ときどき晴れのくもり空

いつか想像してた未来と今が少し違っていたって

きんいろ

暇に任せてインスタを遡ってみたら、いつか書こうと思って書けていないことがたくさんあるなあと、気づいてしまったので少しずつ。

以前*1も書いたとおり、この1年は質感こそ違えど、ほぼ365日頬をピンクに染めて生きてきたわけだけれど、初夏を目の前にして、俄然、辛口のチークが楽しくなってきている。

というわけで、最近引っ張り出して活躍させているのが、YSLの2012年コレクション。そんな前かー。もっと頑張って早くおろして、早く使い切ろう……。

https://instagram.com/p/gemEBAL5d1/

どう転んでもしゅっとする色味が並んでいて、ローズ系ってこんなにハードル高かったかしらん、とちょっとひるむくらい発色がいい。限定品なので後生大事に使おうと思っていたけれど、そんなことを気にしなくてもなかなか減る気配がない。

真ん中の一番淡い色だけ取って、それで終了ということも多く、右側の色は、それだけでシェーディングになりそうな色味。

好きだったドラマのせいで、いまだにわたしは鏡に向かって頬を色で染めるとき、毎回毎回律儀に、「ラテン系になる!」 と気を付けながらブラシを手に取る癖があるのだけれど、このチークに関しては10回くらいその台詞を脳内で唱えてしまう。

それはそれで素敵なのだろうし、いつもとメイクが違うねと言われたら、「ラテン系ですから」と切り返してみたい気持ちもあるのだけれど、それにしてもちょっと照れくさい。

この色に頬を染めていると、なんだかまるで、しっかりした働く女の人のようで。

ケースもクロコダイルの型押しで、とてもじゃないけれど、ポーチに入れて持ち歩けない。こんなにしゅっとしてないんです! すみません! と誰にかわからないまま、ともかく謝りたくなる。

https://instagram.com/p/gemCM0r5du/

だいたい、急にこのチークがつけたくなったのは、この春、やたらとシャツを着るようになったからで、そこからしてちょっと気恥ずかしい。

春先、風が吹き抜けると気持ちいいだろうな、とやわらかなリネンのカラーシャツをオフ用にいくつか手に入れたら、思いのほか軽やかで驚いた。

制服を脱いだ10代の終わりからずっと、「ただ肩がこる」と思っていたシャツというアイテムが、体にしっくりくる年齢になっていることに気付き、それまで持っていたものの、なかなか手が伸びなかったオン用のシャツの活用頻度が俄然上がったのが、つい最近のこと。

ふしぎとしっくりきて、淡いブルーとホワイトの配色がぱきっと爽やかなのもうれしく、かなりスタンダードかつクリーンなデザインのストライプを、週1では着ている。

淡いパープルとホワイトの配色や、ネイビーとホワイトのこちらは更にスタンダードな色味のものもすべて引っ張り出して、必要なものにはせっせとアイロンまでかけて。

もともと、シャツが似合わないというわけではない。どちらかというと、はまり過ぎるくらい。きゅっと丸くアイラインで補正しているものの、元が猫目なのもあり、どちらかというまでもなく、キリッとしたものの方が顔にもキャラにも合う。

だからこそ、「こわい」「気が強そう」と思われたくなくて、制服でシャツを着なくてもよい年齢になってからは、ほぼ避けてきた。思い返せば就活でも、ほとんど着てないかも。

久々にこの春、色とりどりのリネンシャツを見て、「ああシャツが着たいな」と思えたのは、だから自分でも意外だった。それもほんとうにシンプルな形の、色以外は極めてスタンダードなシャツ。色以外はすべて、長い間、意識的に避けてきたもの。

そうして袖を通したみると、案の定というか、どんなアイテムよりも体にしっくりきて、その日を境に「今日は着ないといけないから」ではなく、「明日あれを着たい」と思いながら、手持ちのシャツを広げている。

ずっと「気が強い」と思われるのが嫌で、「しっかりしている」と見られるのが嫌で、かっちりしたシャツや、しっかりしたチークには心躍らなかった。でも、そんな気持ちががちょうど10年経った今、ぽんっとあっさり消えて。

鮮やかな色のシャツを青空の下干しながら、ストライプのシャツにアイロンをあてながら、「まあもういいじゃない」という気がしている。

だって、そういう風に見えるのが嫌で似合うものをことごとく敬遠するなんて、よく考えなくても、そっちの方がずっと「気が強」くて意固地だ。なんだかなあ、笑ってしまう。

10年と言う年月はきっと、わたしにとって、ピンクのように似合わないものが少しずつ似合うようになった長さで、でもそれと同時に、似合うものを似合うままに身に着けることができるようになるためにも必要だった長さだったのだろう。

https://instagram.com/p/gemAkDr5do/

その証として、シャツをまとう日に頬を染めるコスメのパッケージが、普段はあまり縁がないこの濁りのないゴールドだというのは、なんだか大人になったことを表彰されているみたいで、思わずうれしくなってしまう心愉しい偶然である。