの薄いもので穿けたスカートが、1週間手に取る機会もない4月なんて。

それにしても、春になると白いスカートが欲しくなるのは毎年のことだけれど、その素材がチュールというのは、もしかするとはじめてかもしれない。

もちろんそのままで、この甘さと共存できるかわいらしいタイプなら、春にこそ手に入れたくなるものだとは知っていて、でも、どうしても甘過ぎるとむずがゆいタイプにはハードルが高い。

中和するための重ね着やら、タイツやら、ブーツやらが必要で、基本、秋冬以外に穿こうと思ったことがなかった。

なんとなく、足になじんだショートブーツを履いていれば、なんでも穿ける気がしていて、そのせいか、わたしは冬の方が俄然、甘めの格好が多い。タイツで透ける心配をしなくて良いのも手伝って、淡い色のスカートが多くなるのも寒い時期。

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それなりに身長あるわたしが穿いても、くるぶしまでしっかりある長さが気に入って、大学院生の時に買ったエクリュのロングスカートも、この時期に毎年数回しか穿かないので、もう何年選手になるだろうという長いお付き合い。

ウエスト部分がフリルになっていて、これが裾ならばおそらくもうクローゼットにはないという、絶妙な甘さで生き残っている。

もともとは共布ベルトが付いていたのだけれど、それは甘すぎたので、外してそのまま穿くか、普通のベルトを通して。ボタンがいぶした感じなのも気に入っていて、実は下までちゃんと外せるというところも着脱が楽で好き。

プリーツなのに、穿いてもほとんどボリュームが出ないところも、あっさりとしていて好ましく、学生の頃、山ほどエクリュのものを買ったけれど、結局残っているのは、丈が長くシンプルに着られるものばかりで、このスカートはそのひとつである。

カジュアルなチェックのシャツとか、ボーダーのニットとか、ライダースとか、ブルゾンとか。そういうこの数年で増えたものとあわせて、むしろ20代後半になってからの方が出番が多い。

後は上がキャミソールでワンピース型になっている、ペールピンクのチュールもここ数年冬にはよく穿いているなあ。

上に羽織るものの丈を気にしなくてよくて、コンパクトなトップスを重ねてももたつかなくて、わたしはチュールに限らず、キャミソール型の腰下から切り替え型ワンピースが、結局、いちばん手が伸びる気がする。

社会人になって1年目、週3で着ていたまさにそういう形のプリーツワンピに、会食の中華がこぼれてダメになったときには、だからしばらく何を着ればいいのか呆然としたくらい。

 

今年新調したのは、だから久々のほんとのチュールスカート

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ウエストはゴムでらくちんな上に、丈も上に着るものによって膝上からミモレ丈まで自由自在、というところが気に入って、何個かお店を回った後に、わたしにしては珍しく最初に見たお店に戻って購入した。

オールホワイトもいいなあ、と思ったりもしたけれど、ブラックで締められていて、ウエスト部分を出して着てもぼんやりとしない方が、使い勝手がよいかな、と。

そして何より、汗をかく季節に穿くことを考えると、いちばん密着する部分が白だと、洗濯してもやっぱり気になって、1シーズンだけでさよなら、という気持ちになってしまうことが多いので、バイカラーのものに。

もっとも、チュール自体は2重になっていて、たっぷりとしているのに、穿いてもへんなボリュームが出ないところが理想通りで決定打になった。

貧相なチュールならない方がよいくらいだし、かといって、ボリュームが出過ぎるとオフでしか穿けないし、というわがままな希望を両方叶えてくれるものがセールだとなかなか見つからなかったので、いい買い物をしたと思うことにしよう。

かわいらしいものがすんなり似合えば、セールで出てたあれもこれもかわいかったな! と思い返すとちょっと悔しいけれど。

 

それにしても、ここまでぱっきりとした白のスカートを購入するのは、久々である。白い服の中でも、スカートは特別で、それがワンピースならば、たとえばこれはよそ行きの服だから、というのでまだありえた。

シャツやカーディガンなら、汚しそうな手元もまくってしまうし、ワンピースなら他のすべても汚してはいけないセットで、その1日だけ気を張っていればいい。

でも、日常使いするスカートで白を選ぶと言うのは、毎日をていねいに送るという心持ちがなければなかなかできない。

いつもは気にせずばさばさ翻している裾が、間違って何かに触れないように、歩いている間、常に気を配っていなくてはいけないし、雑に資料を手に取って、ちょっと手元の何かを膝にこぼすなんてこともあってはならない。

平日だって、ばたばたせずに生きるのだ、という一種の決意めいたものがないと手が出ないし、実際、わたしは働き始めて1年半、ほとんど手が出なかった。

それが「白いスカートが欲しい」と思えるくらいになったのだから、ちょっとは余裕が出て来たのかな、と思う。もう何年目だっけ、という問いにも即答できなくなってきた。

ちょっと背筋が伸びる春、白いスカートを揺らせるなら、桜が散っても今年は、5月病にはまだまだ遠い。