My Cheesecake Nights
昨日の夜、チーズケーキについて思いを馳せたせいで、今、おいしいチーズケーキが猛烈に食べたい。
チーズケーキは、すべてのケーキの中で、もっと堅実なケーキだと思う。多くの場合、クリームもフルーツもチョコレートものっていないし、工程もただ材料を混ぜて焼いて、冷やすだけ。素材と作り手の技量頼みのそっけないケーキである。
だからこそ、ほんとうに「おいしい」と納得できるものに出会うのは難しい。
わたしにとって、ケーキにはなんでも許せるというタイプのものと、名前はそのケーキでもこうじゃなきゃ嫌というタイプのものと2種類あって、チーズケーキはどちらかというと、後者に入るケーキである。
たとえばショートケーキ。生クリームとスポンジと、それから苺。この成分さえそのままであれば、だいたい許せるし、食べたくないとは思わない。わたしはあまり苺にこだわりはないので*1、フルーツは苺でなくたってかまわない。
メロンのショートケーキなんかは、この季節に淡いグリーンが白に映えて、見た目が涼やかだしすっぱいメロンはないしで、むしろ好んで食べたいくらいである。
チョコレートケーキに至っては、それがガトーショコラだろうと、フォンダンショコラだろうと、中から木苺のジュレが出てくるムースだろうと、いつでもなんでも食べたい。
そんなおおらかな気持ちの反対になるのがチーズケーキで、わたしのチーズケーキのストライクゾーンは極端に狭い。
スフレかレアかベイクドかと言われれば、断然、ベイクドチーズケーキ。でも、粉っぽいものは苦手で、できれば粉とそれ以外の配分が9:1くらいのものが望ましい。
スフレが苦手な理由ははっきりしていて、子どもの頃、たくさんのカットケーキがある中、下にぼそぼそのスポンジが引かれたスフレチーズケーキを取るのは、その日いちばん運が悪い子と決まっていたからだ。
パンの延長のような食感と、フォークもお皿もなくても、ぱくぱくと片手でつかんで食べられそうな堅実さが、ケーキという単語の浮かれ具合からは遠く思えた。
でも、一方で、学校帰りに買って帰る小さなホールのチーズスフレは、高校生のときの大好物だったのだからわからない。おやつとして考えるなら、ふわふわのスフレもおいしいのだもの。
レアチーズをあまり選ばない理由は、たぶん、本当においしいものを見つけるのが難しいからな気がする。レアチーズの気分のときには、むしろティラミスの方が満たされる場合が多い。
これまで、かなりの確率で、ぺろんと一番上にかかっているゼリーのような膜はもちゃもちゃとしており、甘すぎるか酸っぱすぎるレアチーズ部分に混乱してきた。その上、一番底がへなへなのスポンジだったりした日には、心底がっかりした。
でも、だからこそ、たとえば「しろたえ」のレアチーズケーキなんかは、一度食べてみたいなあと思う。あれがおいしくなかったらレアチーズに絶望しそうなので、なかなか手を出せずにいるのだけれど。
そんな中で、ベイクドチーズはいちばん安定していて、そこがいい。どこで食べても適度にしっとりしているし、きちんとなめらかだし、焼き色が薄いものもそれはそれでレアチーズよりとしておいしく食べられる。
でも、チーズの味が濃すぎる、いっそワインと合いそうな配分のものは苦手、かといってほぼ生クリームの味しかしないチーズ風味のものはチーズケーキとは認められない、と細かな注文は止まらず、ほんとを言うと、これもお菓子が得意な友人が作ったものがいちばん好きだ。
何も過剰過ぎない、とても清潔な配分の、レシピ通りのチーズケーキ。
チーズケーキに限って言えば、なぜか海外のものの方がおいしいのも、他のケーキと違うところだ。それもフランスではなくて、アメリカやドイツの無骨なものの方がおいしい。
甘酸っぱく煮たブルーベリーはなくてもよかったけれど、ふらっと入ったカフェで食べたそっけない値段のものでも、とてもおいしかった。NYに行ったときに食べた「Cheesecake Factory」もさすがのおいしさだったっけ。
ぎゅっと詰まった、なめらかだけれど、雑にフォークを入れるとほろほろ崩れるような食感のものが好き。
でも、最近おいしかった2つが、どちらもベイクドじゃなくて少し驚いている。ひとつは一番上の写真の「Papas Cafe」のもの。スフレとベイクドのいいとこどりのような食感でおいしかった。
もうひとつは、いつ見ても行列している「Pablo」*2のもの。
先週の土曜日、たまたまエアポケットのように空いているのを見て、半ば衝動的に購入した。
チーズケーキというより、これはチーズタルトではないかと思うのだけれど、焼き加減のミディアムは、こちらはレアとベイクドがひとつで味わえて、たしかにホールで買って、2人で持て余すことはない。
あたたかい内に1/4、よく冷やしてから1/4、それぞれ食べたけれど、2人とも俄然冷やした方が好みだった。*3
後で訊くと、恋人はどうやら長いこと、「大人っぽいから」という理由でレアチーズが好きだったらしく*4、レア部分がきゅっとしまった冷たさが気に入った模様。わたしはわたしで、だいたいにおいて、とろりとしたフィリングよりぎゅっと詰まっている方が好み。
これはこれでおいしかったけれど、どっしりしたものでお気に入りのものを早く見つけたいなあ、と思っている。
その堅実さから、いつもいつも一番に選ぶケーキではないので*5、意外と近場でおいしいものを食べ逃しているのかもしれない。2回に1回くらいは華やかなケーキを我慢して、そろそろ、マイ・ベスト・チーズケーキを探してみようかと考えている。