ときどき晴れのくもり空

いつか想像してた未来と今が少し違っていたって

木曜夜には煙を浴びに

もともとかなりの肉食で、疲れるとお肉が食べたくなるのに、意外にも焼肉に行く回数は少ない。

疲れているので食べた後は倒れ込むように眠りたいのに、焼肉に行った後、シャワーを浴びずに寝室に向かうという選択肢はないので、ついつい敬遠してしまうせいだと思う。

だから、ここ数週間、ずいぶんと夜が遅い恋人と、待ち合わせてタクシーを掴まえた木曜の晩食べた焼肉は、おそらく年単位ぶり。

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その日は特に恋人の方が疲れていて、ふらふらと、「もうてんやでいい……」と歩いていたところに、ぽんっと焼肉の看板が現れたときには、「ああ、肉……肉いいね」という程度の反応だった。

でも、一歩歩くたびに、なんだかだんだんと「これはもしや焼肉もありかも」という気分になり、信号を渡る前には、「これはもう今日焼肉では」という気持ちにたどり着き、慌てて来た道を引き返していた。

理由はよくわからないけれど、夜中の焼き肉というのは、働いている大人の特権的な響きがある。

 

木曜の22時過ぎ、ちょうどお客さんが帰る時間帯なのか、お店はまるで深夜のようにしんとしている。座ると途端におなかが空いて、サラダも挟まず、座った瞬間にお肉を注文してしまった。

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同じ向かい合ってお肉をつつくというスタイルでも、しゃぶしゃぶはよく行くけれど、焼肉にはほとんど行ったことがない。

振り返ってみれば、2年前(?)に神戸に旅行に行った時の夕食が最後で、去年の夏食べたジンギスカンをカウントしないとすると、実に2年ぶり。

同じ匂いがつく料理でも、お好み焼きや串焼きは、何かにつけ食べに行っているのに、この疎遠っぷりはどうしたことだろう。いざ食べに来てみると、どちらも疲れからか、おそろしくテンションが上がるほどには、好きな食べ物なのだった。

ひたすらお肉だけを食べる、気の置けない焼肉は、疲れた体をみるみる元気に作り替える、深夜独特の悪い味がした。

 

子どもの頃は、すき焼きよりもお鍋よりも、だんぜん焼肉派だったのに、いつの間にか食べなくなったなあ、と思う。

平日にときどき連れて行かれる、お塩で食べるのや、レモンで食べるの、それから野菜にくるんで食べるやつ。そういう焼肉じゃなくて、最初から白いごはんを注文し、さっとタレにつけ、もりもりごはんとたいらべる。

子どもの頃に食べていたごちそうのままの、気取らない焼肉の食べ方を、すっかり忘れていたせいかもしれない。

たっぷり煙を浴びて、好きなものだけ食べて、最後にはサービスのアイスまで齧り、もらったガムを噛みながら思う。こういう子どもっぽい焼肉なら、大歓迎。煙の分だけ元気になって、ちゃんとシャワーを浴びて眠りについた。