ときどき晴れのくもり空

いつか想像してた未来と今が少し違っていたって

金曜日、日比谷でビールを

週末。月曜日の朝8時から、既に待ち焦がれていた週末。

お休みに合わせたように、約1週間ぶりの一日続くいい天気で、朝から久しぶりに洗濯ができた。朝の10時には、もう暑いくらいの日差しで、それでいてまだ風が抜ける清々しさは夏の始まりのそれであり、なんだか風鈴のひとつでも飾りたくなる空である。

とはいえ、それは単なる夢想で、未だかつて、家に風鈴があったことはない。理由はと言えば単純で、わたしが暑さに弱いせいだ。実を言えば、もう1ヵ月も前からクーラーに手を出してしまっている。 

ひんやりとした部屋で、だらだらと相変わらずミステリーばかり読んでいるのだけれど、今日はどどんと積読を補充して、当分この日々は続きそう。最近は、タイトルだけには親しんできた古い作品を改めて読むのにはまっている。

 

というのは週末だけの話で、平日はまた1ページ読んでいる内に寝落ちしてしまうような生活に逆戻りしかけている。

特に今週は、毎日飲み歩いている内に終わってしまった。もっとも、金曜日は飲み会もなく、遅めの時間ではあったとはいえ、食べねばならない人とではなく、食べたい人とごはんが食べられたからよしとしよう。

金曜日の夜がいい時間だと、それだけで1週間が上等なものになる。

 

最近のいい金曜日で思い出すのは、6月のある金曜日。

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たまたま、記念日と金曜日が久しぶりに重なった日があって、それがちょうど仕事が立て込んでいない時期だったこともあり、どこかに行こうとはしゃいだ気持ちになり、恋人と、2回目に会った場所を訪れた。

そのときはもっと夏の盛りで、他にもたくさんの人がいた明るい公園は、あれ以来、なぜか来るのは夕方から夜ばかりだ。一度はねえやんのライブまでの時間つぶしに訪れ、もう一度は、去年の夏、蝉の声がにぎやかな時期に、日が暮れるのを見に来た。

オクトーバーフェストをしているときに来たいなあ、真昼間からビールを飲みたいなあ、と思って調べもするのだけれど、なぜか毎年うまいことタイミングが合わずにいる。

 

そんなわけで、期せずして、“再会した場所”という思い出の写真の中に入り続けている日比谷公園にて、数年越しの“日常の延長としてのビール”を飲んできた。

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と言いたいところだなのだけれど、その週も飲み会で飲みたくないビールばかり飲んでいたわたしは、ちっともビールに積極的になれず。

それでも、今日はこんなに気持ちよく疲れて、記念日に早く帰れるなんてそうそうないことなんだからと思うと、行き先はそこ以外思いつけなかった。

公園の入り口近くから少し進んだところにあるテラス席ばかりのお店*1は、約1年前に満席で入れなかった以来だったのだけれど、その夜も相変わらず混んでいた。満席御礼で、あと一歩遅ければ座れなかったというくらい。

 

ひとまず、わたしは食前酒として、アペロールのソーダ割りを。

今思えば、もったいないことをしたなあと思う。ソーダで割ってなお、とろりと甘くて、どちらかといえば好きな部類のお酒なのだけれど、緑の中で飲むには少しかわいらし過ぎる。

どんどん闇が深くなっていく戸外で舐めていると、なんだか昔話に出てくるお酒(たとえばハーブを煎じたお酒)を飲んでいるようだった。

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小さなお店らしく、そして公園の中、けぶるような緑の中での食事というロケーションのせいか、周りもほんとうに心安い相手と2人できている、といった風情のお客さんばかりで騒がしいのにとても居心地がよかった。

唯一、8人くらいでテーブルを囲んでいたグループも、和気あいあいとした送別会のようで、平日に行くお店とはぜんぜん違う落ちついたにぎやかさ。

無理に盛り上げようとしている人がいないと、にぎやかさというのは、途端に心地の良いBGMになる。

のびやかに話し声が広がるテラスの片隅で、晩ごはんというには少し浮かれたメニューでおなかを満たした。 

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生ハムのピザに定番のソーセージ、そして山盛りのフライドポテト。

ビアガーデンみたいだね、と言いながら気づいたけれど、そういえば、日によっては腕をさすりながらビールをたらふく飲むという、大通り公園のビアガーデンにも、まだ行けていない。

したいね、と言いながら何年越しになりつつあることが、立ち止まってみるとたくさんある。次の一年は、それをひとつひとう叶えていけるといいのだけれど。

 

料理はどれもおいしかった。

ひとつひとつが期待通りの味で、期待以上のおいしさで、公園でビールが飲みたいなあそのついでに、という気持ちで訪れたのが申し訳なくなるくらい。

特にピザは、さくっと薄い生地なのに、中心の方はまるでパイを重ねたようにしっとりともしていて、普段はもっちりした生地が好きなわたしでも、思わずおかわりしたくなったほど。

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ポテトは細い派、かりかり派の人なら必ず満足するであろうフライドポテトも、これだけでおなかがいっぱいになってしまいそうなくらいのたっぷりとした量でやってくる。

このとき以来、なぜだかサワークリームがのったポテトをよく食べているのだけれど、ここのものがいちばん好みだった。

かりかりのフライドポテトを食べると、わたしはついつい映画館に行きたくなる。地元のシネコンが出す、ほとんど中身がつまっていない細身のフライドポテトが妙に癖になって、映画といえばポップコーンよりフライドポテトだったからだと思うのだけれど。

 

結局、その夜は映画館には寄らずに帰った。

思ったよりもゆっくり食事をとったせいでもあるし、気づいていないふりをしつつも、お互いそれなりに疲れた週の終りだったせいでもある。

それでも、寄り道をしてよかったなと思った。

たった1時間半で月曜日から木曜日を贖った、するに値する寄り道だった。一口もらったビールは、木曜日までのそれとは違い、笑い出してしまうほどに美味しかった。