いつぶりの秋
朝8時に起きた休日。10月最初の日。
案の定! 特に何も記録できないまま、新しい月になってしまった。でも、今日はさくっと早い時刻に目が覚めて、手つかずの週末を確認してだいぶいい気分。
天気はあまりよくないけれど、昨日買っておいたパンもあるし、心躍る土曜日の朝だ。コーヒーを淹れよう、音楽をかけよう。
リビングにも冷蔵庫にも、シルバーウィークに買って食べきれなかったお菓子がたくさんある。
今朝のおめざはカルディで見つけたアップルチョコレートケーキ。りんごとチョコ、オレンジとチョコという組み合わせは、問答無用で好き。
かぼちゃや栗のおかしがあまり得意ではないので、りんごのおかしが出回ると秋だなあと思う。
喉が渇いてコップ1杯、水も飲む。
いくら日中が暑くなっても、さすがに夜は冷えるようになってきてクーラーをつけて眠ることはなくなってきた。クーラーをつけてもぐったりと汗びっしょりで起きていたのが、もうだいぶ前のことみたいだ。
昨日も夜の街を歩いたら、素足だともう少し寒かった。あまり好きじゃないストッキングを穿き始めたのも先週から。いっそのこと、早くタイツを履きたいなー。
こんなにのんびりしたお休みなら、雨が降っていてもいいなと思いながら枕元のランプを点ける。
このランプは、大学生のときに妹が誕生日プレゼントとしてくれたもので、白くてとてもシンプルなもの。灯り自体はあたたかみのある色なのも、深夜に手元を照らすためだけのランプという感じがして気に入っている。
今年に入ってベッドサイドテーブルを置くようになって、久しぶりに頻繁に使うようになった。
雨が降ってもいいな、なんて思ったのは、10年ぶりくらいにこの本を読んでいたから。
中学1年生のときに、現文の問題集で最初に『TUGUMI』の「幽霊ポスト」の話を読んだのがたぶんきっかけで、15歳くらいまでの間に、あらかた吉本ばななさんの小説は読んだ。
だから私にとっては「制服で読む本」という印象が強くて、東京まで持って来たのは『アムリタ』(上・下)と『白河夜船』の3冊だけ。
そして、この3冊は大学生のときに飽きるほど読み返したので、働き始めてからはこちらもこちらで気恥ずかしくて読み返せずにいた。
ただ、このシルバーウィーク、なんとなく「またもう一度読み返してみてもいいかな」と思ったのだ。ぐずついた天気が続いて、でも家にいるのはつまらなくて散歩に出た午後、傘を差しながら歩き、雨が木を濡らすのを眺めていたら、ほんとうになんとなく。
あのときと同じような気持ちではもちろん読めなかったけれど、ちくちくと痛いところも含めて、改めてよかった。
10代のときに出逢った物語というのは不思議だ。なぜかどんな本でも、昔の日記を読んでいる気分になる。
読んでいても残念ながら雨は降ってこなかったので、ぐずぐずとそのままベッドで二度寝をして、ちょうどお昼ごろに起きた。
起きてもすっきりとしない天気のまま。久しぶりにお湯を沸かす以外にキッチンを使う。
フライパンをあたためバターを落として、たまご2つ分のスクランブルエッグを作り、そのわきでベーコンを焼いて、朝ごはんらしい朝ごはん。食後にはこちらもシルバーウィークに買ったコーヒー豆を挽き、ミルクをあたためてカフェオレを作った。
今週「そういえば契約しているしなにか観るか」とつけたhuluで見つけた『パンとスープとネコ日和』の最終話を見ながら食べる。
原作を読んだときから、いつか映像化されるのかしらと思っていたのに、ドラマ化されたのを忘れていた。のんびりとした休日に似合う映像だらけ。
ストーリー的にはほぼ何も起こらないのだけれど、全編通してとてもしずかで流していると気持ちよかった。
どんなにかんたんなものでも、自分で火を使って食事を作ると、ほんとうにほっとする。片づけを後にひっぱるとまた億劫になるのはわかっていたので、えいやっとがんばってそのまま洗い物に立つ。
もっとも、そこでちょうど洗濯器が終了のお知らせを鳴らし、洗濯ものが好きじゃない恋人と家事を交換することになった。
すっきりと片付いた部屋で、土曜日が正式にスタート。
カフェオレにしきれなかったコーヒーをブラックで飲んで、しばらくぶりに恋人ともぐだぐだ話して、なんだかとてものどかな休日。
晩ごはんも、切る焼く煮るだけじゃなくて、久々にハンバーグを作る元気が。
ハンバーグの何がめんどくさいって、最初のたまねぎの工程だと思う。
みじん切りにするのも、焦がさないように炒めるのも、その粗熱が取れるのを待つのも、ぜんぶ時間も手間もかかってめんどくさい。だからか、年に数回も作らないメニューのひとつである。
中にチーズを仕込んで、上にはローズマリーをのせて。6つもできたので、2つずつ焼いて半分には上にもチーズをのせて欲張りに。
作り出すと楽しくなり、余ったたまねぎでスープをつくり、秋らしく付け合せにきのこを炒め、外で食べると毎回「こんなにおいしかったっけ……」と唸る野菜、ズッキーニも焼いていただきます。
ソースはハンバーグを焼いたときに出た肉汁に、にんにくを落として、醤油を垂らして黒こしょうを散らしたかんたんなもの。
子どもの頃、ハンバーグというと「特製ソース」で食べるものだった。
たぶん父がやっていたのを真似したのだけれど、お好みソースにケチャップとマヨネーズを混ぜ、少し醤油をたらして作るかなり悪い味のするソース。
ホットプレートいっぱいに焼かれた巨大なハンバーグを、銘々勝手に取ってそのソースにつけて食べるのが、我が家の定番で父が作るそれは、たっぷりたまねぎが入っているせいで、なんだかちょっとやさしい味がした。
それをひたすら悪い味にして食べる。飽きたらお好みソースだけで食べてみたりして。土曜日のお昼ご飯には、度々登場するメニューだった。
いつからか、母がつくるハンバーグ的な料理は、ピーマンの肉詰めだけになったのを覚えている。ハンバーグが食べたいときには、母も含めて父にリクエストした。
今日、わたしが作ったハンバーグは、母のレシピと同じくたまねぎは適量で、すとんと手のひらに乗るサイズ。
2つずつ飽きずに食べ、残りの2つは食事が終わったあとに、きちんと焼いて上にチーズもセットして、アルミホイルに包んで冷蔵庫へ。
1.5合炊いたお米も少し余ったので、ちいさなおにぎりを2つ握って。明日また食べよう、と思うとなんだかものすごくしあわせになって、一気に洗い物までした。
まだパソコンを使うとちょっと暑い10月最初の夜。