ときどき晴れのくもり空

いつか想像してた未来と今が少し違っていたって

ガラスの靴とバラの味

連休初日。大事なことを早い時刻にわっと片付けて、まずは映画へ。

ようやく『エイプリルフールズ』を観るべく重い腰を上げたのだけれど、ひとりならこのGWの時期でも『シンデレラ』が入れそうということで、急遽予定を変更することに。

去年買って以来、ほとんど履いていなかった靴が、まさに『シンデレラ』配色だったのでそれを引っ張り出したみた。

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ガラスの靴をはくわけにはいかないので、水色とグリッターぎらぎらのシルバーで。

コスプレというわけではなく、観るものにあわせたアイテムをひとつは身に着けるのが好きで、それは、そうすると行く前から既にわくわくがスタートするからに他ならない。

あの色の靴を履こう、ネイルをあの色に変えよう、スカートをたっぷりとしたチュチュにしよう、いつもは外にはかけていかないメガネをかけていこう。

そんなことを考え、作品の何かを拾えないかなと、ワードローブや靴箱、ネイルを集めたかごを眺めていると、さらりと目についたものだけ身に着けていくのとは違って、記憶がきゅっと濃密になる気がする。

 

映画自体は、なんとも正統派なつくりのプリンセス映画だった。そして、行ってみてはじめて思い出したのだけれど、この映画、2本立てで『アナと雪の女王』の短編が入るのね、と驚いた。

その短編自体はなんてことのないお話なのにもかかわらず、去年のディズニープリンセスものは驚きに満ちていたなあ、とどうしても思い出してしまって、結果的に、ものすごくオーソドックスな古き良きプリンセス映画である『シンデレラ』が、なんだか少し物足りなく感じてしまった。

単体であれば、子どもの時に観たあのお話が、きらきらと華美なほど美しい実写でよみがえったことを、素直に楽しめそうだったのになあ。ちょっと残念である。

特に継母役のケイト・ブランシェット様が、どう見ても曲者感満載で、このまま『マレフィセント』的展開になります、と言われても違和感がない存在感だったのでなおさら。

ところで、シンデレラ役の女優さんが、なんだか誰かに似ているなあと観ている間ずっと気になっていて、誰だろうと思ったら、なんとなく平愛梨嬢に似ているのだった。美人と言うのは国境を超えるのだなあ。

唯一、心の底から残念だったのは、ドレスアップしたときの髪型。あれはないでしょう、と思う。

現代の日本でも、ウェディングドレスをまとおうという花嫁が、未だに延々と参考にするくらい、あのシックなアップヘアは美しさの象徴なのに、なんでおろしてるのー! 

なんだか映画を観たと言うよりは、それこそTDLのアトラクションから降りたときのような気分。

ディズニー映画では必ず最初に挟まれるシンデレラ城が、エンドロール後、観終わった後だといつもとは違うきらめきを持っていたので、どうせならシンデレラ城にプロジェクションマッピングでもすればいいのに、と思ったりした。

まるまる1本観て、最後ほんもののシンデレラ城に虹がかかったら、素直な物語な分、結構ぐっときそうだなあ、なんて。

 

せっかくスイートな気分なので、お休みの楽しみの一つ、自堕落なごはんもついでに実行。

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どちらかというと『シンデレラ』というよりは、『マリー・アントワネット』なプロフィットロール・イスパハン。

ふわりとバラの味がするクリームがほんとうにおいしくて、そういえば、10代のときにはイスパハンというのは心底おいしいとは思えなかったのだな、と思い出す。

香水を食べているみたいで、ちょっと大人な風味すぎて、色もコンセプトもかわいいのに、味はちっともかわいくないなと思っていた。同じクリームなら、濁りない甘さの生クリームがずっと好きだった。

休日の映画館は、夕方でも至って客層が若い。

まわりには、健康的な笑顔でGWを楽しむ10代の女の子たちがたくさんいて、予告の間もくすくすとつつきあっていた彼女たちが声をそろえて、エンドロールが終わるや否や「よかったね!」「感動した―」と言っていたのを聴いて、なるほどど思う。

どこまでもわかりやすい甘さの生クリームで満足できる年が、たしかにわたしにもあったなあ、と目を細めてしまう。

きゃいきゃいと甘い声で言葉を交わす彼女たちの海を、するするとひとりですり抜けながら、いつのまにか、バラの味がするクリームを、心からおいしいと思える大人になっていたことに気付いた帰り道だった。