あした何食べよう?
おつかれさまの木曜日。
平日が無事に終わっていく安心感といったらない。
今日も、それなりの時間に上がって、家に帰って一息ついたところ。晩ごはんは何を作ろうかな、と考えながら、朝回してとりあえず広げただけの洗濯物を、きちんと干し直した。
最近家でごはんを作るのが楽しくて、その理由はちょっとわかりやすいほどに、はっきりとしている。
ものすごく今更ながら、このマンガを読んだのだ。
悪い本読みの常というか、わたしは「ベストセラー」を避けがちなところがある。
なんというか、みんなが読んでるんだから読まなくてもいいでしょう、本が趣味の人間くらい、ひっそりと棚差しされているものをせっせと読まないと……という変な気負いというか勘違いがあって、ついつい良く売れているものは後回しにしてしまう。
でも、やはり「みんなが読んでいる」には、理由があるんだよねえ。
と、だいたい、えいやっと重い腰を上げて読むと、シンプルな事実に気づかされることになるんだけれども。
これもそんな本だった。
一時期、あらゆる書評欄で取り上げられていた(気がする)『きのう何食べた?』は、絶対に好きだと思って、でも上記の理由で後回しにしていたタイトル。
案の定、ずっと昔に買って積読していた①巻を、あまりに暇でぱらりとめくった日曜日に白旗を揚げ、翌日には最寄りの書店で②~⑦巻を大人買いして、棚にかなりの空きスペースを作って帰ってきた。
ただ、その動機は、どちらかというと、「料理ものが好き」というのではない。
もちろん、セリフでレシピは細やかに説明されているし、毎話ごとにちょっとした覚書きもあるので、「実用性」の高い料理マンガではあるのだけれど、これは料理マンガじゃなくて、キャラマンガだと思う。
主人公カップルの濃さに「すきだわー」と思い、すっとんきょうな史郎さん母の力強い斜め上っぷりに、「だめだ、これはすきだわー」と確信。
史郎さんの事務所のメンバーの、揃って正解にたどり着けていない心の声も好きだし、気の置けないすいかのおばちゃん一家もいい味だし、なんといっても、ちょっとまったりしてきた⑤巻目にさっそうと登場したジルベール!
一気に読んだのに、最新刊の⑦巻を読んだ頃には、すっかり昔からの友達の日記を読んでいるような気持ちで、「からあげ」の回では思わずほろりときてしまった。
食べ物としては、いつもごはんを作るわけではないケンちゃんの「ひとりごはんシリーズ」が実はいちばんぐっとくる。
サッポロ一番、美味しそうだった!
そして、またこのカップルの片割れ、ケンちゃんが、良い「食べ手」なのだよなあ。
「○○を××したなんちゃらが濃厚で……!」とか、「この○○を△△したなんちゃら、なんて繊細な味!」とか、そういう解説のようなセリフはほとんどなく、「おいしー」「しあわせー」の繰り返し。
でも、結局、家で食べるごはんに必要なのって、その二言だけなんだと思う。
ともかく、読むと「あした(家で)何食べよう?」という気持ちになるのは、間違いないタイトル。
気づけばくじけているひ弱なわたしの自炊欲には、心強いカンフル剤になりそうである。