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ときどき晴れのくもり空

いつか想像してた未来と今が少し違っていたって

おいしいミステリ

読書の梅雨である。一年の内、いちばん本が進むのがこの季節で、窓の外をしのしの降る雨の音を聞きながら、涼しくて安全な部屋の中でぱらぱらとミステリを読むのは、至福の時だと思う。

最近購入したのも、硬軟はあれど、ほとんどがミステリなのはそのせいかもしれない。

 

「コージーミステリ」という矛盾した言葉でくくられる小説が、たぶん、わたしは読み物の中でいちばん好きだ。

ほとんどが翻訳もので、舞台はアメリカののどかな街。探偵役は、好奇心旺盛なカフェやケーキショップの女性店長という非常にテンプレート的な設定と内容で、正直、読んだ端から、どの話がどのシリーズだったのか忘れてしまいそうになるのだけれど、そこがいい。

いちばん最近読んだのは、ありとあらゆるたまご料理を出すお店が舞台の話。本日のメニューのレパートリーはいくつか言えるけれど、トリックはよく覚えていない。事件に関しては、犯人と被害者の職業をかろうじて覚えているくらい。 

あったかスープと雪の森の罠 (コージーブックス)

あったかスープと雪の森の罠 (コージーブックス)

 

そもそもどれくらいのミステリ読みが謎を解きながら読んでいるのか、一度聞いてみたいと思うほどに、たとえそれがいわゆる”本格”であろうとも、わたしは一切謎を解かずにミステリを読んでいる。

ぼんやりと考えたりはするし、なんとなくこの人が犯人だろうな、と思ったりもするけれど、真剣に挑みながら読んだりは決してしない。

ミステリが好きな人には2種類いると思っていて、おそらく(自分で)謎を解く達成感が好きなタイプと、(探偵役の推理を聞いて)謎が解けたときの爽快感が好きなタイプ。わたしは、完全に後者である。

 

かといって、国内のもので、いわゆる「日常の謎」系が好きかというとそうでもないのが、また面白いところかもしれない。どちらかというと、きちんと事件が起きる方が好き。

最近読んだ中では、「なぜ犯人は冷えたピザを食べたのか?」から謎を解くこれが面白くて、その日はためらってやめたシリーズ2作目も、後日買ってしまった。女子高生が探偵役というのが好きなのは、そうはいっても、赤川次郎さんで育ったからかもしれない。 

ルピナス探偵団の当惑

ルピナス探偵団の当惑

 

たぶん、わたしはほっとするのだ。

凄惨な事件が起きても、大変な事態に陥っていても、コージーミステリでは、けっして食事や睡眠がおろそかにされたりしない。

いつも住んでいる町で、どんなにひどい事件が起きても、主人公たちはきちんとごはんを食べ、人々にも、おいしいごはんやほっぺたが落ちそうなお菓子や、心の芯からほどけるようなあたたかい飲み物を提供する。

ちゃんとしなくては、と思う。大変な時にこそ、「生活する」ということを大事にしなきゃ、と。

非日常の中で、いつも以上にそういう日常のことが、きちんと行われているのを読むと、実際にはそうはなかなかいかないからこそ、なんだかとても、ほっとするのかもしれない。あるいは、くいしんぼうなだけかもしれないけれど。