27th
この間、ひとつ年を取った。27になった。
27歳という数字は、わたしにとってちょっと特別で、なぜならずっと、「27歳になったらむしろ若く見られるよ」と言われ続けてきたからである。
背が高いせいか、顔立ちもときに可愛げがないと言われるほどしっかりとしているせいか、ずっと実年齢より上に見られてきた。その度に、まるでなぐさめるみたいに、必ず言われた言葉は、なぜかいつも「27歳」で、いつのまにか呪文のようにわたしの体にしみついた。
27歳になったら、27歳になれば、27歳さえ迎えてしまえば。
結論から言ってしまえば、たしかにわたしは、生まれて初めて若く見られつつある。昨年からの流行にならって、制服を着ていた頃と同じとまでは言わないけれど、髪を暗くしているせいかもしれないし、何より、18歳の時と同じ顔をしているせいだと思う。
もっと言うと、すっぴんになったら、幼稚園の年長さんのときと、ほぼ同じ顔をしている。*1その後、小学校4年生くらいではすでに90%くらい今の顔をしていて、ようやく実年齢が顔を追い越しつつあるのである。長かった。
元の顔がはっきりとしていて、あまり化粧映えする顔立ちではないことも含めて、メイクでがらっと今後顔が変わることもなさそうだし、これから40歳くらいまではぜひこのしあわせを維持したいところ。
誕生日当日は、平日だった。去年も平日で、仕事をなんとか切り上げて出た足で、ずっと行きそびれていたソラマチに連れて行ってもらった。
ともかく去年のこの時期は、毎日疲れた顔をしていて、疲れてもうまっすぐ帰って眠りたい、という顔をしていたわたしに負けず、ちゃんとサプライズをしてくれたことに感謝している。
久しぶりにおいしいと思ってごはんを食べて、久しぶりにしあわせだと思ってお酒飲んで、目の前にスカイツリーを眺めながら、天国みたいだ、と思った。
今年はずっと余裕がある状態で、日付が変わった瞬間に、ケーキを解禁した。
26歳になったのは一年間、気づかないふりをしてきたけれど、27歳は待っていたので、なった瞬間から祝杯を挙げたい気分だったのだ。
深夜に食べるジェラートケーキのおいしかったこと! チョコとアイスが好きなわたしの好みどんぴしゃで、ジェラートはもちろん絶品、そして下にシロップをうたれて引かれているジェノワーズまでおいしくて、とても大人なケーキだった。
わたしはケーキの中で、ココアとキルシュをたっぷり使った「黒い森のさくらんぼ酒ケーキ」フォレ・ノワールがいちばん好きなのだけれど、ちょっとそれを彷彿させるおいしさだった。
深夜に前祝(?)をした後は、大人らしくしっかりと働いて、お互いの会社の近くで、少し遅めの時間から晩ごはん。1杯だけ飲むお酒にふわふわになりながら、お酒というのは何杯も飲まなくてはいけないシチュエーション以外で飲むと、ほんとうにおいしいなと思う。
その後、えらく早く切り上げるなあ、と電車に揺られていたら、いつも乗換をする駅を通り過ぎそうに。慌てて立ち上がろうとすると、「今日は乗り過ごそう」と腕を引かれた。
何個か駅を通り過ぎ、ようやく降りた駅で、ことんと眠りに落ちたように静かな街を、半分よっぱらいながら歩いて着いたのは、星の見える場所だった。
瀟洒な建物の2階、ドアをくぐるとぐっと天井が吹き抜けのように高くなっていて、天井一面に、夏の空が広がっている。何年振りかわからないプラネタリウムを眺めながら、バラの香りがするシャンパンを飲んでいると、ふわりと体が軽くなる。
大きく伸びをして、いつもはしない話をしたくなるような、そんな空間で、都会のど真ん中でするにしては、あまりにも気持ち良い深呼吸ができた。
わたしはついつい、疲れるとすぐに家に帰りたくなってしまうのだけれど、恋人は30分遠出をして疲れを吹き飛ばしてから帰る方法をいくつも知っていて、そういう健やかな思考がとても心強い。なぜ一緒にいるのかがよくわかった、うれしいサプライズだった。
27歳の滑り出しは、今のところ、上々である。
*1:今見ると、ほんとうにしっかりした顔をした園児である。