唇にメリーゴーランド
区切りに、と思って何かを手に入れるのは悪い癖だと自覚はしているのだけれど、四半世紀以上もそうやってものごとを区切ってきたので、今更やめることもできず、今年もいろいろなもので区切っている。
その最初になったのが、「新しい年になったから口紅を新調しよう」というもので、いただきものも含めて、まだ手を付けていない新品が3つ4つあったので、さすがに年始は躊躇をした。
お正月、初売りのデパートの1Fで、年末に切らした化粧水を買い求めている母の横で、BAさんにつかまらない程度の短さですべての売り場を眺めながら、今ポケットに入っているDiorだってこの間おろしたばかりじゃないの、と強力な呪文を唱えてやり過ごした。
でも、東京に帰ってきて、働き始めるとたがが外れる。新しい口紅くらい、この残業代数時間分じゃないの、欲しいときに欲しいものくらい買えなきゃ、やってられないじゃないの、という気持ちになる。
何かを買って、憂さを晴らし、区切りをつける。それには、口紅というのはちょうど良い散財なのだった。高すぎず、かといって安すぎて他にもお金を使いたくなるほどではなく、増えてもかさばらなくて、明日から使え、とりあえずあって困ることはない。そして、気に入れば、毎日使える。
あとは単純に、わたしはコスメの中でいちばん、リップものが好き。学生の時、きちんと校則を守って、ほぼすっぴんで18歳まで過ごしていたけれど、そのときも色つきのリップクリームやグロスだけはこっそりつけていた。
そういうわけで、ミーハーついでにと思って、数々の雑誌でベストコスメに輝いていたYSLのルージュヴォリュプテシャインを購入して、新年の区切りとすることに。
昨年のベストコスメを今年買う、というのは正しくミーハーなのかどうかいまいちわからないけれど、おそらくこれを逃せばしばらく手に入れようと思う機会もなさそうなので、まあいいかな。
気持ちがピンクに傾いているのもあって*1、かなりしっかりとした青味ピンクを買った。
#6 Pink in Devotion
これがかなりはっきりとしたピンク色で、そうそうこれくらいあくの強いピンクが欲しかったのです! という色出し。1度唇に滑らせれば透ける感じはありながら、きちんと唇がピンク色になる。2度塗りすれば、ほぼ見たままの色に。
固めのリップクリームよりもいっそ柔らかい、とろっとした塗り心地なのに、驚くほどきっちりと発色して、なるほど、これは人気が出るはずだと納得した。淡い色も同じようにしっかり発色するなら、それはかなり貴重だもんなー。
ただ、選んだ色が色だけに、あまりに発色がよすぎて、慌ただしい日の朝にはなかなか出番がない。
どちらかというと、もうお昼と言った方が正しい午前11時にカーテンを開けた部屋で、お出かけの最後の一仕上げとしてゆっくり唇に滑らせるのが似合う。髪の毛もくるくるに巻きながら、塗りなおしたペディキュアが乾くまでタイツを履くのを待ちながら。
それも一人の外出か、女の子と会うための身支度の最後、という限られたシチュエーションがより良く似合う。
メリーゴーランドを模したというパッケージも含めて、過剰にかわいらしいこの口紅は、とても女性が考える「女らし」くて、今のわたしには、気合をいれないとちょっとつけられない。
だからか、こんなに可愛い1本なのに、今日はこれをつけるぞ、とカーテンを開け、もうだいぶ柔らかくなった日差しを浴びる休日の朝は、なんだか少し勇ましい気持ちなる。
それが「なにはなくともいい年にするのだ」とついつい決意してしまう、新しい年を迎えた朝のようで、結果的にはとてもいい区切りの1本になった。
*1:今年の春メイクはピンク回帰のようなので、そこはミーハーであってるのかも。