春一番のバレンタイン
バレンタイン*1が日曜日なんて、2016年は、なかなかスイートなカレンダーだと思う。
もっとも、木曜日も祝日だったせいで、なんだかここ4日くらい、ずっと夢現で過ごしている。
とはいえ、くっつけて連休にするような余裕のあるスケジュールでもなく、ふつうに働いて、その分、土日はゆったりした週末。
土曜日はお昼前に起きだして、久しぶりに、床もしっかり磨くレベルの大掃除をする。
ふだんは、クイックルワイパーで済ますのに、掃除機もかけて。
カーテンを開けると、外はとてもいい天気で、数ヵ月ぶりにカーテンだけではなくて、窓も開けた。
さあっと家中に風が通って、家に澱のようにたまっていた冬の気配が、瞬く間に桜色に染め上げられていくよう。
空が青く、風もやわらかい。
午後、駅までの道を歩いていたら、信号でもないのに、恋人が歩みを止めて、なんだろうと横を見やると、「空を見ていた」と言う。
朝、外に出た見た空では、世界が早送りになったみたいに、すごい速度で雲が流れていたけど、今は普通で、なんだか夢を見ていたみたいだ、と。
そう話した数秒後には、びゅんっと背中を押すような力強い風が吹いた。
次の信号でつられて空を見上げてみると、そこには、おだやかなふりをした青空が広がっていて、狐につままれたような気持になる。
その後は、夕方というには少し早い時刻から夜まで、ゆるゆると飲み続け、日付が変わる頃には一周まわって酔いが醒めた状態で、バレンタインデー当日を迎えた。
日曜日は、土曜日より更に自堕落に、一歩も外に出ないのんびりを尽くした休日。
しあわせすぎて、6時過ぎに一度目覚め、窓をびゅうびゅうと嵐のような風が叩いているのを確認し、またあたたかくて清潔なベッドの中にもぐりこむ。
お菓子もたくさん買ってあるし、「嵐が来ても安心だ」と、子どものときのようなことを思いながら、うつらうつらしている内に、10時前に。
朝ごはんを食べるほどおなかが空いていなくて、ひさびさに、おめざにした。
BoccaのMomo Berry Lassiに、苺と蜜柑のフルーツボウル。
木のちいさなプレートには、セブンのチョコチップクッキーと、パティスリーモンシェールの「咲く咲くクッキー」、それからDEMELのソリッドチョコ(ミルク味)。
チョコチップクッキーは、自分ではあんまり買う機会がないけれど、さくさくしていておいしくて好き!
モンシェールのクッキーは、きれいな木の箱に入れられて、桜の形も縁起が良くて、この季節、誰かに贈りたくなること間違いなしの一品。
大阪でしか手に入らないという限定感も、なんでもクリックひとつで買うことができるこの時代に、手に届きそうで手に届かない距離が、なんだか奥ゆかしい感じがしてうれしい。
さくさくというよりは、ほろほろという食感で、余分なものがなんにも入っていないシンプルな味が、とても舌にやさしい。
そして、DEMELの「猫の舌」は、ずっと憧れていたチョコレート。
淡いグリーンに、ゴールドのレタリング。実写的な猫の絵に、持ち重りのする箱。
いつか大人になったら、このチョコレートを自分のために買いたいなあ、と思っていて、それが28歳のバレンタインになった。
制服を着ていたときに想像していたより、大人になるのに時間がかかってしまったけれど、待ったご褒美は、いつでも格別。
蓋を開けると、ぎっしりと薄いチョコレートが並んでいて、最初の1枚を取り出すのもちょっとたいへんなくらい。
舌に乗せると、見た目に反しておもいのほか、持ち重りがし、そんなところも心楽しい。
個人的には、チョコレートに出すには、ちょっと勇気のいる値段なので、一日1枚だけと決めて、ゆっくり味わう予定である。
と言いつつ、生まれてはじめてのDEMELのお買いものは、とても一品に決めきれなくて、結局、もうひとつ、瀟洒な箱に入れられたバレンタイン限定のボンボンも買ってしまった。
他にもちょこちょこパケ買いをしたりして、すっかり、チョコレート三昧の1週間。
一方で、どう考えても、我が家ではチョコレート党はわたしなので、バレンタインのプレゼントには毎年悩んでしまう。
今年は、唯一、チョコについて積極的な意見を述べていたオランジェをプレゼントしつつ、去年から折に触れて欲しがっていたものを、少し遅れてプレゼントする予定。
スイートかどうかはおいておいて、確実に記念にはなるものなので、わたしも届くのがたのしみ!
日が暮れる前に、久しぶりに湯船にお湯も張って、1時間以上かけてお風呂に入ったあとは、ずっと気になっていたダイニングとリビングの照明をスイッチさせたり、大きくまた模様替えをしたり。
「ふつうがいちばん特別」だということを、テーブルを持った後の腰を伸ばしながら、照明を外すために腕を挙げながら、何度となく思い出す週末だった。
例年、頬を冷たくして過ごす、真冬のイベントだったはずのバレンタインデーが、今年はなんだか少し気の抜けた、その分、とてもあたたかな一日に。
たぶんそれはきっと、この家にも、春一番が吹いたからだと思う。