Sweet Memories
冬になっても相変わらず、ピンクブームは続いている。*1
柄にもなく、ダスティピンクのスカート(!)を新調したし、クローゼットの奥に眠っていたシャンパンピンクのワンピースも、数年ぶりに引っ張り出してきてみた。
ワンピースはかなりシックなもので、しばらくこちらで着る予定はないけれど、せっかくだから、年末年始に帰省したときに着ようかなあ、と思っている。とてもお正月っぽい清潔な甘さ。
きっちり膝丈で、丈が長ければ服と言うのは長生きするなあ、と思う。流行云々を置いておいて、やっぱり年々、ミニからは手が遠のく。
といっても、相変わらず「ピンクは細部で」というのは変わらず、主には指先がピンク色に染まっている。夏と違うのは、空気が冷たくなって、だんだんとその色味がまろやかになってきたこと。
ぎゅんっとそこに視点が集まるようなPOPなネオンピンクが活躍した春夏と違い、今手が伸びるのは、どちらかというと、おすまし顔の淡いピンクが多い。
夏にハワイに旅行をしたときに買った、OPI3人娘の中のひとり、R31"Sweet Memories"はミルキーな発色をする淡い淡いピンクで、こんなに淡いのにピンクベージュには絶対ころばない、意思のあるピンクである。
「ベージュっぽくも見えるね、とか、そんな無難な方に逃げませんし」という意思表示を感じて、この頑なにスイートな色味が、かなり好ましい。
ピンクベージュは使いやすくて好きだけれど、それでも、「どこまで行っても限りなくピンクである」という色をまといたくなるときもあるのである。潔いピンクは、淡い色であればあるほど貴重だ。
OPIらしく、二度塗りすればどんなに淡い色でも一切透けないので、こういう色味はここに限るなあと思う。*2
さらっと塗ったり、もっとすました感じに、正統派のフレンチにしたりと、寒くなればなるほど重宝している。
冬になるとグレーの服が多くなり、グレーの相棒はピンクだと思っているので、指先がピンクに染まっていると、それだけでコーディネートが半分終わった気分になり、しあわせになる。
おやすみの間はピンク1色じゃないネイルでもいいな、と思っていて、よくやるのは同じく淡いブルーとの組み合わせ。
ピンク×ブルーというアメリカの小さな女の子が好きそうな配色は、はじめて使い切った香水、ブリトニー・スピアーズの"Curious"と同じ色使い。
あの当時かわいいなと思ったものは、結局、時を経ても見ればきゅんとして、こういう細部でなら、今でも取り入れたくなる。
ちなみに、オンオフに限らず、1本だけアクセントをつけるなら薬指にしてしまうのはたぶん、普段指輪をつけない指だから。ここにアクセントがくると、指がまんべんなくにぎやかになって、座りがいい気がするののだ。
ささやかなピンクと言えば、今年はほっぺたも、ほぼ一年間ピンク色に染まっていた。
これはメイクをし始めて以来はじめてと言ってもいい、画期的な出来事で、チークをしないメイクデビュー時からはじまり、そのあとはオレンジ系、淡い色味でもコーラル系、冬にはローズ系と一切ピンクのチークを使用しないまま過ごしてきた。
ピンクのチークはものすごく色白でないと似合わない、と思っていたし、ためしに着けてみても、なんだか顔がぽやっとするなあと苦手意識があった。
チークは顔をひきしめるためのものだと思っていた10代後半から20代前半のわたしにとって、ピンクのチークと言うのは「ともかく色が白くて小顔な人のためのもの」という、まあ一言でいえば、あまり自分には関係ないものだった。
だからピンク色を頬に乗せるようになったのは、今年のはじめ、同じ理由でチークを手放したがっていた母のものを譲り受けてからだ。
せっかくもらったのにもったいない……と言うだけで使い始めたそれは、意外にも、今年一年の定番になった。
ほんとうに濁りのない、照れてしまうようなかわいらしいパウダーピンクなのだけれど、肌が白いと似合わないのではなく、頬にのせれば肌が白く見えるというしあわせな効果を発揮してくれた。
目の下にほわんと酔っぱらったように入れると、服がモノトーンでもそれだけで十分甘くなり、目元が優しくなる。今年はやたら、顔が柔らかくなったといわれたけれど、その多くはふわりと入れたピンクのチークのおかげだった気がする。
そのせいか、今年は譲り受けたものやいただきものも、チークはピンクが多くて、ひょんなことからやってきたVisseもPK02のその名もずばり、“ガーリーピンク”というキュートなピンク色。
この写真はほぼ実際の色味に近く、ご覧の通り、一見かなりキッチュなピンクに見える。これが一転、いざ肌と唇にのると、毒気を抜かれるほどかわいらしくやわらかな色に発色する。
こちらも今年何個か使った、「リップとチークを兼ねたアイテム」で、そうは言っても結局どちらかにしか使えないものも多い中、これはさらっとしたテクスチャのクリームで、たしかに過不足なくどちらにも使えるのもいいところ。
強いて言うなら、唇に塗るとマットな感じになるので、マット派でないのなら、リップクリームの上に軽く乗せるか、上からグロスを塗るかした方がいいというくらい。
意外にもミルキーな青みをふくんだ色に発色するので、「淡いピンクの唇にしたいけれど、楽しい用事じゃないので、#56*3は使いたくない」というときには、リップとしては最近ついつい手が伸びる。
チークとしては、そもそもクリームチークというもの自体が、ずっと気になっていた。
夏にCovermarkのオレンジ色をサンプルでもらったくらいで、実際にしっかりと使うのはこれがはじめてなのだけれど、思った以上に手軽で簡単。そしてほわりと上気して、色っぽい。
ふわりときれいなベールをかけて、「簡単には触れなさそう」と一線を引くのが上質なパウダーなら、クリームはほわんと無防備で、触れなば落ちんという体温を感じる。これはピンクだけれど、たとえ赤でも、あどけなく色っぽい。
だからか、個人的には、あまり仕事に行くときにつけたくなるものではなくて、まだまだ出番が少ない。
硬質なピンクは飼いならせるようになってきたけれど、かわいらしいピンクを照れもなく身に着けるのには、まだまだ年齢と心意気が足りないなあと思う。大人になってピンクをまとうには、気風のよさが必要で、それは一朝一夕ではなかなか手に入らない。
30になったとき、ほわんとやわらかなピンク色のクリームチークで頬を染め、ふわふわとしたアンゴラのカーディガンを気風よく着こなせるように、もっともっと地に足を付けて生きていかなくちゃ、という気がしている。