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ときどき晴れのくもり空

いつか想像してた未来と今が少し違っていたって

夏の陽炎

movie life book murmur

夕方になっても、まだまだ日が高い。

気付かない内に梅雨が終わっていたと思ったら、台風が入り乱れたり、故郷の方では地震も起きたりして、ちょっと週末が心配だったのだけれど、始まってみれば、もはやプールにさえも行く気になれないほどの夏日。

かんかん照りというのはこういうことを言うのだろう、と洗濯物を久々にベランダに干しながら空を見上げてしまった。

東京という街は、あんまりにも暑い日、街全体から音が消える気がする。ゆらゆらと陽炎を見ているように、ここが都会だと言う夢を、街自体が見ているみたいでなんだか現実感が薄れるせいかもしれない。街が丸ごと、朦朧としているというか。

地元だと、ここまで暑い日は、車の中にいても森の中にいると錯覚してしまうくらいに、ひっきりなしに大合唱していた蝉が、ここではほとんど鳴かないせいかもしれない。

ここ最近の休日は、雨と嵐を理由に引き篭もり気味だったのに、暑くなれば暑くなったで、涼しい部屋の中から出ていく理由を見つけるのが難しくなっている。

クーラーを解禁したおかげで、ぐんと読書が捗るようになって、ますます家を出ていく理由が見つからない。ヘビーな辻村深月さんの『朝が来る』を一夜で読了した後なので、しばらくは、ゆるゆると日常を綴ったエッセイを。

『今日もいち日、ぶじ日記』を読んでいると、なかなか店頭では出会えない『日々ごはん』をぜんぶ揃えたくなるなあ。

https://instagram.com/p/5jFC-Zr5cn/

万華鏡ような、モザイクのような表紙と、飾り気のないシンプルなタイトルが素敵な1冊は、今年の観劇はじめとなった『スタンド・バイ・ユー』で拝見したミムラさんのエッセイ。

昔からの癖で、女優さんのエッセイは、見かけるとついつい連れ帰ってしまう。装丁も綺麗なものが多いし。

1,000円+税という定価の割に、読みでのある束をぱらぱらめくる。

出演作すべてを振り返るという章があり、個人的に好きだった作品が実は暗黒期で……なんて打ち明け話に「あららー」と思ったり、食べ物のよもやまを綴る章では、塩昆布を買い損ねた思い出に吹き出してしまったり。こちらも、するりと読了。

「わたしの夏は毎年、『すいか』を観ることから始まる」と書いてらして、なるほど、道理で日常を綴った文がするりと心に入るはずだ、と思った。わたしの夏も、だいたい毎年、そうやって始まる。

そのせいか日常のことをこまごま綴った章や、食べ物の章は、まるで話の合う古い知人の日記を読むように読んだ。

 

ちなみに、わたしにとって、観るとなかば強制的に夏が始まってしまう映像その2は、『となりのトトロ』。わたしの人生はとてもベタなのだ。

https://instagram.com/p/5jEzHDL5cJ/

先週、恋人に「休日に『トトロ』を観ると、そこがしあわせの絶頂という気持ちになるからやめてくれ!!」と懇願されるのを振り切って、うやうやしく解禁した。

何度も見ているはずなのに、毎回「はじめて観る!」と驚くシーンがあって、そのことにびっくりする。同じものであっても、それぞれのときに見えるようにしか、目には映っていないんだなあ。

今回はといえば、お風呂に入るめがねを外したお父さんが意外にマッチョなことに気付いて、まじまじと見つめてしまった。

去年までは、「お父さん」はあくまで「お父さん」でしかなかったけれど、今年は「少し年上の男の人」として眺めていたということなのだろう。

今までずっと、お化け屋敷で暮らすのが夢だったなんて、いいお父さんだなあ…と思っていたけれど、「そういうのありますよね」と、どちらかというと同年代の心境として納得した。わたしは、お化け屋敷には住みたくないけど。

年を重ねると言うのは面白いなあ、と思う。来年の夏も観よう、『トトロ』も『すいか』も。

 

そんなこんなで、水族館のように涼しい室内で、のんびりのんびりと生きている。

https://instagram.com/p/5jE98TL5cc/

少しでも涼を感じるために淹れた、あじさいブレンドのコーヒー*1は、冷めてからの方がすっきりさが際立ち、ついつい本に集中してしまう読書のお供にぴったりだった。

【TASTING NOTE】
キャラメル、チョコレート、アプリコットの風味
冷めるにつれてプラムやプルーンの印象が表れます
アイスコーヒーにもぴったりのブレンドです

中深煎ということで、さらりと乾いた豆も涼しげ。つやつやと輝くダークチョコレートみたいな深煎がほんとうはいちばん好きなのだけれど、涼しさにはかえられない。

涼感つながりで言えば、今年は風鈴が欲しいなあと思っていたものの、あまりの暑さにもっぱらクーラー生活なので、手に入れても、結局、一度も鳴らさない夏になるかも。

暑いと途端に現実味を失う東京では、本の中にもTVの中にも、ゆらゆらと陽炎じみたものが立ち上がる。まるでいつかの自分のように見える、やけに親しげな誰かの姿を眺めながら、今年も夏が始まっていく。