ときどき晴れのくもり空

いつか想像してた未来と今が少し違っていたって

もういくつ寝ると

買う予定のなかったクリスマスツリーは、嘘みたいなタイミングのよさで、我が家にやってきた。

ツリーより更にもっと、嘘みたいなタイミングのよさで壁に現れた、クリスマスまでの日々を数えるカレンダーの副産物として。

https://www.instagram.com/p/_owxC9r5S8/

来年こそは、アドベントカレンダーとツリーのあるクリスマスを、と書いた数日後。

金曜日の夜、帰ってくるなり「仕事があるから」と部屋にこもっていた恋人が、お鍋が出来上がる直前にきりをつけ、なんだか浮かれた袋と共にこちらに歩いてきたと思ったら、部屋の壁に突如として、アドベントカレンダーが出現した。

ぽかんとしている間に、次から次に、ガーリーな袋が並べられていく。

アドベントカレンダーを作ります」と宣言されて、わたしが最初に考えたのは、「どうしようこれから安易にブログに願望を綴ると、実現されてしまう」ということだった。

https://www.instagram.com/p/_d36cAr5SV/

もっとも、真相はまったく別のところに。

どうやらアドベントカレンダーというのは、わたしが思っている以上に流行りつつあるらしい。

「昨日、会社で話に出て、ぜったいに好きそうなのに、なんでしないんだろうと思った」とのことで、「もしかしたら宗派の問題化かも!?」と思い、googleで検索をかけ、おかしいそうでもなさそうだと首をひねりながら、「じゃあやってみるか」といつのまにか素材を集めたとのこと。

そこでお手軽な市販のものに手を出さないところが、ずぼらでミーハーなわたしとのおおいなる差だなあと思う。

お互い忘年会続きで、ここ数週間は何をしていたのか覚えていないのに、いったいいつこんな用意をしていたのだろう。

まめさに関して言えば、比べるのが無意味なくらいの差がある。

夜の9時くらいから、「もう少し右」「マスキングテープの色がかぶってる」とわいわいぺたぺたとリビングの壁に貼り、ようやく完成した時には、今年のクリスマスの準備は、これですべて終わった気がした。

 

出来上がったお鍋を、TVの横に突如出現したカレンダーを飽きもせず眺めながら食べ、そういえばと気づく。

せっかくせっせと貼ったけれど、最初の袋は18日の分。つまり、今日開けてしまわなければならないのだった。そうでないと、明日まとめて開けることになり、それは本来の趣旨を損なうことになる。

いそいそと開いてみると、最初に出て来たのは、だいすきなガレット。

https://www.instagram.com/p/_d338DL5SR/

あわてて紅茶を入れて、クリスマスの準備として、おいしくいただいた。

 

日付が変わったら開けてもいい、というルールを提案してみたものの、「このカレンダーの副次的な目的は、あなたの寝起きをよくすることです」とにべもなく言われ、既に数日前からクリスマスソングを歌って浮かれている身としては、ぐうの音も出ない。

眠っていたらサンタクロースが来るとか、朝起きたら、欲しかったプレゼントが当然のようにツリーの下に置いてあるとか。

そういう「寝て起きること」が連れてくるサプライズとは、もうずいぶん疎遠だった。

冬の朝はいつでもきれいだけれど、クリスマスの前の数週間だけは、部屋の中の空気も朝陽できらきらと輝くようで、とびきりきれい。

こどものころ、温かい部屋の中でそんなことを思っていたことを、思い出した。

 

19日のバッグからは、赤いクリスマスカードが。

https://www.instagram.com/p/_d3-Zfr5Sa/

毎日お菓子と言うわけではないのね…とちょっとだけおなかを鳴らしながら、開くと、今日のミッションが書いてあった。

曰く、「クリスマスツリーを買いに行きませんか」。

クリスマスツリー! 恋人の狙い通り、いつもの休日よりも更に早い、朝6時に目を覚まして、ねぼけた頭でカードを開いたわたしは、笑ってしまった。

期せずして、数日前の日記は、未来日記になった。

 

表に出ると、きれいに晴れた土曜日。

ホリデーシーズンに浮かれた街を練り歩き、大きいものや小さいものを、にぎやかに色をたくさん使ったもの、まつぼっくりを積み重ねたシックな色遣いのもの。

既に少し値下げされ始めたツリーを、山ほど見比べる。合間合間にかわいいお皿に目を奪われたり、ピアスを買ったりしながら。

そして、予定外にたっぷりした時間を、年末の熱気あふれるスケジュール帳売り場で費やし、最後にもう一度クリスマスコーナーに戻って購入したのは、ちいさくてキラキラした金色のツリー。

https://www.instagram.com/p/_f5H1or5Tw/

毎朝使っている小さな鏡と、ちょうど同じくらいの高さで、横に並べてみると、ささやかなクリスマス感。

来年大きなものを買うならいっそ、ということで、手乗りサイズのものにした。

シンプルで、でもきらびやかで、ひっそり浮かれ続けた気持ちにぴたりと寄り添う、きゃしゃな金色。

ここ数ヵ月、何かと入用で、今年はクリスマスはささやかに、という口約束をまず破ったのは、とつぜん壁にアドベントカレンダーを出現させた恋人の方だけれど、結局、わたしも我慢できずにプレゼントを用意してしまった。

そんな2015年のホリデーシーズンを、すこし居心地悪そうに彩る、ちいさなツリー。

もういくつ寝るとお正月、というよりも、子どもの頃からわたしはずっと、もういくつ寝るとクリスマス、と思ってこの時期を過ごしてきて、「簡素にやろう」といった年にはじめてそれが具現化されたことが、なんだかとても心愉しい。