ときどき晴れのくもり空

いつか想像してた未来と今が少し違っていたって

4月は白とピンク

再び休日。今年は結局、仕事絡みでしかお花見に行けなさそうである。今日も一日のうちで寒かったり暑かったり、なんだか不思議な天気。まだまだ、洗濯物も気を抜いて外に干せない気候が続く。

4月に入ったからと言って、特に何が変わるというわけでもなく、増税前の買い物も一切せず、ただ3月の延長線で過ごし、気づいたら4月も5日が経っていた。

区切りとか、新たに、とかそういうこの季節らしいことも何もなく、桜の季節が終わってしまう前に、と慌ててロクシタンチェリーブロッサムに香水を変えたくらいである。

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これは、妹にお土産でもらった。重くて持って帰るのが大変なものを、わたしが香水を好きだから、という理由で選んでくれたことに、たしかすごく驚いた気がする。やさしい子になったのだなあ、と気になっていた香水が手に入ったことよりも、その心境の変化に、年の離れた姉のような気持ちで目を細めた。

 

香水自体は、名前だけはずっと知っていて、でも試してみたこともなかったロクシタンの名品。とはいえ、桜の香水といっても、お花見をしていてもついぞ桜の匂いというのは嗅いだことがないので、どういうものをイメージしていいのか、わからなかった。

使ってみて、なるほど、と思った。

どちらかというと、まだ春先といった方が正しい、少し冷たい春の朝の匂いがする。桜というよりは、桜が咲き始める季節の朝7:30を、香りに閉じ込めるとこんな感じになります、というような。

さわやかで、すこしひんやりとして、でも底にはふわりと甘い春の匂いが潜んでいて、それがつけている内に、だんだんと濃くなる。新生活の、香りがする。つけるとなんとはなしに前向きになる香りで、気に入っている。

しかし、本物の桜ってどんな匂いがするんだっけ。ちゃんと花を観るお花見、しなくては。

 

一方で、春の匂いは、毎朝つける香水以外にも、少し前から家の中に満ち満ちている。なんでもない日に、なぜか恋人がくれたスイートピー。花屋の前を通ったから、らしい。いつも通る道なのに、なんだかおかしな理由である。

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こんなにちんまりとした姿なのに、香りはびっくりするほど、しっかりとしている。スイートピーがこんなに香りの強い花だということを、恥ずかしながら、初めて知った。

あまりにうれしそうにしていたせいか、1週間後には、今度はまた白くて可憐なマーガレットをくれた。

 

桜を見たい、桜を見に行こう、と毎年この時期になると熱に浮かされたように言うので、もしかしたら、わたしがとても花が好きな人間だと思っているのかもしれない。でも、実際には、一年のうちで花に思いを馳せることなど、春先の数週間だけで、普段はちっとも思い出さない。

桜だけは、特別なのだ。桜は記憶に残る花だから、できれば記憶に残したい人と、見に行きたい。

仕事のお花見で見上げた、雨に少し流された夜桜も、既にこんなにくっきりと体に残っている。きっと、何年先でも、夜桜を見るたびに昨日の夜の屋台の空気まで、ぜんぶいちいち思い出す。フルーツの入った変な味のビール、大きなたこ焼き、そして雨に濡れた土の匂い。

でも、来年の春からは、スイートピーでもいいのだな、とわたしはいま、少し気楽な気持ちになっている。スイートピーならお花屋さんで買えるし、時期もずっと長い(はず)。それがだめなら、マーガレットという手もある。

桜じゃなくてもいいのだ。もちろん、桜を見るなら、休日に見たいけれど。でも、来年からは、春を記憶する花が一気に2つも増えたことになる。