ときどき晴れのくもり空

いつか想像してた未来と今が少し違っていたって

流れ星

何も予定のない週末は、ほぼずっと何かしら温かい飲み物を飲んでいるので、リップクリームすら塗らないことが多い。

働く人の顔をしているときには、この1年、ほぼエスティローダーの01番を使っていたけれど、さすがに毎日同じものを使っていると、日中、メイク直しをほぼしないわたしでも、口紅のひとつくらい使い切ることができるみたいだ。

ちょうど年末、仕事納めの日に、直に塗るのはもう無理、というくらいちびてしまった。いいタイミング。

ということで、2015年は元旦から、今年の1本でスタートしている。

https://instagram.com/p/xS7F_qr5XA/

発売自体は2014年の夏ごろで、ちょうど七夕の時期に、めくる雑誌めくる雑誌、その愛らしいフォルムが紹介されていた、ANNA SUIのLIP STICK V。

たしか色は、#302のミルキーなベージュピンクで、なんだか去年の誕生日の1本を皮切りに、人生であんなにも縁遠かったミルキーなピンクが、続々と集まってくる。

そういうことはままあって、観る映画観る映画、コピ・ルアックというコーヒーが出てきたり、読んでいる本が全部同じオチだったりとか、カレーを食べたいなあと思った日、お昼にカレーライスで夜にカレーうどんを食べる事態に陥ったり、とか。

たいしたことではないけれど、願ってることや望んでることは集まってきて、きっと、そういうものを無意識にどこかで選んでるんだろうなあ、という気がする。

まあ、さすがにどんなに食べたくても、カレーは1日1回でいいな、と膨らんだおなかをさすりながら思ったけれど。

その点、一気に使わなくてもいいものであれば、集まってきても、悪いことは何ひとつなくて、だからいただきものの瀟洒なパッケージも、たいへんうれしく開封した。

このごてっとした切子細工調の蓋が、わたしにはどうしたってちょっと陽気な南国のフルーツに見えてしまう(!)のだけれど、それを差し引いてみると、ゴスロリチックでいかにもANNAという感じ。

https://instagram.com/p/xS7KjzL5XO/

ANNA SUIのコスメを使うのは、そういえば、これがはじめて。ジルスチュアートとはまた別のベクトルで、こちらもまた、自分ではなかなか手が出ないブランドである。

それに、わたしの中では、ANNAというと香水のイメージが強い。

中学生の頃、クラスでいちばん華やかなグループの女の子は、こぞってエンジェルハートをつけていた。派手なシャンプーのような香りは、それはもう全国的に流行りに流行っていて、もちろん、わたしの地元でもクラスの中心からだんだんと流行って行った。

体育祭になったらまず応援団を結成するような子、球技大会にはそろいの髪型で参加する子、そういう子たちの間から。たぶん、学校に最初に友チョコという制度を持ち込んだのも、あの子たちだった気がする。

我が家でも、そういうことに関しては、ませた子だった妹が、ある日、わたしより先に買って帰ってきたのだけれど、わたしはついぞ借りてつけることはなかった香水だ。あまりにあっけらかんと明るくて、気恥ずかしくて手が伸びなかった。

それとほぼ時を同じくして、クラスのもう一角で、他にも流行りはじめている香水があった。それが、ANNA SUIの“SUI DREAMS”だった。

クラスでいちばん色の白い、大人っぽい友人が欲しいと言っていて、わたしははじめて、その存在を知ったのだと思う。

いっそお香のような甘いバニラの香りがするのに、色だけで香りはちっとも当てられない、目が覚めるようなブルーの液体。そして、ごてっとしたシルバーの飾りのついたバッグ型のボトル。あの子が欲しがるのもわかるなあ、となんだか納得した。

背も高く、顔立ちもどちらかというと男顔で大人っぽく、でも、臆することなくかわいいものが好きな子だった。こういう風に、欲しいものと似合うものの調和を取ればいいんだ、と教えられた気がする。

そういうわけで、なんらかのポリシーのあるかわいさを求める子のためのもの、というイメージが強く、周りを何度か歩いたことはあっても、決してお店の中を踏み入れたことのないブランドだった。

とろんとした水色のネイルを買いたいなと思った時、赤い口紅が欲しいなと思った時、ちょっと発色のいいアイシャドウがないかなあと思った時、いつも「ANNA SUIに行けばあるのでは」と選択肢としては浮かんで、いつも自分でお店に入る姿は想像できずに消えて行った。

 

そんなこんなで、27歳にして初のANNA SUIは、予想もしていなかったピンクリップ。

「いる?」と言われて、「ぜひ!」と即答してしまった理由は、持ち重りのする蓋を取った中にある。これ、ほんとうにかわいいのは、中のリップ自体の形状なのだった。

https://instagram.com/p/xS7VHCL5Xv/

現れるのは、なんともきれいな星の形。ぐっと元の形がひねられて星型に作られているので、使い始めてすぐに星じゃなくなってしまうということもない。

ちょうど七夕前に乗った電車で、たまたま広告を見た。「唇に星が降る」だか、「唇に流れ星を纏おう」だかの謳い文句が、お伽話の中のメルヘンというよりは、都会のファンタジーのようで、やけに印象に残ったことを覚えている。

七夕のイメージと相まって、一年にこの時期にしか会えない、手に入れなければ次の年までどうがんばって出会えない1本だ、という刹那的な感じがあり、色を選ばなければ定番商品でいつでも手に入れられるということは、つい最近知った*1

星の形がなくなると願いが叶う、なんてどこかで読み齧った話もあるので、これで安心して唇に星を降らすことができるなあ、と思いながらせっせと使う今年の1本は、昨年とは違って、平日に少し物語性を加えてくれる相棒である。