ときどき晴れのくもり空

いつか想像してた未来と今が少し違っていたって

いつかの水族館

週末は、水族館に行った。

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都会の真ん中にあるこじんまりとした水族館で、どんなに時間をかけて回っても、2時間あれば満足してしまうような水族館。隣には、少しだけアトラクションのあるこれまた小さな室内遊園地が併設されており、どこまでもささやかである。

でも、晴れた日には、薄暗く夏でも涼しい室内から、ゆらゆらと揺れる見上げた水がきれいで、上手くいけば短時間でアシカショーとイルカショーを梯子できたりもする。

 

そのコンパクトさと、あまり混みすぎていないところが好きで、ぼんやりしたくなると不意に、「ああ、あそこに行きたいなあ」と思う。水族館に行きたいなあ、ではなく、「あそこのイルカショーのいちばん上の席に一日座って、朝から晩まで水の音を聞いていたいなあ」という風に。

品川アクアスタジアムは、ひとの心に、そういう風に寄り添う水族館である。

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来ているお客さんが揃いも揃って、「真剣に魚を見に来たぞ!」という感じではなく、「まあなんとなく水族館に行くのも素敵じゃないか」という感じで、気負っていないところも微笑ましい。

 

そういうわけで、先週末は、久しぶりにその水族館に行ってきた。特にぼんやりしたかったわけでも、特に水族館に行こうとしていたわけでもなく、所要で渋谷に出たついでに、いつものお店*1でごはんを食べていたら、唐突にそういう話になった。

土曜日は11時近くまで眠っていたのに、起きたらちっとも寝過ごした気持ちじゃなくて、天気が良いのがうれしくて洗濯をして、洗濯をしたらほんとうに気持ちの良い五月晴れだったので、いつもよりきちんとメイクをして外に出た。

風が少し強い以外はほんとうに理想的な陽気で、この季節のそういう休日の常で、「ずっとこんな日が続いたらいいのに」と言い合いながら、駅をひとつぶん歩いたりした。

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着いたお店では、暖かかったので、通い始めて3年目で初めて、ずっと気になっていたお鍋以外のメニューを頼んだのも楽しく、わたしはすっかり満足した気分でごくごくと水を飲んでいた。

ごろごろとサーモンとアボカドの入った丼は、何よりもソースが正解という、非常にしあわせな結果だったし、洗濯は終わっているし、家も片づけてきたからきれいだし、何より、このいい天気に散歩ができたのもうれしかった。いい休日だなあ、と思った。

そうやって、午後1時くらいにはすでに〆に入っていたわたしの向かいで、同じくごくごくと水を飲んでいた恋人が、唐突に「いいことを思いついてしまった」と言ったのだった。「あの日、行きそびれた水族館に今日は行こうと思います」

 

プレゼントとは、とわたしはその日の朝に思ったことを、再び実感したことになる。プレゼントとは、それが不意打ちであればあるほどうれしい。

 

指折り数えて楽しみにしたいならやめておこうか、とトーンダウンした恋人の気弱な発言は最後まで聴かず、あわててお会計をしてJRの駅のホームへと急いだ。どうせ行くなら、アシカもイルカもみたいではないか。

駆け出したかいがあって、着くとすぐにアシカショーがスタートした。

GWは終わったというのに、意外にも小さな水族館は盛況で、家族連れの声援が乱れ飛ぶ中、どこかやさぐれているお姉さんとやる気まんまんのアシカ嬢のコンビが面白くて、初っ端から満足する。

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ひとまず大物を見て気持ちを落ち着けた後は、ゆっくりと館内を一周。

晩ごはんに食べる魚の話をしているカップルとすれ違ったり、恐ろしい大きさのカニをちらちらと横目で見たりしながら、最終的には、ペンギンのブースの前で大半の時間を過ごした。

ペンギンはあまりに動かなさすぎて、次の瞬間にこそ動くんじゃないかという期待のせいで、なかなか目を離すタイミングを掴めないにくめないやつである。

最後は4時からのイルカショーで、おおがかりな技と、水の気配をたっぷり堪能し、4時半には、頭のてっぺんから、足のつま先まで、もはやすっかり満足した状態で品川を後にした。

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まだ日の高い午後5時に、寄り道したガーデンプレイスで、今年初めてのテラス席でチーズケーキをつつきながら、ペンディングする約束もいいものだな、と思った。

「いつかね」という言葉は、叶えられる保証がある限りにおいて、「今日しよう」よりも幸福だったりする。特に、それがすっかり忘れかけていたころになって叶えらたりする場合は。

そういわけで、わたしは先週末、「いつかね」を叶えに、こじんまりとした都会の水族館に行ってきた。