ときどき晴れのくもり空

いつか想像してた未来と今が少し違っていたって

ラクレット分の休息

ある平日。

珍しく平日の夜にプライベートな予定がぽんっと入った日があって。珍しいシチュエーションにわくわくしながら、誘い合わせて同じ電車に乗った。

平日の夜の予定はきちんと決めていると、たのしみなものの「時間までに終わるかな……」ときりきりするので、こんな風に突然入る予定は身軽でただたのしくて、とてもいい。

せっかく女子だけなので、この日はチーズだらけの晩餐をしに。

以前、チーズがおいしい個室のあるお店を訊かれておすすめだけしたところがおいしかったからと、お誘い返しを受けたのだった。

数週間前に猛烈にラクレットが食べたくなり検索をかけたものの、まだ行けていなかったところなのでうれしいー。

駅から少し歩き、「もうそろそろかな?」と思ってからもうしばらく歩くと、にぎやかな表通りから少しだけ入ったところに建つ雑居ビルの中にひっそりとあるお店。

https://www.instagram.com/p/BRgPRXNAFFO/

なにもかもおいしかったけれど、おなかがぱんぱんな状態でもするすると食べられてしまったカルボナーラがいちばん印象に残っているかも。

家でおいしく作るのはちょっと大変だし、外でイタリアンを食べるときには、だいたいチーズたっぷりのピザを頼むので、実はあんまりカルボナーラを食べる機会ってない。

嫌いなわけではないし、むしろどちらかというと好きなのに、いつも2番手だから選ばれないメニューというのがある。

たとえば、今日はあげもの定食にしよう、と思ったときにからあげとトンカツだとからあげを選んでしまい、今日こそはトンカツを! と決意して行った日も、季節限定の文字に惹かれてカキフライを選んでしまう、みたいなこと。

カルボナーラは、わたしにとってそういうメニューのひとつみたいだ。

でも、このカルボナーラがほんとうにおいしくて! なんというのだろう、変にクリーミー過ぎないといえばいいのか、ちゃんとチーズの味がしっかりする。パンチの効いた味。

パスタで食べるチーズもいいなあ、と思うおいしさだった。

 

ほかにも、節度を忘れてチーズ三昧。

https://www.instagram.com/p/BRgPWemAlVK/

ラクレットを頼みつつ、我慢できなくてチーズフォンデュも追加でオーダー。

見た目よりもふんわりしたバゲットに、いつ食べても記憶しているよりおいしいズッキーニ、それからそれぞれ2切れずつのお肉も含めて、なんでもかんでもチーズに絡めて食べて大満足。

せっかくなのでワインも飲み、すっかりいい気分。個室なのをいいことに、よく喋った夜だった。(もう何を喋ったのか、ほぼ覚えていないけど……!)

話の合間にどんどんお料理がサーブされて、渇いた喉を癒すためにアルコールも何度おかわりしただろう。

そして、お目当てのラクレットも堪能。チーズ好きには夢のような料理、という謳い文句に恥じないビジュアル!

https://www.instagram.com/p/BRgPZJGAbj7/

食べてみて 思ったのだけれど、たぶん、チーズフォンデュやバーニャカウダとちがって、ラクレットは女子会の定番メニューにはならないと思う。

ともかく、急いで食べるのがおいしさの秘訣なのだ。

グリルされた野菜やエビや鶏肉にそそがれたチーズは、くらりとするくらいとろけてぽってりとすべてをおおいかくしているのに、あっというまに再び固体に戻ろうとする。

なので、遠慮もとりわけもせず、出て来た瞬間にフォークを伸ばして食べるが吉、という食べ物だ。

おそらくそもそもが、あまり大人数で食べるには向かない料理だと思う。

かといって、ひとりだとどんなにがんばっても食べている間に固まってきてしまうし…と考えると2人というのはベストだと思う。3人でもいいかな。

会というには人数が足りないくらいで、チーズに対する情熱のある相手とスポーツのように挑むのが楽しいメニューみたいだ。

わたしよりもチーズ好きな相手とだったので、このときばかりは無言でお皿にフォークを伸ばした。

すごくおいしくて満足! いろんなお店で食べてみたいなあ。

 

このほかにも数品追加してどう考えても、これ以上食べられないと思いながら、ラストオーダーでは、口が勝手にデザートを注文していた。

https://www.instagram.com/p/BRgPMuCgMso/

ふわふわの生クリームの下に、こりこりとしたマロンとナッツがたっぷりかくれたモンテ・ビアンコ。

人生で何回目? というデザートだし、そもそもマロンがあんまり得意じゃないので、マロンを使ったデザート自体が珍しい選択なのだけれど、はなやかな見た目に反して堅実な味で、とてもおいしかった。

すべてが個室のお店だったので、ずいぶんのんびりしてしまった平日の夜。

考えてみれば、子どものころよりも大人になってからの方がずっと、チーズ料理のことを好きになった気がする。

冷めていても出来合いでもおいしいものが増えたこの時代において唯一、人が手をかけてその場で作ってくれた方が圧倒的においしいものだからかもしれない。

温めたチーズを食べられるのは、料理だけに集中していればいいときが多いから。たとえばピザだって、なかなか何かをしながらでは食べにくい。

たから、わたしは働き出してからずっと日が暮れかけるとテーブルにキャンドルが出てきて、小さな器で温められたチーズフォンデュを食べさせるお店が好きだし、ラクレットが食べられるお店はきっともっと好きになる気がした。

 

チーズまみれのメニューで、しあわせまみれにされた数時間だった。