ときどき晴れのくもり空

いつか想像してた未来と今が少し違っていたって

ひといきつきながら

平日のお楽しみ。それはだいたいにおいて、おいしいものといい香りに偏っている。

週末、足取りも軽く、うきうきと買い求めたチョコレートや、平日、仕事のついでに寄った駅で、「疲れたら食べよう」と念のために購入しておいた焼き菓子。

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今週の「おいしい」は、PAULの3色フィナンシェ。

夜の22時にパン屋さんが開いているというのは、とても不思議な感じだけれど、ありがたいかありがたくないかで言えば、間違いなくありがたい。コーヒーと共にパンを楽しんでいるお客さんがいて、夜にパンというのも素敵だなあと思う。

中でも、見た目がいちばんかわいらしく、きれいな木苺色のフランボワーズが、酸味が強いか、あるいはいっそ、ほとんど風味だけかと侮っていたら、予想外に味もおいしくて感動。

しっかりフランボワーズの味がするのに、ちっとも酸っぱくない。柑橘系のお菓子はちょっと目をつぶってしまうくらい、酸味の強いものでも好きだけれど、ベリー系は酸っぱいとなぜだか悲しくなる。

実際には、プレート上でブルーベリーがいちばん甘い、なんてことも多々あるのだけれど。

そんな具合に、ときどき、手の中よりも腰からの方が甘い匂いのするような香水をつけて、ぼーっと読んだことのある本のページをめくっていると、時間は簡単に巻き戻る。平日のあれやこれやで、疲れ果ててすり減る前の、心と体が健やかだった週末の夜に。

ただすり減った分を取り返す以上の何かには、香りとおいしいもの以外が必要で、わたしにとっては、それは主に本と観劇だけれど、ごく稀に、それがLIVEになる。

あまり激しい音が得意ではないので、バンド系よりは弾き語り系が好き、バンドならばメロディアスなものが好き、と音楽の趣味がたぶんいろんなものの趣味の中で、いちばん狭い。

そのせいもあって、お芝居に比べたら圧倒的に行ったことがないので、今まで行ったことがあるLIVEを数えると、たぶん両手で足りる。

そんな数少ないラインナップは、すべて思いつきでしかチケットを取らないがために、なぜかわりとバラエティに富んでいるのが、特徴と言えば特徴かもしれない。

今回、もともとお芝居のチケットを取りに入ったサイトで、偶然、チケット情報を見てぽちっと購入ボタンを押した後、これはまたなんだか参戦歴がばらっとするなあ、と思った。

というわけで、武道館に初の48グループ系、NMB48を観に行ってきた。

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実は何の因果か、生まれてはじめて同じ名前のCDを2枚買ったのがNMBで、そもそもそのとき、すごいファンだったかというとそうではなかったのだから、今振り返ってみても、タイミングというのは面白いなあと思う。

このアルバムが発売された2013年の2月、わたしは、疲れ切っていた。

ああほんとうに疲れていると、人はアイドルというものを欲するんだなあ、というくらい、聴く音楽すべてが、前向きでさわやかなアイドルソングばかりになりつつあった時期に、いちばん駆け上っている疾走感があったのが、たぶん彼女たちだったのだと思う。

最初はさわやかな曲調なのに、やたらアクロバティックな振付なことに驚いた。

しばらくぽかんとして、ああこれはフィギュアスケートならたぶん、ペアをはじめて見た人の感想だ、と変な納得の仕方をしたのを覚えている。いつの時代も、個性が立ったプレーヤーが乱立して、グループを盛り上げているAKBはシングルっぽい、とも。*1

そんな自分にしかわからない消化の仕方をして、なんとなく気になっており、一度ぜひ、通してLIVEか公演を観てみたいなあ、と思っていた。

だから2枚買った同じ名前のCDは、完全に特典目当て。

https://instagram.com/p/zpdgXPr5SO/

それぞれ別のLIVE映像がまるっと付いてくる、ということで、これがU-¥3000なら! といい感じの疲れがたまった脳みそが判断したこともあり、1枚目を買った数日後には、「こちらもオススメ」の別タイプも購入していた。

特典商法なんて言われるけれど、まだまだ単なる物見遊山な段階でも、ぱっと魅力に触れることができて、こういう映像コンテンツを特典にするのはいいんじゃないかなあ、という気がする。

もともとAKBもずっと、映像でいいから観てみたかったのだけれど、まるっと見ようとすると平気で諭吉超えというお値段がネックで、かといって、1日目だけ買うのもなんだか負けた気持ちだし、と結局ほんとうに疲れていた夜に衝動買いするまで年単位かかった。

LIVEもいわゆるチケットサイトではほぼ取ることができないし……ということで、二の足を踏んでいたから、これくらいゆるっと門戸を広げてくれると、ありがたいなあ、と思う。*2

 

武道館はアツかった。ぎりぎりに滑り込んだ席が2F席だったせいか、思いのほか、若い女の子が多くて驚く。

あなたちょっとそこでサイリウム振ってるより、オーディション受けた方がいいんじゃ、というような制服のお嬢さん方がそこかしこにいて、メンバーが出て来た瞬間、揃って「かわいい」「ほんとかわいい」「なんであんなかわいいの!」と感嘆符だらけの黄色い声を上げていて、非常に甘酸っぱい気持ちになった。

わたしは同じような年代の頃、同じ「かわいい!」をなんだか照れくさくて、モデルさんに向けてしか言えなかったので、同年代の同性アイドルに対して、まっすぐに「かわいい!」を発せるというのは素敵だなあと思う。

かわいいものをかわいい、と声に出して愛でられるというのは、健やかさの表れだなあ、と。

10年経ってようやく、なんでも臆面なく「かわいいわー」と愛でられるような20代になり、たいへん楽しく3時間弱、かわいい女の子たちを愛でてきた。

もっと近い距離で見たいわ―と思うくらい、モニターに抜かれる子が軒並み美人だし、衣装もそれぞれ華やかでかわいい。

スタイルの良さで前々から気になっていた吉田朱里嬢は実物もなんだかびっくるする脚の長さで、そして、白間美瑠ちゃんというのはかわいいというより美人さんなんだなあ、と。

まあ、周りの女子高生たちが「かわいい」「かわいい」騒いでいるのもむべなるかな、という感じ。

その中でもビジュアル的に、個人的に心を持って行かれたのは、みるきーで、なんというか、「これは強いなああああああああああああ」という唸り声しか出なかった。

ふわっふわに巻いた長い髪を、かなり下目でツインテールにしていて、もうその髪型がかわいい。そして動きがすべてかわいい。なんというか、すべてが曲線でできているかのような。

かと思えば、ヤンキーセーラー姿で出て来た『マジジョテッペンブルース』での凄味のある口上なんかでは、どきっとするほど艶っぽい。これはそりゃあ人気出ますわ、とものすごく納得してしまった。

ダンスのフォーメーションが面白いものも多かったし、基本的には、ステージを見下ろしていたのだけれど、みるきーが視界の片隅に入ったときだけはついついモニターを観てしまうくらい。

https://instagram.com/p/zpbXolr5eR/

しみじみ、わたしはアイドルっぽいアイドルが好きだなあ、と実感した。パフォーマンスがアイドルアイドルしている子、それも意図的にやっている子に惹かれる傾向がある。

というわけで、元祖48系のアイドルパフォーマー(?)ゆきりんを観られたのも、たいへんうれしかった。

たぶん、これはあのステージにいた中でいちばん、TVであれDVDであれ、パフォーマンスを観たことがあるのが彼女だったというせいも多分にあるのだろうけれど、唯一、ステージ上、どこで何をしていてもすぐに見つけられのが、柏木由紀嬢。

首が長くてポニーテールがかわいかったのと、思いのほか、背が高くてしゅっとしているので見つけるのが楽だったのもあるし、だいたい他の人よりひとつ客席へのサービスが多いなと思ったら、それが彼女だった。なんというか、恐れ入る。

この2人がやる『ハートの独占権』はあざといまでにアイドルアイドルしていて、これが観られただけでも! というくらいの満足感があった。

 

とはいえ、顔だけで言うと、いちばんしみじみかわいいなあ、と思ったのは、チケットを取るきっかけにもなった、もうここで観ないと観られない山田菜々ちゃん。

はじめて観たとき、こんな顔だったら人生楽しいだろうなあ、と思った記憶がある。濃いのにかわいい顔、というのはたぶん10代のときでも、唯一臆面なく「かわいい」と言えたタイプだなあ、とも。

ふわんふわんでちょっと不思議な声が、中学生のときに好きだったアイドルがブリトニー・スピアーズだったわたしには、なんだか懐かしかった。

卒業ソングを含め、そこかしこで彼女の卒業へのトリビュートがあって、そこまで思い入れがない身でも、思わずしんみりしてしまうくらい。

 

そんなすべてを全部ひっくるめた上で、やっぱりすごかったのは、センターかつキャプテンの優等生。かわいい曲では溌剌と、かっこいい曲では颯爽と、ほぼすべての曲でセンターを張り続けるキャプテンというのは、やっぱりすごかった。

何よりも声が心地いいというのはいいなあ、と思う。

もともと歌番組で流れてきたときに「声が綺麗」と思ったのも、NMBに興味を持ったきっかけのひとつで、その主力である山本彩嬢の声はほんとうに心地よかった。

ソロ曲、『ひといきつきながら』は、最初、少し緊張した面持ちから始まり、その声がだんだんとのびやかになる。それと同調するように、こちらの肩の力も、ふうっと抜けて行った。

凛としているのにやわらかな声が上質なコーヒーのようで、誰かの歌をずっと聴いていられると思ったのは、久々かもしれない。

そうして3時間後には、生まれ変わったくらいに元気になっていて、つまらない疲れが溜まっていた数か月が払拭されるようなその効用に、お芝居を観る元気もないときには、俄然、アイドルだなあと思いながら、込み合った武道館を後にした。

ミーハーに生きる、というのは去年からの目標で、あんまり詳しいわけではないなりに、久しぶりにしたいいミーハー体験だった。

*1:SKEはなんだろう……アイスダンスって感じじゃないしなあ。シンクロ? アイスダンスは乃木坂、HKTはカテゴリーではなく末恐ろしいジュニアという感じ。どれもあくまでイメージである。

*2:小嶋さんが卒業する前に、一度、生で見たいなあ……。