蒼の乱、あるいは、いいお辞儀
白、ピンク、黄緑ときて、でも今年の春は、圧倒的に”蒼”の春である。
土曜日、4年ぶりの新感線の舞台に行ってきた。演目が発表された昨年の秋から、「これはお休みを本格的に再開して観に行かねば」と思い、久々に先行でチケットを取った『蒼の乱』。*1
劇場に出かけると、そのまさに4年前の演目、『薔薇とサムライ』のパネルがたくさんあって、なんだかタイムスリップしたみたい。あのときは、まだ学生だったなあ、と思い出す。
ポスターは今回の会場にも飾られているように、何種類かあったけれど、わたしはこの右側のゲキ×シネのときのものがいちばん好きだった。
パンフレットも、このカラーリングがかわいかったし、そして何よりコンパクトで*2ゲキ×シネの方が好きかな。今でもときどき出してきては、ぱらぱらとめくってみる。毎回、挟んでいるコースターのことをすっかり忘れていて、はらりとページの狭間から出てくるたびにびっくりするのも一興だ。
前回の東京公演は、赤坂だった。どちらかというと、スケートリンクの印象が強かった赤坂まで、まだ学生だったわたしは足しげく通ったものである。今回と同じく、当日券は開演1時間前から抽選方式で、加熱するスケートの当日券競争に比べて、なんとスマートなのだろう……と思った記憶がある。
4年前の春はずっと早く暖かくなって、たしかゲネプロを観た3月26日だけはまだ少し寒く、ほくほくしながら風がびゅうびゅう吹く中を家路を急いだ気がする。
それ以降は、ほとんど春の散歩のような気持ちで、暇があれば晴れている日は劇場に通い、少し早めについたときには赤坂をぐるりと練り歩き、抽選の時間になると、おとなしく列に並んだ。待っている列で髪にあたる太陽が、ぽかぽかと暖かったことを覚えている。
のどかだった。しあわせだった。ほかにもいろいろと感銘を受けたり、面白かった舞台はあるのだけれど、新感線×天海祐希というのは、だからわたしにとって”幸福”の象徴になっている。
さて、そういうわけで、4年ぶりの新感線。そして、昨年、いろいろと予約だけしてチケットを流してしまったので、結果的には、初めてのシアターオーブとなった。もう渋谷ではさすがに迷わないけれど、駅直結というのは迷う心配がなくて安心である。
4年前の今頃は、カーディガン1枚、ワンピース1枚で列に並んでいたのに比べると、装備はしっかりめ。
この季節に穿かねばという桜色のスカートに、こちらはここ数年は1年中着ている気がするボーダーのトップスと、冬の名残の茶色のショートブーツを履いて、コートも腕に抱えて出た。
ロビーは、東京の町が一望できる大きなガラス張りで、休息時間に外に出ると、不思議な開放感がある。
少し時間があったので、シアタードッグで腹ごしらえ。コラボドリンクも、シアターカフェでも取り扱っているみたいで、白い光のあふれるロビーに、そこかしこで飲まれていた蒼のカクテルがとてもきれいだった。
意外にも、パンがかりっもちっとしていて、満足。粉好きとしては、パンがへにょついていないとそれだけでうれしくなる。オレンジ味の人参サラダがのっているのが売りのようだけれど、焼き立てではないのにおいしいパンの方を、もっと前面に出してもいいんじゃないかというくらい。
そして、舞台はともかく、「甘やかされた!」という感想に尽きる。正直、わたしはこの年になってなかなか大河も見続けられない、和物が苦手な人間なのだけれど、最後までたいへん楽しく観られた。
なんというか、ゲスト陣はそれぞれ「その場に出てくるだけで拍手が起きる」「ただ立っているだけでいい」という方々なのに、それぞれがもうおなかいっぱいです! というくらい見せ場満載*3で、今まで観たことがない顔も見せてくれるし、もちろん劇団員のみなさんは言うまでもなく素晴らしい。
『薔薇とサムライ』がどんちゃん騒ぎの結果、「たのしい!」と叫びたくなる大人のヒーローショーだとしたら、『蒼の乱』は同じくどんちゃん騒ぎの結果、「さわやか!」と叫びたくなる非常に気持ちのいい少女マンガだった。*4