ときどき晴れのくもり空

いつか想像してた未来と今が少し違っていたって

スパイス

ひとり過ごす、気ままな土日。

そもそも休めなかったり、しっかり休めてもひとりだったりと、今年の休日はずいぶんとばたばたした日々が続いている。今週末も、不本意ながらそれは継続中。

土曜日は、まだ外が暗いうちに起き、半分ねぼけたまま、恋人を空港に送っていくところからスタートした。

昨日はそんな時間から外に出たし、今日は一歩も家から出ない! と思っていたのに、昨夜、ふらりと送ったLINEに妹からすぐ返信が来て、とんとん拍子に日曜日のランチを取ることになってしまった。

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2日お休みがあって、2日とも出歩くのは珍しいパターンだけれど、恋人と家族に関して言えば、ひとりで歩くように身軽で、ひとりで歩くより楽しいので、まあいいか、という気持ち。

読み終わった雑誌を渡して、代わりに妹が読み終わった本を貸してもらうという物々交換ついでに、久しぶりに東京でもごはんを、という話になったのだ。

でもまあ、おそらくごはんだけでは終わらないだろうなあ、という予感を抱きつつ就寝。

 

朝起きると、昨日に引き続きいい天気。

カーテンを開けて、レース越しに朝の光を浴びながら、しあわせな気持ちで二度寝をして起きると、10時過ぎ。はーよく寝た。

昨日買っておいた、ハムとチーズをくるんだクレープを温め直し、太陽の光の入る窓辺で本を読みながら朝ごはんを食べる。至福のひと時。これ、永遠にやれる!

とはいえ、せっかく本を用意したものの、肩越しに入る光がとろとろと気持ちよすぎて、ちっとも読書は捗らない。

ずっとタイトルと装丁が気になっていた『うさぎパン』は、このソファーで休日、本を読むときには必ずお供に連れてきているのだけれど、そんなわけで、するりと読めそうなページ数なのに、ちっとも先に進まない。

うとうとを追いやるためにシャワーを浴び、時計を見るとそろそろ出る時間。

それで、急ぐ前に、とりあえず連絡をしてみた。

妹は用事をひとつ片付けてから、わたしは直接、目的の駅に11:30に集合する予定だったのだけれど、どう考えても、そんな時間に彼女が一仕事終えて来られるはずはない。

長年の勘で「絶対まだ寝てる」と確信し、案の定、しばらくして「今起きた」という唖然とした顔のスタンプ付きで、想定していた通りの返事がやってきた。

 

安心してゆっくり支度をし、落ち合って向かったのは、こちらも案の定、エスニック料理。

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妹のスパイス好きは筋金入りで、彼女とごはんに行くと、ほぼ確実にエスニック系のお店になる。なのに、なぜかカレーだけは苦手らしく、どんなカレーでもそれほど欲しないのだから、人の味覚と言うものはよくわからない。

今日訪れたお店は、ニャー・ヴェトナム*1という本格的なヴェトナム料理を食べさせてくれるお店。

吉祥寺に住んでいたころには、ミス・サイゴンによく行ったっけ。井之頭公園に続く道の脇にあって、エスニック料理の苦手な母は、妹が提案するたびに、「また辛い料理?」と、いつもちょっと悲しそうな顔をしていた。

今思えば、母の来ているときくらい、母の好きなものを食べに連れて行ってあげればよかったなあ。

もう学生時代のように、頻繁に両親が東京に遊びに来ることはないけれど、今度来たときにはそうしよう、と思う。なんだかちょっと湿っぽくなったけれど、そういわけで、今日もエスニック料理へ足を運んだ。

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わたしはといえば、エスニック料理は、誰かに誘われて食べに行くことしかしないけれど、それは好きでないという意味ではない。

そういう世代なのかもしれないけれど、わたしの周りには、ともかくエスニック料理の好きな女の人がたくさんいて、たぶん、わたしは妹か友人とごはんを食べれば、毎日、なにかしらのスパイスを摂取できると思う。

そういうわけで、エスニック料理は、親しい女の人とのランチやディナーに取っておくことにしている。

イタリアンでもスイーツでもなく、エスニック料理が、わたしの女の人用のごはん。

考えてみれば、友人も含め、ずっと近くにいるのは、太るのはイヤだけど食べるのは好き! という女の人ばかり。事実、量を食べても、ほっそりした体型をキープしているという子が多い。

そういう意味では、食べれば代謝が上がって、ボリュームたっぷりといえども、そのほとんどが野菜(!)のエスニック料理が人気なのは、当然の流れなのだった。

 

大きな窓を背に食膳のお茶を飲みながら待っていると、なんだか学生のときに戻ったようにのどかな時間に、ついついあくびが。

表はびゅうびゅうと吹きすさぶ風で、ずいぶんと冷たかったのに、建物の中にいると、晴れた冬の日ほど心地よいものは他にないという気持ちになる。

昼間から奮発してコース料理を頼み、前菜の生春巻きプレートだけは写真に収めたものの、その後はずっとノンストップのおしゃべりと、ともかく量のある前菜を胃に収めるので忙しく、〆のフォーまでiPhoneはお休み。

この数週間で起きた話(なんで食事の手が止まるほどたくさんあるのだろう)と、パクチーを食べるたびに妹が思い出す幼いころの思い出の話と、怒涛のおしゃべりが続く。

パクチーの話は、食べるたびに妹がするので、もはや他の人と食べている食事のどこかでパクチーが出てきても、わたしまで思い出すようになってしまった。

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食事の合間に会話というよりは、会話の合間に食事をこなしているというくらいずっとしゃべっていたのに、妹はいつの間にか、ぺろりとフォーまでたいらげていた。

それだけでおなかがいっぱいになってしまいそうな前菜の後は、お肉かお魚料理*2を選べたので、せっかくだからと、両方一本ずつ。

お肉料理は、豚肉をスパイスで炒めたもの、お魚料理は、イカのフリッター。甘いケチャップがかかっていて、ちょっとジャンクな味。こちらも気付いた時には8割方食べられていて、相変わらずのいい食べっぷりにかける言葉もない。

それでもわたしは、〆のレギュラーサイズのフォーが出て来たときには、思わずうなってしまったくらいおなかいっぱいで、2,100円という、お昼にしてはふんぱつしたお値段だったけれど、十分納得のいくボリュームだった。

食後にはベトナムコーヒーか温かいロータスティーも選べ、デザートまで付く。

 

2時間以上たっぷり時間をかけて食事し、案の定、それで解散ということにはならず、SALE最終日の街を歩いて回ることに。

風は強いけれど、体の中からあっためられて、外を歩けない冷たさではない。腹ごなしにと、路面店を巡り当てもなく、午後の東京を歩く。

入るお店入るお店、70%OFFという言葉におおいに誘惑され、どちらも散在する気満々だったのだけれど、結局、街を変えても戦利品はそれぞれささやかなもの。

妹はもともと買う予定だったシャンプー、わたしは、昨日から気になっていた紅茶とホワイトチョコレート

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明日も早いという妹と、30分ほど当初の解散予定を遅刻して別れ家に帰ると、なんだか今日はよく遊んだなあ、という達成感があった。

 

わたしが人生で妹と遊んだのは、主に、子どものときと大学生のときで、だから、妹と遊ぶと、とても自由な気持ちになる。

どんな心配も、両親に打ち明けてしまえば、それはもう心悩ますものでなくなる子どものときのような。あるいは、責任も何もない、その日暮らしを気ままに楽しむ、のんきな大学生に戻ったような。

今はもう、ふたりとも大人で、責任やらなんやらともだいぶ親しくなったけれど、会うと世界はいまだに、わたしたちのもののように思える。

少なくとも、わたしの世界はわたしのものだ、と思える能天気さをチャージできて、それはたぶん、根拠のない自信まみれのときに、いちばんいっしょに過ごした相手だからだろう。

今度はもう少し戦利品のあるショッピングをする約束をして、お互い、月曜日に向けての余力を残した時刻で解散した。

帰って開けてみると、約束の本に加えて、ジョンマスターのヘアスタイリング剤も入っていて、むしろわたしが得をしたみたい。

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ごはんを食べながら解説された使い方が、どう考えても、難しそうだったのだけれど。まあそれはそれとして、ありがとう妹よ。

 

ひとりはひとりで、こうしてふらっと思いつきで懐かしい誰かに会いに行くこともできるし、昨日は昨日でほぼ半日観劇したりと、とても身軽で楽しい。

だけどそれでもなお、こうして日曜日も終わりかけたところで、ああやっぱり恋人と遊びたいなあと思えることが、何よりも心楽しかったりする。

わたしの休日は、だいたい家族とお芝居と本、それからときどきの贅沢のフィギュアスケート観戦、ついでに文章を書く予定があって、おいしい飲み物があれば、常に100%。

けれど、恋人といると、簡単にそれが150%や200%になる。

そういう意味では、人生に必要ではないけれど、あるとうれしいという点で、わたしにとって恋人の存在は、多分に“スパイス的”なのかも。

いなくても100%楽しいのだから、いっしょにいて100%以上になる人でなければ、そもそもいっしょにいないので、当然と言えば当然なのだけれど。

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先週1週間、ぬり直す暇もなかったネイルカラーをきれいにぬり直し、休日用のコートのポケットからSuicaを抜き。

少しずつ少しずつ、月曜日に向けての準備を始めるのがいやじゃないのは、だからかもしれない。

明日は、恋人が東京に戻ってくる。

気を抜くと来週末に思いを馳せそうになりながら、いつもより格段にうきうきとした気分で、ひとりの週末の締めくくりに入り、今週の日曜日の24時は、先週よりずっと歓迎できる数字に見える、と思いながら部屋の灯りを絞った。