グッバイ、サマー
おやすみである。
もっとも、すべてカレンダー通りだけれど、でもこの昂揚感は何物にも代えがたい。3連休という言葉に浮かれて、久しぶりに日常を振り返りたくもなる。
日記をつけそびれている間に、すっかり夏が終わってしまった。
今週末は秋を感じに、昨年も訪れたもみじ市に行ったのだけれど、思いのほかいい天気でむしろ夏の最後を堪能する一日に。
昨年はブーツを履いて行ったりしたので、てっきりもっともっと先の話だと思っていたら、先週末急に恋人が「来週末の予定」を発表してびっくりした。調べてみると2015年はもう一週間後だったみたい。
それにしても、一週間後にブーツを履ける気がまったくしないので、今年はなんだかずるずると暑い日が続いているようだ。夜はまだクーラーもつけているし。消して寝て、明け方に起きて、翌日はつけるというのを繰り返している。
足元だってまだまだサンダルが快適な温度だ。
起きると、雨予報が嘘みたいにきれいな快晴。ほとんどパン道楽のためなので、今年はちょっとがんばって早起きして家を出る。
昨年は雨予報がもっと深刻で、室内で開催されていたから、ほんとうに多摩川でやっているもみじ市に遊びに行くのははじめて。リュックを背負って、日焼け止めもしっかり塗って多摩川へ。
今年のテーマは「FLOWER」ということで、去年の秋祭りっぽさと比べて、なんだか会場もだいぶ春や夏っぽい。
入口のテントも、白と青が目にさわやかで、既にうきうき。
深呼吸すると、ダイレクトに草の匂いや土の匂いが流れ込む。明け方少し雨が降ったのか、少し青っぽい匂いが立ち上っていて、それだけでもうこのおでかけの元が取れたみたいに心躍った。
空はぴかぴかに晴れていて、ときどき吹く風だけが秋の匂いがする。
昨年はほとんど売り切れていて買えなかったパンめぐりをして、着いてすぐに満足してしまった。
その間、クレープ屋さんに並んでくれていた恋人の元に戻ってもまたお昼前。列に並んでいると、じりじりと髪の毛が焼ける音がして、あまり好きではない日傘を持ってこなかったことを悔やむくらいのいい天気だ。
遊園地に行ったときと同じ要領で、だらだらと意味のない話をしながら、並んで待つ。ただ、10分もそうしていると、空腹と暑さに負けそうになり、食べながら待つことに。
昨年食べておいしかったソーセージを見つけて、今年は「うずまきちゃんセット」を。
ふだんであれば絶対、限定の「もみじまきちゃん」を頼んでいたと思うのだけれど、ずらっと並んでいるスモークチキンがあまりにおいしそうで! 期待にたがわず、ソーセージの「うずまきちゃん」もスモークチキンも存分にしあわせなおでかけの味がした。
だいたいソーセージという食べ物は、ほぼ自宅の冷蔵庫には入れておいたことがないのにもかかわらず、なぜか屋外で見かけると他の好物に先んじて手が伸びてしまうふしぎな魅力がある。
ソーセージには、風と太陽の匂いがよく似合う。だから、映画館で売られているホットドッグなんかには、それほど強く心惹かれないで済むのだけれど。
そして、ソーセージときたら、飲み物はもうこれしかない。あまりの暑さもあいまって、午前中からビール!
これがまた、すごくおいしかったー! はちみつ味がくっきりとして、ぜんぜん苦くないフルーティーな1杯。ビールというよりはビールカクテルみたいなやわらかな味がする。ビール嫌いな友人にすすめたくなるマイルドさ。
そしてよくよく考えてみると、ビールもまた、室内ではちっとも飲みたくならないのに、戸外では「どうしてもそれじゃなくちゃ困る」類の飲み物なのだった。
ところで、このビールはオーダーの仕方がとてもかわいくて、レジでお会計をするとこうして目印が手渡される。
いろんなところにテーマである「FLOWER」が仕込まれていて、それが目にうれしい。
並んでソーセージとチキンを食べ、ごくごくとビールを飲んでいる間に、列は少しずつ少しずつ進んでいく。少しずつ人が増えてきて、なんだろうと思ったら後ろの方から陽気な音楽が聞こえ始める。
のどかな休日。
ちょうど前日に『ぶどうのなみだ』という映画を見返した後だったので、なんだか映画の世界の中に入った気分だ。音楽とお酒と緑。わたしは家でひたすらだらだらする週末こそが至高だと思っているタイプだけれど、でも年に数回はこういう休日が恋しくなる。
思いついたときに行ける海がとても少ない分、思いついたらすぐに行ける公園と川辺がたくさんあるのが、東京のいいところだと思う。
念願のクレープを片手に、あまりの暑さに追加したソーダを舐めながら、ぐるっと会場を回る。秋の香りがするぶどうのソーダ。
『ぶどうのなみだ』を観た後なので、ついついぶどうのものに目が行ってしまう。
それから夏の名残のグレープフルーツとキウイのソーダ。
どちらも渇いたからだをするすると満たす、おいしくさわやかな炭酸だった。
ぐるりと周遊し、最後に昨年もおみやげを買ったせっけん屋さんに寄って、今年のせっけんを購入して2時過ぎには会場を後にする。
ずいぶんと太陽を浴びて、元気になった反面、その強さにちょっとぐったり。帰りの電車ではうつらうつら眠って、家に帰ったら冷たいシャワーを浴びた。
なんだかやっぱり、最後の夏休みみたいだった一日。
今年の夏はこれでおしまいかなと思うと、とたんに2016年の夏もいい夏だった気がした。グッバイ、サマー。また来年。