ミーハーな読書
土曜日。久しぶりに、はしはしと本を読んでいる。
もちろん、ずっと何かしら本は読んでいたのだけれど、初めて読む本を集中して一気に読む、それも立て続けに読む、というのはかなり久々である。それこそ、ダイアリーからブログに移行した日*1以来かもしれない。
もっとも、学生の頃は図書館とたいへん仲良くしていたので、わたしの本棚に新しい本がぐっと増えたのはここ数年のことである。本棚には、何度引っ越しても当然のような顔をしてそこに収まり続けている、そんな昔からの相棒の方がずっと多い。
就職してからは、図書館で借りると、決して返却期限に間に合わせることができないとわかったせいで、新しい本と出会うのはもっぱら店頭になった。
去年は、学生の頃から好きな作家さんの最新作を、文庫落ちを待たずにどんどん手に入れた一年だった。そして、それを皮切りに、14・15歳の時から繰り返し繰り返し読んだ期間を読み返すということが多かったように思う。
今年は、とてもミーハーに手を出している。
特に目標を立てる趣味はないのだけれど、新年、実家であまりにも暇だったので、みかんを食べながら、「今年はちゃんとミーハーになろう」という目標を立てた。ちゃんとミーハー、というのも変な表現だけれど。
それで、なんとなく立ててしまった目標だけれども、とりあえず最初の3ヵ月くらいは守らねば、という気持ちで本を選んでいる。それはつまり、とりあえず流行っているものを読んでみるということで、これまでは、そういうものをなんだか気恥ずかしくて避けていた。
そういうわけで、店頭でいちばん目立っていたコーナーで何冊か見繕って、この週末を迎えている。
ひとつは、前から気になっていて、最近「面白そうだな」と買った本が2冊続けて同じ人だったのに負けて、『ランチのアッコちゃん』。連作短編になっていて、最初の2話は同じ主人公。
わたしは複数の女の人が出てくる物語が好きなのだけれど、それは女同士の会話が容赦がないからで、この人は、その容赦なさはそのままなのに、ともかく出てくる女性がみんなからっと明るい。容赦なくて、えげつなくて、そういうセリフがたんとあるのに、ちっとも陰湿な感じがしない。
基本的に主人公は幸せになるし、困ればお助けキャラが現れるし、それはもう◎をつけたくなる「いいファンタジー」なのだけれど、会話の細部だけ妙にリアルでそこが心地よい。
勢いづいて、もうひとつ読んだ積読は、買って半年くらい放っておいたもの。
ドラマ『すいか』を繰り返し見て、学生生活を終えた身としては、どうしても脳内で勝手にキャスティングしながら読んでしまった。こちらも、連作短編。
そのあとは、電子書籍で新刊のときに買った『スナックちどり』と、こちらは完全にミーハーになれずに放っておいた『ビブリア古書堂』の1巻目まで読み、さらさらと半日で4冊を読了して、活字は酸素だなあ、と思っている。あるいは、とてもきれいな水。
ちなみに、ミーハーに読んだ(あるいは読むべきだった)本はどれもしっかり面白くて、やはり今年のテーマは「ミーハー」でいこうと決意した土曜の午後だった。
読書傾向だけじゃなくて、たとえばコスメ、たとえばファッション、たとえば食べ物。流行っているものはやっぱり魅力的なことが多いし、「流行っている」というだけで敬遠してしまう天邪鬼な癖は、20代も半ばに差し掛かるともはやそれが気恥ずかしい。
本が好き、というシンプルな動機でずっと本を読んできた。でも、「今」をちゃんと感じるために読む、というのもそれはそれで楽しい「読み方」だと思う。