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ときどき晴れのくもり空

いつか想像してた未来と今が少し違っていたって

TO BE...

休日が遠い。もっとも、ついこの間終わったようなものだから、仕方ないけれど、それにしても平日はすることが多すぎるなあ。

眠る前に、新鮮なうちに土曜日の話。

あまり文章を書く元気を持ち合わせていないので、ほんとにあったことだけ、という感じだけれど、気づけば既に、今年の週末すらどんどん遠くなるので、できれば正確に覚えていることは覚えているうちに書いてしまいたい。

と、火曜日にここまで書いて、力尽きた。あれほど焦がれた休日が、2日とも午前中いっぱい死んだように眠って終わってしまったので、もうすぐ終わってしまうのがとても切ない。

あわせて一日分くらいしか起きていなかったわりには、濃い週末ではあったのだけれど。

 

とりあえず、忘れる前にこの間の週末の話。先週の土曜日は、しあわせなことに、起きている時間のほとんど、劇場にいた。

http://instagram.com/p/yih9Dbr5aR/

場所は初台。またしても新国立劇場

駅と直結しているので、地下鉄から出るとすぐそこがもう劇場で、劇場に関して言えば、わたしはここに限らず、駅直結というところがいちばん好きだ。

出口さえ間違わなければほぼ迷わない! というのがまず、地図の読めない女であるわたしにはうれしいし、ぱあっと視界が開け、暗い地下から地上に上がった瞬間に、夢現の舞台が待っていてくれるというのは、なかなかわくわくする立地である。

風が強いけれど、とてもきれいに晴れていて、一歩劇場に入ってしまうと、とてもいい休日のお昼どき。

晴れたお休みのお昼というのは、どの季節でもとてもしあわせなものだけれど、いちばんきれいなのは、こういう冬が終わりかけている時期だと思う。

清潔で生まれたてで、街のど真ん中でも、空気がおいしそうだなあと深呼吸したくなる。

もっとも、何度来ても律儀に失敗する乗り換えに、案の定、今回も失敗して、ぎりぎりに駆け込んだものの汗はほとんどかかないくらいに、風が冷たいので、まだ外のベンチに座ってぽかぽかランチ、というわけにはいかなさそう。

 

今回は、はじめての小劇場で、どんなもんだろうと思って向かったら、思っていた以上にとても小さな箱だった。

新国立では今まででいちばん悪い席、2Fのバルコニー席だったのだけれど、それでも下手したら、大劇場の5列目くらいの距離感なのでは、というくらい。

本日観に来たのは、はじめての二本立て。『カワイクなくちゃいけないリユウ』と『シアワセでなくちゃいけないリユウ』*1という続き物のお芝居である。

http://instagram.com/p/yiiHU9L5ap/

2時間×2本、しかもどちらもキャストは4人のみ、というかなり濃い条件。

どうせ同じ日にやってるなら、とふらっとまとめて取ってしまったものの、いざ劇場に着いてみると、「せめて日付を分散させればよかった」と怖気づいてしまった。

たまたま日程が合ったと言う理由でふらっと来てしまったけれど、ほぼ前情報も持っていない状態だし、面白くなかったらどうしよう……と。

そもそも、本当は『カワイク』→『シアワセ』の順番で観るべきところを、日程の悪戯で、『シアワセ』の方から観ることになっているのである。

『カワイク』が再演だから成せる技なのだけれど、もちろん、前情報皆無なわたしは、そちらの初演は未見である。

ほぼ事情がわからないまま、3年後のお話から観ると言うのはどんなもんかしらん、とも思いながら、ままよ! と申し込んでしまったツケが、劇場の席に慌てて腰を降ろしたところで回ってきただけなので、自業自得といえば自業自得。

 

実際には、どちらの2時間もあっという間だった。

失礼ながら、「若手4名だけで舞台が締まるのだろうか」とか、見始めてしばらくして、4人芝居と言いながら、ほぼ2人芝居でお話が進行すると気付いたときには、「途中で観てて飽きないものなのかなあ」などと心配してしまったのだけれど、すべて杞憂に終わった。

4名それぞれにお芝居は素晴らしく、今にも、背後にアメリカのシットコムで流れる「HAHAHA!」という笑い声が聞こえてきそう。

実際、思いがけず、くすっとよく笑いがこぼれた4時間になった。

そもそもはといえば、なぜか唯一LIVEに行ったことのあるアイドル*2吉川友嬢がお芝居をやるなら観てみたいなあ、というくらいのゆるい動機だったのだけれど、結果的には、全員が「別の舞台もまた観てみたい」役者さんになった。

http://instagram.com/p/vx4Pp5L5aI/

カバーアルバムを借り、どんぴしゃ好みの声に、あっという間にアルバムとDVDを買い、2年前(?)だかに開催された初のフルソロLIVEで観て以来のきっか嬢はといえば、なんというか、とても役者さんとして「しっくり」来た。

本来の顔立ちと声の大人っぽさが、するりと役となじんでいて、たとえばLIVEの時に繰り広げられている自由奔放なMCより、ずっと安心して(?)観られるほど、こちらが「素」に見える。

きっかけは、甘い声でアイドルソングを歌って、はちゃめちゃなMCをしている姿を見て、最初、「生で観てみたい」と思って気になったのに、ああこれはこれでとてもよいなあ、と思い、なんだかとてもよい拾い物に出会った気持ちになった。

 

それにしても、出てくるのはたった4人なのに、登場人物が、ともかくよく喧嘩をするお芝居だったと思う。

バルコニー席からだと、ちょっと上からリングを見下ろしているような状態で、これがほぼ喧嘩をしている(?)4人の勝負を見守っているようで、とても臨場感あふれる観劇になった。

そういえばこういうお芝居、最近も観たなあと思って考えてみれば、よくよく思い返す必要もないほど最近、『STAND BY YOU』で、2組のカップルがリングの中で戦うのを観たばかりだった。

あのときには、実際にリングを思わせるセットの中で、お話がスタートしたんだっけ。

今回はそもそも劇場が、真ん中の小さなセンターステージを見下ろす形状なので、喧嘩を鑑賞(?)するには、持って来いという感じ。

そういうわけで、クライマックスまでの8割方の時間は、小気味いいののしり言葉が飛び交う、ほぼどうしようもないドタバタラブコメなのにもかかわらず、劇場を後にしたときには、わたしは妙にしんみりとしてしまっていた。

 

ネタバレというほどではないのだけれど、『カワイク』『シアワセ』共に、最後の30分ほどで、どちらもそれまでのお芝居の印象がぎゅいんとひっくり返る。

この物語、公式サイトでは2組のカップルの“キュートなラブコメ”と銘打たれているけれど、どちらかというとシリアスかつブラック。あえて“○○な”と言うなら、“ナイーブなラブコメ”と呼ぶのがいちばんしっくり来る気がする。

物語でも、象徴的に使われている林檎という小道具そのままに、甘酸っぱくて、フレッシュなはずなのに、どうしたわけか特別なものには思えなくて。

そのくせ、少しでも粗末に扱えば、ケーキの上に載っている苺と同じくらい、すぐに傷んでしまう繊細な「小さな恋の物語」。

http://instagram.com/p/yjyBd_L5RM/

出ていくこともできず、そもそも出ていくと言う選択肢そのものがほぼない、やんわりと閉じ込められた小さな町で、若くて、そして恋をしているということのほぼすべてが、あの4時間の中にある。

わたしは小さな町にいたころ、幸いにも、恋らしい恋をせずに済んだ。

ひとつやふたつ、ふわふわした話はあったけれど、それは恋というにはあまりにもつかみどころがなかった。でももしあれが恋になっていたら、それはたぶん、この4人に似ていたんだろう、と思う。

“郷愁”という言葉をお芝居にしたら、きっとこの4時間になる。

お芝居が終わった後、灯りのついたもののまだ薄暗い客席に、最初は少し絞った音量で、そしてだんだんと大きな音で流れ始める、Maroon5の"She will be loved"のひりひりするような優しさまで含めて、地方で生まれ育ったわたしにとって、完璧に、「いつかいたかもしれない未来」だった。*3

*1:『シアワセでなくちゃいけないリユウ』+『カワイクなくちゃいけないリユウ』|日本テレビ

*2:それも、ある日思い立って一人で行った。

*3:ところで、最後に流れるこの歌の、最後の最後の歌詞は、"Please don't try so hard to say goodbye."(どうかお願い そんなに頑張って「さよなら」を言わないで”というような感じ。)で、そこまで含めてはじめて、わたしには、この舞台はそうは言ってもそれぞれが「シアワセ」になろうとした、意思的なハッピーエンドに思える。